あったかい湯気がほのかに立つ、炊きたてのご飯の上に、塩もみした大根の葉のみじん切りと、うすく削ったかつおぶしを、ぱらぱらと振りかけて、しょう油をちょろっと垂らして食べるときのおいしさは、ちょっと類がありません。こればかりは日本でなければ味わえないおいしさのひとつでしょう。そんなごちそうをいただくためには、白米を上手にといで、炊くことです。
白米のとぎ方は、今と昔で異なります。リズミカルに手首を回しながら、ゴシゴシと白米をとぐ音や母の姿を思い浮かべる人は少なくないでしょう。昔は、精米技術が悪く、精米された米でも、ヌカがついていたり、精米不足というものも多かったので、手のひらでこすりあわせるように、丹念なとぎ方が必要でした。しかし、今は精米技術が進歩しているので、ゴシゴシととぐ必要はありません。米粒表面の、酸化した部分や、付着したヌカを、軽くといで落とす程度で十分なのです。とぐというよりも、今は、水で洗うという感覚でよいかと思います。
炊飯器でおいしく炊きあげるための、白米の正しいとぎ方をおさらいしましょう。
正確に計量することが大切です。180㏄の計量カップに米を入れたら、カップを左右にゆすって平らにします。これが1合です。うまく平らに出来なければ、箸を使って、カップのフチに沿って、米のふくらみをそぎ落とします。米は、計量カップすりきりにつめると覚えておきましょう。
米の表面についているゴミやホコリを取り除くために、とぐ前に、一度水ですすぎます。大きめのボウルに、正確に計った米を入れて、素早く水を注ぎましょう。米がすべて沈むくらいの量が目安です。米は、水をすぐに吸収しようとします。一度、米の中に吸い込まれた水は、芯まで吸収されます。出来れば、浄水器を通した水か、ミネラルウォーターがよいでしょう。
一回目のすすぎをします。水を注いだら、そのまま、かるくかき混ぜて、すぐに捨てます。水を入れてから捨てるまでは、およそ10秒で行います。かき混ぜたときに、米が浮いてくるかもしれませんが、これは、炊き上がりがベタベタと水っぽくなる米なので、できれば取り除きます。
もう一度、ボウルの中に、すべての米が浸かるように水を入れて、かるくかき混ぜて、すぐに捨てます。一度、水を吸収したあとですので、2回目は、水道水で結構です。水は、ほぼ切れていれば大丈夫です。
ボウルの中の米を、シャカシャカシャカと20回、手で軽くかき混ぜます。手はソフトボールを握ったような形にして、そのままかたちを変えずに一定のリズムとスピードで、泡立て器のようにかき混ぜます。米の表面を摩擦で磨くようなイメージです。
米をとぐと、ボウルの底に、乳白色のにごり水が出ます。そのまま捨てるのではなく、素早くあたらしい水をたっぷり加えて、2〜3回かき混ぜ、にごり水をうすめて捨てます。これをもう1度繰り返します。
とぎ具合を確認するために、もう一度水を入れます(これが、チェック水)。水を静かにボウルの端から入れるようにして、出来るだけ米に水流が当たらないように気をつけます。水の色がほぼ透明であれば、米はとぎ終わりました。
すすぎからとぎ終わりまで、3分くらいで終わらせるのが理想です。
米のとぎ方は手際よく行うのがポイントですが、あせったり急いだりする必要はありません。てきぱきと迷わず行うように心がけます。大切なのは、生産者への感謝の気持ちを忘れずに、食べる人のことを思い、心をこめて、ていねいにとぐことです。
とぎ終わった後に、しっかりと水を切る必要はありません。炊飯器に入れる水の量は、基本的には、炊飯器のメモリを目測で合わせましょう。そして、時間を置かず、すぐに炊きはじめてください。
日によってかたさや柔らかさが変わらず、いつでも同じおいしさを味わえるようになれば、とぎ方をマスターできたということでしょう。
協力:西島豊造(スズノブ) 文:田中真唯子
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