「恋をすると味覚が変わってしまう」とは、昔からよくいいますよね。恋をするとなんでも甘く感じてしまうといいますが、それは本当なのでしょうか。医師に解説してもらいましょう。
ヒトは“味覚”をどのように感じているのでしょうか。
私たちのベロの表面には、ブツブツとした突起が無数にあります。これが味蕾と呼ばれる、味を感じるセンサーです。舌の部位によって、辛みや酸味、甘みといった、さまざまな味を感じるセンサーが備えられています。食べ物を口に入れたとき、その中の化学物質とこのセンサーが結合し、味成分が分析されます。
そして、この結果は脳神経を通じて脳にまで送られ、味を感じます。脳の中でさらに処理され、これまで経験した味との照合が行われ、最終的に、なんの味かということがわかるシステムです。
この照合には、高度な脳機能が使われます。 食べた瞬間に、昔の光景が思い浮かんできたり、腐っていると判断して即座に吐き出したり、酸っぱいと判断して唾液をたくさん出したり、味を感じるだけではありません。
例えば、感情的に落ち込んでいるときには、どんなものを食べてもおいしく感じられないし、そもそも味がよくわからないというのは、そのような脳の機能によります。
もうおわかりですよね! 恋をしたり、何か楽しいことがあると、脳はさまざまな味の判断を“間違えて”しまうのです。
特に、人にとってプラスの方向である“甘み”を強く感じることがわかっています。そのため、恋愛をしているときには、普段より食べ物をおいしく、甘く感じるのですね。また、恋人が作ってくれた食事や、もらった食べ物を味わうときには、この反応が特に強く起こるといわれています。
さらに、何年か後にそのことを思い出すとなんとなく甘い雰囲気がするのも、このような脳における味の変換作用が大きく関係しているのですね。脳と食べ物の味には、切っても切れない深い関係があるようです。