みそ汁くらい、あれこれと自由に材料を選べる料理はありません。みそ汁とは、それだけ楽しい料理です。
じんわりと心にしみいるような、おいしいみそ汁がいただける毎日には誰もがあこがれます。みそ汁のおいしさは、どんなダシをこしらえるのかが大切。みその選び方もあるかと思いますが、ダシにこそ、みそ汁のいのちがあるのではないでしょうか。
ダシは日本独自のものです。ダシは、伝統的な日本料理が、哺乳類や鳥類を材料としていなかったことで、油脂の利用もなく、スパイスを用いることもない食文化によって生まれた、知恵のひとつといわれています。
昆布とかつおぶしのダシをこしらえましょう。
材料は、水1リットルに対して、昆布を一枚(およそ20センチ×10センチ)、かつおぶしをひとつかみ(およそ20グラム)です。
今回、削り器でかつおぶしを削ってみました。自分で削ったかつおぶしは香りがよく、どんなダシが出来るかとても楽しみです。削り器とかつおぶしの用意があれば、毎回、削ることはそれほど苦ではありません。また、かつおぶしは削ったらすぐに使いましょう。置いておくとすぐに酸化してしまい、香りもうま味も飛んでしまいます。ですから、使うたびに削るのが理想です。削ったかつおぶしは、粉が混ざっているので、ザルで粉を軽くふるってから使うとよいでしょう。
かつおぶしが出来たら次は昆布です。よくしぼったぬれブキンで、昆布の表面を拭きます。白い粉はうま味ですから落としません。水の入った鍋に昆布をいれます。最低でも30分はかけてゆっくり戻します。
昆布の入った鍋を中火にかけ、沸騰寸前にかつおぶしを加え、ただちに弱火にし、沸騰しないように気をつけて1分くらい見届け、火を止めます。かつおぶしが鍋の底に沈んだら、ザルにキッチンペーパーをしいて漉します。
ダシが出来ました。
ダシは冷蔵によって2日は保存できますがどうしても味が落ちてしまいます。毎回、食べる分だけこしらえて、料理することをおすすめします。
みそ汁作りで知っておきたいのは「煮えばな」(できたて)です。みそ汁はあたため直したら味が落ちるので、「煮えばな」で食べてもらうように心がけましょう。
長ねぎはお好みの量を、斜めに厚く切ります。鍋にダシ3カップ入れて、中火にかけます。ふつふつと沸きましたらねぎを加えます。
絹ごし豆腐(小一丁)を手のひらの上で、1.5センチ角に切り分けて加えます。
豆腐をさっと煮て、弱火にし、白みそ大サジ2.5杯、赤みそ大さじ0.5杯を溶き入れます。豆腐の水分で汁が薄まりますので、豆腐のみそ汁は気持ちやや濃い目に仕立てます。
長さ3センチに切った、豚うす切り肉(3枚分)を、お好みの量で切った長ねぎと共にだしに入れ、3分ほど中火にかけます。お好みの合わせみそ大サジ3杯を溶き入れ、ひと煮させ、お椀に盛りつけます。おかずにもなるおいしいみそ汁の完成です。
ダシは他に、昆布のダシと、かつおぶしのダシがあります。
昆布のダシは、昆布を水の入った鍋に入れ、1時間ほどつけておき、弱火にかけて、沸いたら火を止め、出来上がりです。昆布のダシは、シジミやアサリ、魚といった素材からもダシがでるみそ汁に適しています。
かつおぶしのダシは、鍋に水を入れ、火にかけ、沸く寸前に火を弱め、かつおぶしを入れます。弱火で5分煮て火を止めます。かつおぶしが沈んだら、ザルにキッチンペーパーをしき、漉して出来上がりです。かつおぶしのダシは、野菜を具にしたみそ汁におすすめします。
忙しい人には、煮干しと昆布のダシをおすすめします。
1リットルのダシをとるなら、煮干しは40グラム。煮干しは頭と内臓を手でつまんで取り除きます。鍋に水を入れて、煮干しと昆布(5センチ角)を入れておくだけです。朝になったら、煮干しと昆布を取り出し、ザルにしいたクッキングペーパーで漉します。
ダシで生まれるうま味は、日本独自のおいしさでもあります。おいしいダシをこしらえて、最初の一口がおいしいのはもちろん、最後の一口もおいしいみそ汁を目指しましょう。
文:松浦弥太郎 写真:片山育美
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