毎年気になるのが夏の気温。当初、気象庁による長期予報では「5年ぶりのエルニーニョの発生により冷夏」とされていましたが、6月25日の発表で「北日本に雨が多いが、ほぼ平年並み」という予想に。とくに西日本、沖縄・奄美は平年よりも暑くなりそうとのこと。そうなると気になるのが熱中症対策。その原因や対策などの基礎知識から、知っておきたい落とし穴まで、熱中症対策ニュースを8回にわたってお届けいたします。
暑くなると何かと取り上げられる熱中症。特にスポーツをしている人はスポーツドリンクをとるように言われますよね。でも、アラサー以上の方々、子どものころに“運動するときは水をとるとバテるぞ”と言われていませんでしたか? かつては運動中は水分をとらないのがお約束でしたよね。 なのに今ほど熱中症が少なかった気がします。昔の子のほうが強かったんでしょうか。それに、熱中症ではなく熱射病とか言っていましたよね。今と昔、何が違うのでしょうか。
熱中症による死亡数は、1993年以前は年平均100人を超えることはまれでしたが、1994年は589人と桁違いの多さに。じつは1994年は記録的な猛暑だった年でした。静岡県天竜市で40.6℃を記録したのを筆頭に、各地で35℃を超える気温が観測されました。この年以降、年平均492人に増加しています。環境省の熱中症環境保健マニュアルによると、熱中症の増加はやはり夏期の温が上昇していることが関連しているとされています。実のところ、これまでで最も暑かった2013年に熱中症で搬送された人は5万8729人(6~9月)で、同期間の集計を始めた平成22年以降、最多でした。
気温の上昇以外に、都市化による輻射熱の影響が考えられます。輻射熱とは地面や建物から出る熱のことで、自動車の排気やエアコン熱の増加や地面の舗装化、緑や地面の減少により年々上昇しているといわれています。
これらによって日本の夏は年々、熱中症のリスクが高まっているのですね。昔の子が強かったわけではありませんでした。
熱中症とは気温の上昇などによって体が熱くなり、体内の水分などのバランスがくずれて体の機能がうまく働かなくなることをいいます。
症状によって大きく4つに分けられるって知っていました?
体温が上昇したことによって皮膚血管の拡張が起こり、下肢に血液がたまって、脳への血流が減少するため、一時的な失神状態に陥ります。
大量に汗をかくと水分と塩分が体から失われます。なのに、水だけを補給して塩分をとっていないと、血液の塩分(ナトリウム)濃度が低下し、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんが起こります。
大量に汗をかいたのに、十分な水分の補給ができていないと、身体が脱水状態に。心臓に戻る血液が少なくなり、心拍出量の減少で循環血液量が減少し、重要臓器(脳など)および内臓への血流が減少することにより、めまい、頭痛、吐き気などが起きたり、全身に倦怠感が広がったり、集中力や判断力が低下したりします。
体温が上昇したために、脳の温度も上昇し、脳の機能に異常をきたした状態です。意識障害やショック状態になる場合もあります。
昔よくいわれていた熱射病は熱中症のひとつだったのですね。なお、症状の重篤度により、熱失神と熱けいれんの一部を重症度Ⅰ、熱けいれんの一部と熱疲労の一部を重症度Ⅱ、熱疲労の一部と熱射病を重症度Ⅲという分類もあります。
原因をみると、熱中症対策には水分だけをとっていればいいわけではないということがわかりますね。また、最初に触れたとおり、死亡に至る病気でもあります。
とくに気をつけたいのが小さな子どもと老人。本人が気づかないうちに重症化している場合が。周囲がよくよく気をつけたいところです。
そのためにも知っているつもりで意外と知らない熱中症のこと、チェックしましょう!
次回は熱中症と塩との関係にせまります。(TEXT:松崎祐子)
<参考>環境省HP、厚生労働省HP、気象庁HP