お菓子・料理研究家。シンプルなレシピが好評。
「お菓子はレシピ通り作れば、必ずおいしく作れます」と話すのは、お菓子研究家・福田淳子さん。丁寧なレシピとその再現性の高さで人気の福田さんに、この連載では材料4つで作れる“本当においしいお菓子”を紹介していただきます。第7回は「パウンドケーキ」。秋に食べたくなる、定番の焼き菓子をマスターしましょう!
朝晩もすっかり寒くなり、段々と秋も深まってきました。みなさんはいかがお過ごしですか? 今日は、手作りお菓子の定番中の定番「パウンドケーキ」を紹介します。
パウンドケーキ(pound cake)の名前の由来はバター、砂糖、卵、小麦粉をそれぞれ1ポンドずつ使って作ることから名づけられたと言われています。フランス語ではカトル・カール(Quatre-Quarts)といい、「四分の四」の意味。パウンドケーキはたった4つの材料をおおよそ同割で作る本格的なお菓子であり、お菓子づくりをする上での基本テクニックが満載なアイテムでもあります。今日はパウンドケーキ作りのコツを紹介しながら、お菓子作りの基本を学んでいきましょう。
まずは材料から。油脂はマーガリンではなくぜひバターを使ってみてください。バターを使うことで、乳製品独特のいい香りがします。食べる時はもちろんのこと、焼いているときの幸せな香りを楽しめるのは作っている人だけの特権です。そしてバターの使用量そのものが多いお菓子は、きちんと「食塩不使用」を使いましょう。バターの量の割合が高ければ高いほど、有塩の塩気が気になります。
砂糖は、お好みのものでかまいません。グラニュー糖または粉砂糖ですっきりと上品に仕上がります。上白糖はグラニュー糖よりも焼き色がしっかりつき、しっとり仕上がります。きび砂糖は優しい甘さと精製されたお砂糖にはない風味が出ます。卵はM玉を2個を使います。M玉がポイントです。SサイズやLサイズだと比率が良くないのです。家に卵があるけれど、サイズがわからない、という場合は卵黄はそのまま加えてよいですが、卵白は2個で60g計って使いましょう。今回は卵黄と卵白を分けて使うので、冷蔵庫で冷やしたものを使います。こうすると、卵黄と卵白に分けやすくなるのと同時に、メレンゲのキメが細かくなります。
逆に全卵を油脂に混ぜ込んでいくものは、卵を常温に戻しておくのがお約束。卵の扱いはレシピによって変わるので、準備の段階で確認します。
粉は薄力粉を使います。どっしりな食感をご希望の方は、半量を強力粉に変えると重みのある生地になります(フランスやアメリカでは焼き菓子には中力粉を使うのが一般的)。
さて、お菓子作りに入る前に、計量と下準備をします。お菓子作りは段取りがとても大事。バタバタしないように、必要なものは全て計量し、冷やすものは冷やし、室温に置くものはおいておきましょう。
型の準備をし、オーブンの予熱をはじめます。だんだん気温が下がるとオーブンの温めにも時間がかかるので余裕が必要です(特に電気オーブン)。オーブンの熱量の20〜30%が庫内の蓄熱の反射と言われています。なので、オーブンの庫内が十分に温まり、さらにそこからしっかりと蓄熱されていることが大事なのです。これはどんなお菓子作りにも言えることです。
バターは室温に戻しておきます。小さめに切って温かい場所に置いておくといいでしょう。ハンドミキサーや泡立て器で混ぜる前に、ゴムベラでしっかりなめらかになるまで練ります。この「バターをクリーム状に練る」はお菓子作りの基本中の基本です。「すぐに作り始めたい」という気持ちが先行して、バターを電子レンジにかける強者がいますが、これには要注意です。
かけ過ぎて、溶けてしまったバターが再びクリーム状になることはありません。溶けたバターには空気を含ませるということができないからです。その分、重たく膨らみの悪いケーキになってしまうのです。クッキーづくりの場合は、サクサクしない等、とにかく食感が崩れます。こうなると、食べられなくはない、でも期待したほどおいしくない、というとても残念な状態になります。
とは言え、冬の本当に寒い時期はいくら待っていても柔らかくならない場合もあります。そういう場合や、本当に時間がない場合は、慎重に電子レンジで加熱するのをおすすめします。まずは、バターを小さく切ります。これはできるだけ加熱ムラを抑えるためです。耐熱のボウルに入れたら、200Wや300Wなどの低ワットで10秒ずつかけて、その都度混ぜます。これをひたすら繰り返します。多少の面倒くささはありますが「溶けたら失敗」と思ってがんばりましょう。低ワットがない場合は、500Wとか600Wを5秒ずつで繰り返してください。
クリーム状の目安は、マヨネーズくらいのなめらかさです。そうなったら砂糖を加えてとにかくふわっと白っぽくなるまで泡立てます。こちらには泡立て過ぎはありませんから、思い切り泡立ててください。次に、卵黄を1つずつ加えて、なめらかになるまで混ぜます。これまでの段階がきちんとできていれば、卵黄は混ぜるとすぐになじみます。
