「バズレシピ」で話題の人気料理研究家・リュウジさん。「バズレシピ」とは、SNSなどで拡散され話題となったレシピのこと。疲れている時でもすぐに作れる「早くて、安くて、おいしい」レシピが話題を呼び、リュウジさんのTwitterのフォロワーは今や110万人超え。出版するレシピ本も好評を博しています。そんなリュウジさんにとって料理とは何か、バズるレシピを生み出すコツや原動力について聞いてみました。
今はこうして「時短レシピ」の料理研究家として活動していますが、昔は時短料理を正直ちょっと下に見ているところがありました。料理はもっと手をかけて作ってこそと思っていましたし、毎日の食卓に出てくる手軽で簡単な料理なんて、という気持ちだったんです。
だから最初は、“自分が最高だと思う、自分の好きな料理”ばかりを作って、ブログで紹介していました。イカ墨を使ったり、いのしし肉をローストしてみたり、手の込んだこだわりの一品を披露していたんです。でも、世間はそういう料理にはあまり興味がないんですよね(笑)。
今思えば、その時の僕はまだ「料理研究家」という肩書きもありませんでしたし、レストランで働いた経験も数カ月だけ。だから、どれだけ創意工夫して“自分にとって最高のレシピ”を仕上げたとしても、世間からは“プロの料理”と認識されるわけもなく、説得力がないから当然誰も見ないですよね。それでも、自分のメモ代わりとしてブログは続けていました。
その後、勤めていた老人ホームで料理を振る舞う機会があったんです。入居者の皆さんが「おいしい」と言ってくれる姿を見て、やっぱり料理っていいなと思いましたし、限られた時間の中で大量のごはんを作る難しさを知り、凝った料理ではなく実用的な料理の勉強をするようになりました。
でもいざ自分でレシピを考えてみると、これが意外と難しくて……。いわば、時短料理はタイムアタック。限られた時間の中でいかにおいしい料理を作るかが大事ですから、同じ料理でも「時短」という条件が付くと、作り方から変えていかなければなりません。
例えば、おいしいビーフシチューを時間無制限で作るのと、10分で作るのとでは、断然後者の方が難しい。もしかしたらプロの料理人はできないかもしれない。時間に制限があるというだけで、料理ってこんなにも難易度が上がるんだと、改めて気付かされました。
一方で、これって面白いなとも思ったんです。「時短」という条件をクリアするために試行錯誤することは、ゲームを攻略していく感覚と似ていて。知恵を絞ったり、発想の転換をして解を見つけていくのが、次第に楽しくなっていきました。
そうしてその成果をSNSにも上げていった結果、皆さんがどんどん自分の料理に興味を持ってくれるようになりました。「いいね」がたくさん付くとやっぱりうれしいし、どうせ載せるなら皆さんが興味のあるものにしたいと思い、時短料理を探求していくことにしたんです。
僕はレシピを発信する時、どうすれば皆さんが作りたくなるのかということを最も重視して考えています。
商談時のプレゼンと同じですよね。どう売り出していくか、広告戦略が肝なんです。Twitterの140字の中で、いかにそのレシピの魅力を伝えるか。同じレシピでも、紹介の仕方一つで反応は全く変わってきます。
今は料理家も雑誌や本でレシピを届けるだけでなく、SNS等を通して個人で発信することができる時代です。いくら良いレシピを考えても、それをうまく伝えられなければ意味がない。
だから僕は今、これから料理したい人、いつも料理している人に、僕が作った最高の一品をどう作ってもらうか、そのために何をしたらよいのかを常に考えています。
「食べたい!」だけでなく、「作りたい!」と相手に思ってもらうって相当技術がいるんですよ。何度、自分で作ったものを届けて食べてもらったほうが楽だと思ったことか(笑)。でも、そこが料理家の面白いところでもあるんですけどね。
僕は料理ってプラス要素しかないと思っているんです。料理ができることによって、人は絶対に不幸せにはなりません。むしろ、人生が豊かになる。健康や栄養管理もできるし、ダイエットや筋トレをするにも自炊できたほうがいい。節約にもなりますしね。
料理の知見があれば、例えば外食で食べた料理を自宅で自分好みの味にカスタマイズして再現することはもちろん、それをほかの誰かに伝えたり、相手からさらに新しい情報を得られたりと、人との会話が広がっていく。僕はそれがとても好きなんですよ。
僕は、いろんな人と料理の話をたくさんしたいし、多くの人に“料理の沼”にハマってほしい。リアルの世界でもネット上でも、もっともっと料理を軸に会話を増やしていけるといいなと思っています。
現在発売中の『バズレシピ 太らないおかず編』には、炭水化物を使わない低糖質のおかずが多数掲載されています。中でもリュウジさんイチ押しのレシピは、「高野豆腐とハムの細切り炒め」だそう。
「高野豆腐に卵を染み込ませて、ハムと一緒に炒めるだけ。卵を吸わせることで肉のような食感になるので、食べ応えもあります。卵液を四角い高野豆腐にそのまま染み込ませる方法もありますが、それだと染み込むまでに時間がかかってしまう。そこで思いついたのが、高野豆腐を1本1本棒状にカットする方法。これで素早くしっかり味を染み込ませることができ、おいしく仕上がるんですよ」(リュウジさん)
本書に掲載されているレシピは、家にある身近な食材で作れるものばかり。コストもかからないし、体にも優しい。リュウジさんいわく「ご飯のおかずにはもちろん、おつまみにもいいですよ」とのこと。ダイエッターだけでなく、のんべえにもオススメですよ!
料理研究家。「今日食べたいものを今日作る!」をコンセプトに、Twitterで日夜更新する「簡単・爆速レシピ」が人気を集める。フォロワー数約110万人(2019年11月現在)。WEBサイト「アイスム」「フロムエーしよ!!」「味の素パーク」「ひとり暮らしLab」「アリシー」「LIMIA」などでも精力的にレシピを掲載中。
【Twitter】@ore825
【Instagram】@ryuji_foodlabo
【YouTube】料理研究家リュウジのバズレシピ