サンセバスチャンの料理文化を形作るのは、旧市街のバルだけではありません。世界一の美食の街と呼ばれるのに相応しく、有名シェフや画期的な料理や技法を輩出し続ける「バスク・クリナリー・センター」という料理の4年制大学があります。私たちは今回、広報部長のホセ・ルイス・ガリアナさんにお話を伺うことができました。
ーーバスク・クリナリー・センターはどのようにして始まったのですか。
ホセさん:バスク・クリナリー・センターの始まりについて語るためには、1980年代の「ヌエバ・コシーナ」のムーブメントまで遡る必要があります。現在では世界を代表する巨匠シェフで、サンセバスチャン出身のフアン・マリ・アルサックとペドロ・スビハナはフランスの「ヌーベル・キュイジーヌ」(フランス語で「新しい料理」)ムーブメントに出会い、衝撃を受けました。そして彼らは、地元であるバスクの味覚と新しい技法を融合することを始めたのです。彼らは料理人仲間たちと一緒に新たな料理を作り出しては、教え合い、お互いを高め合い、「ヌエバ・コシーナ」(スペイン語で「新しい料理」)という潮流を作り出しました。
彼らは「芸術や科学は学位があるのに、なぜ料理にはないんだろう?」という疑問を抱きました。これに対する答えとして設立されたのが、当校、バスク・クリナリー・センターなのです。
ーーバスククリナリーセンターに入学するためには何が必要でしょうか?
ホセさん:情熱です。料理に対する情熱、そして探究心。各学年の定員は100名ですので、もちろん選抜があります。入学試験は、面接とグループワークがあります。32カ国からやってきた400名が学んでいます。日本人学生もいますよ。それから、この学校で学ぶとどこまでの料理レベルに到達できるようになるのか、とよく質問されます。私はいつも「明日のシェフを育てています」と答えています。
ーー学部教育のほかに研究もやってらっしゃいますね。最近はどんな研究をしているのですか?
ホセさん:大学とは別に研究開発センターという組織があり、ここで25名の研究員が研究をしています。企業とのコラボレーションをしていたり、技術が食に与えるインパクトなどを研究しています。最近は、サステイナビリティ(持続可能性)と健康を重要なテーマとして捉えています。サステイナビリティに関しては、例えば、食材の廃棄される部分の再利用の研究などが挙げられます。
ーー日本食はバスク・クリナリー・センターにどのような影響を与えていますか?
ホセさん:当校の学生は、スペイン料理やフランス料理など基礎となる料理を学びます。和食はその基礎となる料理の一つです。和食は、一見シンプルなものの奥に複雑さが込められています。あなたが日本人だからこう言っているわけではなく、本当に和食は料理の世界に大きな影響を与えているんですよ。
和食がサンセバスチャンの料理革新、そして世界の料理に影響を与えていると伺い、嬉しくなりました。これから、どんな新しい料理や素晴らしいシェフがこの大学から生まれてくるのか楽しみですね。
2回に渡ってクックパッド・スペインメンバーがお届けした、「サンセバスチャンめぐり」。お楽しみいただけましたでしょうか?サンセバスチャンの魅力や空気感を、少しでもお伝えできていたら嬉しいです。 次回はスペインを代表する料理「パエリア」の本場のレシピをご紹介する予定です。ご期待ください♪
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