食べ物のおいしさにとって、見た目は重要です。茶色い焼き色がこんがりとついたお肉やお菓子は、とても美味しそうに見えますよね。ところで、この焼き色、実は只者ではありません。
今日は食べ物の焼き色のヘルシーな側面を覗いてみましょう!
食べ物に火を通しこんがりと焼きあげる途中では、さまざまな化学反応が起こっています。その中でも有名なのは「メイラード反応」。簡単に言うと、タンパク質などに含まれる「アミノ酸」と、砂糖などの「糖」という成分が結びついて起こる反応で、かなり多くの物質ができあがります。このときに食べ物に焼き色がつくのです。
できあがる物質の一つに「メラノイジン」というものがあります。実は、このメラノイジンには様々な働きがあるようです。
メラノイジンには、肥満の原因になるコレステロールを低下させたり、お腹の中の善玉菌である乳酸菌を増やす働きがあることがマウスの実験でわかっています。焼き色のついた食べ物は、腸内環境を整えるのに役立つ可能性があるのですね。
さらに、メラノイジンには、糖の吸収を抑える働きがあるようです。小麦粉やお米に含まれるでんぷんは、糖の分子が複数つながってできています。体の中に吸収されるときには分子のつながりが切られるのですが、メラノイジンはつながりが切れるのを抑える働きがあるようです。血糖値の上昇が緩やかになれば、食後に襲ってくる眠気も抑えられるかも!?
食べ物の脂肪はリパーゼという脂肪分解酵素によって分解されて体内に吸収されますが、メラノイジンにはリパーゼの働きを抑える可能性があるという報告もあるのですよ。
こうした実験は高濃度のメラノイジンを摂取したときの効果を見ているため、実際の食べ物に含まれる量でどれだけの効果があるかはなんとも保証しがたいところですが、これを読んだあなたは、焼き色のついた食べ物がもっとおいしく感じられるようになるかもしれません!
参考: メラノイジンの生理機能
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。