これから冬にかけて気になるのが「手荒れ」。家事は毎日のことだけに深刻な悩みですよね。でもこの手荒れ、日常で少しのことを気をつけるだけでずいぶん違ってくるよう。これまで手荒れに悩む多くの患者さんに接してきた、野村皮膚科医院の野村有子先生に話を伺ってみました。
「手荒れの原因は、手を洗うことと使うことです。水仕事がよくないと思っている人は多いと思いますが、じつは洗濯物をたたむだけでも手は荒れてしまうのです」(野村先生)
洗濯物をたたむだけで?と驚いた人も多いと思いますが、具体的には以下のような作業が手荒れにつながるのだとか。
食事のしたく、食器洗い、洗濯、ぞうきんがけなど
頻繁に洗う、液体ハンドソープをたくさん使う、洗ったあと拭かないなど
(特に)パソコン、携帯をよくさわる、紙や布をさわる、新聞を読む、草むしりなどの庭仕事など
水仕事以外にも手荒れにつながる行為がこんなにあるとは驚きですよね。では、生活するうえでどのようなことに気をつけたら良いのでしょう?
「まず、洗いすぎないのが大切。水だけでもかなりの汚れは落ちます。石けんは外出から帰ってきた時やトイレ(大便)の後のみとし、それ以外は水でさっと洗うだけでも大丈夫。手荒れに悩む人は敏感肌用の固形の石けんがおすすめです。殺菌力が強いものは刺激も強いのでさけましょう」
「また、洗った後はすぐに 1)清潔で、 2)乾いた、 3)柔らかいタオルで、手全体をやさしく包み込むように水分をきちんと拭き取ります。濡れたままだと手荒れの原因になります」
「手を洗うと保湿成分が失われてしまいます。すぐにハンドクリームを塗ることを習慣づけるのがポイント。洗面所やリビングなど、あちこちに置いておくと便利です。油分の多いハンドクリームは水では落ちにくく1日数回塗るだけでも効果がありますが、べたつくのが難点。日中はローションやさらっとしたクリームタイプを使用するのが良いでしょう」
ほかにも家事でのわずかな気遣いが手荒れを防ぐことにつながるそう。ちょっと面倒だと思っても、そこを頑張れるかどうかで差が! 基本的なことではあるけれど、悩みが深刻な人は試してみる価値ありです。
食器洗いのコツ
おけなどに水をはり数滴洗剤を入れ、その中に汚れた食器を付け置きしておく(油汚れはあらかじめティッシュなどでふき取る)。その後にスポンジ(洗剤がいらないタイプ)で軽く洗ってさっと水で流せば手荒れ予防に。鍋などを洗う時だけでもゴム手袋を使用するとより効果的。
そうじのコツ
乾拭き、掃除機がけ、片付けなどの家事は、できれば薄手の手袋(綿)を着用して作業すると◎ 今はパステルカラーなどのカラフルな綿の手袋もあるので、それを使うとちょっぴり優雅な気分に♪
手荒れ予防に欠かせないハンドクリームですが、種類が豊富でどれを選んでいいのか悩みますよね。大きく分けると以下のような分類になるので、症状に応じて選んでみて。
角質層を溶解させる働きと保湿効果あり。手のひらや足の裏、ひじ、ひざなどの肌が角質化してカサカサしているときに効果的。ただし、傷があったり唇や目元など皮膚の薄い部分は刺激になるので使用しないこと。
ビタミンEには血行を促進させる効果あり。手足全体がカサカサしてあかぎれができ始めていたり、指先が冷えていたりしもやけやかゆみがある時に効果的。
クロタミトン、ジフェンヒドラミンなどかゆみ止め成分が配合されており、皮膚に赤みやかゆみがある時に効果的。ただし、数日使用しても効果がない場合は、皮膚病や内臓疾患などの可能性もあるので皮膚科の受診を。
ワセリン、スクワラン、セラミドなどの保湿成分が配合されており、かさつきが気になる時に効果的。ただし、かゆみがあったりあかぎれができて赤くなっているときは、かゆみ止め系やビタミン系を選ぶ方が無難。
ハンドクリームは冬以外でも1年中こまめに塗ることで、冬の手荒れを防ぐことにつながるそう。
「手の角質は2週間、表皮は4週間で生まれ変わります。手荒れが起き始めると、修復するまで2週間以上かかってしまいます。普段から手に気を配ることは手荒れの予防にとって最も大切なことです」
家事とは切っても切れないことだからこそ、うまく付き合っていきたい「手荒れ」。ここで紹介したのは今日からできることばかりなので、ぜひ実践してみてくださいね。
医学博士、皮膚科専門医/野村皮膚科医院 院長
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