食と健康のエキスパート・管理栄養士の藤橋ひとみさんが「腸活」に関する豆知識をお届けする連載。「腸」は美容・健康の鍵を握る臓器。様々な心身のトラブルの解消のために日々の食生活の中で継続して実践できるメンテナンス術を分かりやすくご紹介していきます。
日増しに春らしく暖かくなり、過ごしやすい日が増えてきました。ポカポカ陽気で春の訪れが嬉しい反面、今がまさに花粉の飛散ピーク真っ只中のため、花粉症の方にとっては辛い時期ではないでしょうか?
花粉症の正体は、体の免疫反応が花粉に過剰に反応して起こすアレルギー反応。前回は、免疫力を整えるためには腸を整えることが大切であること、そして花粉症の症状の緩和に効く可能性がある「プロバイオティクス(生きた善玉菌)」が入っているヨーグルトをご紹介しましたが、お試しいただきましたか?
実は、体の内側からアプローチできる方法は、ヨーグルトを食べることだけではありません。今回は、お住まいの場所によっては4月頃まで続くピークを乗り切るために、より効率的に腸活をしたいと思っている方にぜひ知っておいていただきたい、耳寄りな情報をお届けします。(出典1参照)
善玉菌を増やし、腸内環境を整えるためには、ヨーグルトのようなプロバイオティクスを含む食品を摂って、新たに善玉菌を腸内に送り込むだけでは十分とは言えません。自分の腸内にもともと存在する善玉菌に、エサとなる「プレバイオティクス」を与えて、良い菌を育成し、増殖させる 「育菌」も重要です。
プレバイオティクスは、主に食物繊維とオリゴ糖から摂取することができます。食物繊維は、野菜・果物・豆類・穀類・芋類・海藻類に多く、オリゴ糖は、大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナなどの食品に多く含まれていますので、これらの食材を日々の食事に取り入れると良いでしょう。(出典2、3参照)
プロバイオティクスとプレバイオティクスを含む食品を一緒に食べると、より腸活に効果的であることが明らかになっています。この組み合わせを「シンバイオティクス」と言い、最近では乳酸菌飲料やヨーグルトのCMでも使われていますね。
例えば、ヨーグルトを食べる際には、単体ではなく「フルーツやグラノーラを加える」「オリゴ糖をかけて食べる」などの組み合わせをすると、より腸活の効率アップが期待できます。(出典3参照)
まだあまり知られてはいませんが、近年、私たちの腸活の味方をしてくれる新たな物質が発見されました。それを「バイオジェニックス」と言うのですが、耳にしたことはありませんか?
バイオジェニックスは腸にダイレクトに働き、私たちの体に嬉しい働きをしてくれることが明らかになっています。具体的には、免疫力アップ、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用と言った効果があると、注目を集めています。(出典4参照)
バイオジェニックスには、生理活性ペプチド、植物ポリフェノール、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、ビタミンA・C・E、β-カロテン、などの食品成分が該当すると言われています。
これらは、野菜、果物、豆類、イワシ類・サバ類・サンマなどの青魚をはじめとした魚介類に多く含まれています。プレバイオティクスとなる食物繊維やオリゴ糖を多く含む食品と共通するものも多いので、ぜひ意識して毎日の食生活に取り入れてみてくださいね。(出典4、5参照)
多くの日本人が苦しむ花粉。ピークの時期が半分過ぎ、諦めかけていた方もいるかもしれませんが、まだ降参するには少し早いです。来シーズンも見据えて、免疫力を整えるためにできることから取り組んでみてはいかがでしょうか? 一時的だけで終わらせず、長期的に体の内側からキレイ・健康を作る「美腸ライフ」を続けましょう。
〈出典〉
1. 厚生労働省「花粉症特集|花粉症Q&A集」
2. 厚生労働省「e-ヘルスネット|腸内細菌と健康」
3. Markowiak P, Śliżewska K, Effects of Probiotics, Prebiotics, and Synbiotics on Human Health. Nutrients. 2017 Sep 15;9(9).
4. 田村 基「技術用語解説|バイオジェニックス」日本食品科学工学会誌57 巻 (2010) 10 号
5. 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
(全て2020年3月9日 参照)
フリーランス管理栄養士として、商品開発やレシピ開発、コラム執筆やメディア出演、コンサルティング等、幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得を目指し、栄養疫学の研究に取り組んでいる。大のお豆腐好きが高じて、豆腐マイスターの認定座学講師として、国内外で日本の豆腐の魅力を伝える活動をしているなかで、その原料である大豆自体への興味が深まり、大豆関連の資格の制覇を目指し、学びを深めている。
近年は特に、豆腐を作る際に同時にできる「おから」に注目し、日本人に必要な食物繊維の宝庫でもある「おから」を、有効活用できる方法を広げる活動に注力している。「美腸」をテーマにしたレシピ本の出版を予定。
●所有資格
管理栄養士、調理師、製菓衛生師、豆腐マイスター、食育豆腐インストラクター、豆乳マイスタープロ、おから味噌インストラクター、ソイオイルマイスター、おから再活プロデューサー、インナービューティープランナー、ほか