次にメレンゲを作ります。メレンゲをどう作って、どう混ぜるかが、今回のケーキの大きな山場です。ボウル、ハンドミキサー(泡立て器)はきれいなものを使います。そして卵白に卵黄が混じっていないこともとても大事です(卵黄は油分であり、メレンゲがうまく泡立たなくなります)。
最初は何も加えずに泡立てて、少し角が立ってきたら、砂糖を2回に分けて加えてしっかり泡立てます。ツヤのある、しっかりとしたメレンゲを作ります。メレンゲを作っている途中ではおやすみしないこと。泡立て始めたらノンストップで作りましょう。途中で止めると卵白の状態が安定せず、そのあとうまく泡立たなくなることがあるからです。
メレンゲができたら、全体を混ぜ合わせます。一気にではなく、生地を少しずつ合わせていくのがムラなく、泡を潰さず混ぜるコツです。混ぜすぎもダメですが、混ぜなさすぎもダメです。生地ができたら、準備しておいた型に流し入れてオーブンで焼きます。竹串を刺して、何も付いてこなければ出来上がりです。
オーブンから出して、ケーキクーラーの上で冷まします。完全に冷める前に、ラップで包むのがしっとりのコツ。できれば半日くらい置いていただくと味が馴染んでおいしくなります。冷蔵庫に入れると、ぎゅっと生地がしまっておいしくないので、常温に置いてください。乾燥に弱いので、しっかりラップに包んで保存しましょう。
パウンドケーキは簡単でシンプルで親しみやすい、でも実は奥深いお菓子でもあります。ぜひ作りながら、お菓子作りの楽しさを体感していただけたらと思います。
バター(食塩不使用)…100g
砂糖…100g(グラニュー糖、上白糖、きび砂糖などお好みのものを使ってください)
卵(Mサイズ)…2個
薄力粉…100g
・型にクッキングシートを敷く。
・バターを室温に戻す。
・卵は冷やしておく。
・薄力粉はふるっておく。
・オーブンを170度に予熱しておく。
1.ボウルにバターを入れて、ゴムベラでなめらかなクリーム状になるまで練る。砂糖の半量を加えて白っぽくなるまでハンドミキサー、または泡立て器で白っぽくふわっとなるまで泡立てる。
2.1に卵黄を1個ずつ加え、なめらかになるまで混ぜる。
3.別のボウルに卵白を入れて、ハンドミキサーまたは泡立て器で泡立てる。少し角が立ってきたら、残りの砂糖を2回に分けて加えて、しっかりと角が立つまで泡立てて、つややかなメレンゲを作る。
4.2に3の1/3量を加える。泡が潰れてもいいので、ゴムベラでしっかりなめらかになるまで混ぜ合わせる。
5.薄力粉の1/2量をふるい入れ、ゴムベラで底から粉が見えなくなるまで混ぜる。残りのメレンゲの半量を加えて、全体をさっくり混ぜる。
6.5に粉の残りをふるい入れて同じように混ぜて、最後のメレンゲを加えて、泡を潰しきらないように丁寧に素早く混ぜ合わせる。
7.型に入れて、均等にならし、真ん中を少し凹ます。170度に予熱したオーブンで40〜50分焼く。竹串を刺して、何も付いてこなければ出来上がり。
8.焼けたらクッキングシートを付けたまま型から外し、ケーキクーラーの上で冷ます。まだほんのり温かいうちにクッキングシートをはずし、ラップで包む。
生地は基本のレシピで砂糖の量のみ100g→80gに減らし、6まで同様に作る。ブルーベリージャム100gを1/4量ずつ、ボウルの中にスプーンで落とす。ゴムベラで軽く混ぜて、型に流し入れる。混ぜすぎないのが、きれいなマーブルのコツ。
クランブルを作る。薄力粉大さじ3、砂糖大さじ1と1/2をボウルに入れて混ぜて、バター15gを手で潰しながら入れ、手ですり合わせてそぼろ状にしたら、ケーキの上に散らす。あとは基本のケーキと同じように焼く。
100均で入手したものを使ってみました。クッキングシートを敷いて使います。
お菓子は専用の型を使うのがけっこうなハードルだったりします。でも今は、何でも100均で気軽に入手できて、本当に素晴らしいなと思います。
お部屋がぱっと明るくなる、美しいお菓子満載のカレンダー。いちごやキウイ、マスカット……。宝石のように美しいフルーツが輝く夢のようなお菓子の数々を紹介しています。
『「お菓子は魔法」だなといつも思います。カレンダーを見るたびに幸せな気分になれますように、そんな願いを込めながら12ヶ月分のお菓子を作りました。巻末にはレシピがついていて、実際にお菓子を再現することもできます。ぜひ1度手にとってご覧ください』と福田さん。みなさんもぜひ、お手に取ってみてください。
お菓子・料理研究家。カフェでメニュー開発や店舗の立ち上げを経験後、雑誌や書籍を中心に活躍中。身近な材料と、シンプルな手順で美味しく仕上がるレシピに定評がある。これまでに手がけたお菓子の本は30冊以上。
【Instagram】@junjunfukuda
お菓子・料理研究家。カフェでメニュー開発や店舗の立ち上げを経験後、雑誌や書籍を中心に活躍中。身近な材料と、シンプルな手順でおいしく仕上がるレシピに定評がある。これまでに手がけたお菓子の本は40冊以上。
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【note】@sakuracoeur