フランスのボルドー女子修道院で作られた伝統焼き菓子のカヌレが大好物だ。もう随分前になるが、パリのヴァンブー蚤の市で、アンティークのカヌレ型をいくつか見つけた時は小躍りして喜んだ。
昔から僕はミニチュアと呼ばれるものに目がなく、本来大きなものが、手の平サイズに縮小されていて、しかもしっかりと用を成すとなると、思わず両手で抱きしめたくなる。カヌレというお菓子は、昔の僧侶の帽子を型にした、溝のある昔ながらのケーキ(クグロフ)が、そのまま小さくなっているだけでもたまらないのだが、そのおいしさが、小さくなってさらに増しているという、夢のようなお菓子なのだ。
「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」のプチカヌレ(237円)は、通常のカヌレ(345円)でも充分なのに、もうひとまわり、さらに小さくするなんて、僕のような小さいもの好きからすると、パン、パン、と胸を二三発撃ちぬかれるような衝撃的な嬉しさがある。まわりの皮が香ばしくてカリカリ、中身がふっくらモチモチ。ラム酒と卵黄、バニラによる豊潤な甘さが実においしい。半分に切った断面の美しさといったら、しばらく眺めてうっとりしたいくらいだ。
「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」のプチカヌレを手土産に買う時、店員さんに「プティカヌレを6コください(6コがきれいに箱に収まるのもたまらない)」と言うのは、「オーボンヴュータン」の河田勝彦さんが「プチ」を「プティ」と堂々と発音していたことの真似である。店員さんが「かしこまりました」と、いつも以上に感じ良く応対してくれるのは気のせいだろうか。今日もくいしんぼう。
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文・写真:松浦弥太郎
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