お菓子作りは化学反応。分量が正しくても、混ぜ方や焼き方の微妙な違いによって仕上がりが大きく変わってきます。見た目はもちろん味にも影響し「レシピ通りに作ったのに失敗してしまった…」ということもありますよね。
そこで、そんなお菓子作りの化学を「見える化」するために、今日は一例としてお菓子の焼き時間による味覚の変化を紹介したいと思います!
今回取り上げるのは、卵白を泡立てながら砂糖を加えて作る「メレンゲ」。メレンゲはマカロンやシフォンケーキを作る際に欠かせないものですが、焼いてそのまま食べることもできます。そこで焼きメレンゲの焼き時間を1時間から9時間まで変えて作り、味の変化をみてみました。
味の変化は、食べ物の基本5味である、甘味・旨味・塩味・酸味・苦味を数値で表せる味覚センサーレオくんに測定してもらいました!
果たして、焼き時間によって味覚はどのように変化するのでしょうか?
焼き時間を変えて作った結果、一番変化のあった味覚は、なんと「旨味」でした!
旨味は焼き時間が6時間の時に最大となり、その後は徐々に減少します。これは加熱が進むことによって、核酸やアミノ酸といった卵白の細胞に含まれる旨味成分が漏れだしたり、それらが砂糖と一緒にさまざまな反応を起こすためだと考えられます。
さらに旨味が変化することで、基本5味の全体の強さから算出される「コク」にも変化が現れます。コクも旨味と同様に、焼き時間が6時間の時が最大となりました。
このように焼き時間によって味覚は変化します。お菓子のレシピには「45分〜60分」などと幅のある焼き時間がかかれていることが多いですが、焼き時間には自分なりのこだわりを持った方が良いかもしれませんね。
メレンゲの場合は6時間の場合に最も旨味とコクが高く、美味しくなるということが分かりました。他のメニューの場合にはまた別の最適な焼き時間があるはず。あなたも、自分のお菓子が最も美味しくなる焼き時間をぜひ追求してみてください!
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。