あの熊本地震から早2ヶ月が経過しましたが、現在でも約6千人が避難生活を送っているといわれています。
地震などの自然災害が起こると食事環境も一変。ライフラインが止まり、簡単な調理ですら出来なくなります。そのため長い避難生活の中で一番のストレスになるのが食事です。 「特に人口密度の高い都市で地震が起こると、食品の流通がストップし、被災者の数も多いため、十分な食べ物の配給が行われなくなるでしょう。そのため自宅の『非常持ち出し袋』の有無や内容で生活避難の質が変わってくるのです」と話すのは、災害時の食事情を研究する甲南女子大学 奥田和子名誉教授。
非常持ち出し袋の中に入れるべき食料は、水や熱が不要ですぐに食べられる3日分の食事。そして実は最も大事なのが「必ず自分で用意をし、好きな食べ物を準備する」こと。「規模によっては長期戦となるのが避難生活。ストレスに打ち勝つには、美味しいと思える食べ物を食べることが、体だけでなく心の癒しになりますよ」。そこで非常持ち出し袋の中にどんな食料を用意すべきか、奥田教授に教えてもらいました。
避難時は調理ができないことが多いため、封を切ってすぐ食べられる物と飲み物を入れましょう。そのため常温で保存できるものであることが必須。賞味期限が6ヶ月以上あると便利です。お腹の足しになる物、心の足しになる物、飲み物の3つのジャンルに分けて考えると良いでしょう。
避難時に体力をつけ、空腹感を満たすための食べ物。
・アルファ化米
水で戻して食べられるお米のこと。最近では白米以外に様々な味つけの商品が出ています。賞味期限も5年と長く、保存がきくので便利です。奥田教授のおすすめはアルファー食品株式会社のアルファ化米。非常食と思えないほどの美味しさだとか。
・レトルト食品
おかゆやスープなど商品も様々。温められる環境でなくても、カレーなどが好きな人には嬉しいようです。
・ビスケットや栄養補助食品
同じ味が大量にありタイプは飽きやすいため、食べきりサイズで味のバリエーションがあるといいですね。
避難時の恐怖からくる不安な気持ちを癒すための食べ物。
・缶フルーツケーキ
最近では缶入りのパンやケーキでも美味しい商品があるのでチェックしてみてくださいね。
・缶フルーツ
好きなフルーツを選べばOK。缶フルーツはシロップがフルーツだけでなくシロップも入っているのがポイント。フルーツを食べた後に、水代わりに飲めば癒されます。
・水(ペットボトル)
あると便利なのが水。アルファ化米を調理したり、飲み水だけでなく、歯磨きや身体を拭くなど生活用水として使えます。
・野菜ジュースや缶コーヒー
自分が好きな飲み物を選びましょう。また野菜ジュースは野菜不足時に栄養が補える便利な一品です。
・ゼリー
最近ではパックで片手で飲める物などもありますね。道が凸凹でも、余震の最中でもこぼれにくい、ちびちび飲めるのがポイント。
性別や年齢、体格などの違いから個人の持ち運べる量には差があります。自分一人で持てる量、実際に食べる量でないと備えても意味がありません。用意しながら持ったり、背負ったりして確認しましょう。
四人家族なら一人一つ、四つの非常持ち出し袋を準備しましょう。家族分をまとめず、それぞれが自分の部屋に置いておくのがいいでしょう。最近では共働きの家庭も多く、被災時に子供が一人で家にいた、というシーンも想定できます。自分の非常持ち出し袋が家のどこにあるかを、それぞれのメンバーが把握しておくことが大事です。
奥田教授のアドバイスをもとに、今回編集部では年齢も食べ物の趣味も違う3サンプルの非常持ち出し袋を用意してみました。
甘いものは外せないという人に便利なのがスイーツの缶詰。最近ではチーズケーキやプリンなども商品化されています。スーパーだけでなく、無印良品やソニーブラザなど普段から気分が上がるお店でアイテムを集めるのもおすすめです。
食べ物だけではなく、体と心を潤してくれるのが飲み物。習慣になっている飲み物の代表例がお酒。量を考えれば、非常用にお酒を用意するのはなにも不謹慎なことではありません。最近では缶詰でも、様々な味付けや調理法により充実したつまみが売られています。お酒とともに好みのつまみをチョイスしましょう。
子供にはアルファ化米の中でもチャーハンやピラフなどを選んでも。パスタなども喜びそうなアイテムです。また、乾燥させた食品はレトルト食品などよりも軽く、力が少なくても持ち運びしやすいのもポイント。
今回はすべて賞味期限が6ヶ月以上ある物で実際に揃えてみました。アルファ化米と缶入りパンはネット販売で、それ以外はすべてスーパーで入手でき、準備に手間がかかる…という印象はありませんでした。奥に並んでいる商品なら半月も賞味期限が長い場合もあったりするため、確認も重要。また買い物する際は、カートではなく買い物かごを持ちながら選ぶと重さも体感でき、自分の持ち運べる量かどうかをチェックすることもできました。
そして非常持ち出し袋の準備の大切さと同時に感じたことは「見直すことの必要性」。賞味期限があるため、一度用意したからといって安心はできません。でも好きな食料が入っていると思えば前向きに見直すこともできそうですよね。 この機会に自分の非常持ち出し袋を用意してみませんか?
専門は食環境政策・デザイン、災害・危機管理と食、食の哲学 食育など。福岡県生まれ。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。