左:「さしすせそ」の順番に調味料を加えて調理したもの
右:「そせすしさ」の順番に調味料を加えて調理したもの
「さしすせそ」の順番に調味料を入れた方は、鶏肉にほんのり甘みを感じ、味が丸く優しい味になりました。今回のように、中華風の炒め物では少し刺激が足りなくもありますが、煮物などの料理には合う、ほっこりする味のように思えました。
一方、逆の「そせすしさ」の順番で調味料を加えた方は、一番に入れた味噌代わりの豆板醤の辛味がガツンとくる味になりました。「さしすせそ」と同じ分量の調味料を加えている割には、酢の酸味や砂糖の甘味を感じませんでした。砂糖に関しては、入れても入れなくても変わらないのでは?というほどです。
「さしすせそ」の順で調理した肉と、「そせすしさ」の順で調理した肉を、食べ物の味を数値で表せる味覚センサー「レオ」にかけて、味覚を分析してみました!
その結果、「さしすせそ」で調理した肉のほうが甘味が有意に高くなっていることが確認できました。実際に食べても味の違いは明確でしたが、数値としてもこんなにはっきり表れるとは驚きですね!
では、なぜ砂糖を先に入れると甘味が強く出るのでしょうか。 ここで重要になってくるのが「浸透圧」です。 浸透圧は簡単に言えば、“調味料の具材へのしみこみやすさ”です。 砂糖は(ショ糖)は、塩や醤油の塩分(NaCl)に比べて浸透圧が低い、つまり“具材へ味がしみこみにくい”んですね。 なので、先に砂糖を入れてあげないと砂糖の味が中に入っていかないんです。 「そせすしさ」のように先に塩分を入れてしまうと、具材にどんどん塩分が入り込み、砂糖が入り込むスキマがなくなってしまうというわけです。
最後に、こちらの写真をよく見比べてみてください。
「さしすせそ」の順に調味料を加えたもの
「そせすしさ」の順に調味料を加えたもの
注目すべきは肉!…ではなく野菜なんです。野菜をよーく見比べてみてください。どちらがシャキっとしていそうですか?実は、見た目でも、実際に食べても、「さしすせそ」の順に調味料を加えた方の野菜のほうがシャキシャキして美味しかったのです!
「さしすせそ」の順番で調理したものでは、砂糖を一番初めに加えるため、砂糖がフライパンで熱されカラメル状になります。すると、あとから加える酢や醤油などの液体の調味料に程よいとろみができるため、野菜が保護されます。一方「そせすしさ」の順番で調理したものは、味噌代わりの豆板醤のあとに醤油や酢など液体の調味料を加えていくため、野菜がべチャっとしやすいと考えられます。
昔から言われている、調味料を加える順番「さしすせそ」には、ちゃんと科学的な理由があったのですね。おうちにあるもので手軽にできるこの実験、あなたもご家庭でやってみてはいかがでしょうか。ぜひ、味の違いを実感してみてください♪
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。