「お酒の締めにお米を食べようとすると、お腹がいっぱいで食べられない」。そんな声を聞くことがあります。ならば、お米を食べながら、お酒を楽しむのはどうでしょう? 思わずお酒が呑みたくなるようなお米料理、名付けて「つまみめし」。お酒の肴になるだけでなく、子どももおいしく食べられる楽しい“日常酒飯”ライフを、お米ライター・柏木智帆がお米のコバナシとともにご提案します。
お米にお腹と背中があるって知っていますか? 実は、胚芽が欠けている側がお腹。その反対側が背中なんです。
お米にデンプンが詰まっていくのは、背中から。そして、徐々にお腹のほうにも詰まっていきます。その時に何らかの障害を受けることによって、デンプン粒が粗くなり、白く濁ったように見えることがあります。お腹が白く濁るのは「腹白粒」、背中が白く濁るのは「背白粒」と言われています。
家庭でもたまに部分的に白く濁った米粒を見かけることがあるかもしれません。白く濁る部分の違いによって「心白粒」「乳白粒」などと呼び方も変わってきます。いずれも「未熟粒」と呼ばれ、白く濁った部分は米質がもろく食味が悪いと言われています。果たしてその通りなのでしょうか?
ある論文では、「腹白米は実りの良い米であるという考え方と、登熟中に障害を受けた米であるという矛盾した2つの考え方が存在する。しかし、腹白米になりやすい品種もあるため、障害を受けた米とは区別して考える必要がある」という内容が書かれています。
実際に腹白粒や心白粒が混じったお米を食べてみると、食感の悪さは感じられませんでした。
お米にはこうした「未熟粒」のほかに、虫に食われたり病気によって損傷を受けたりした「被害粒」、粒のほとんどが粉質状になった「死米」、米に茶色い斑点がついたりした「着色粒」などがあります。
こうしたお米を私たちが食べる機会が少ないのは、多くの場合は機械によって選別されているからです。
選別機でふるい分けられずに混じっている腹白粒や心白粒などと違って、こうしたお米がふるい分けられて外されるのはなぜなのでしょうか。
そこで、選別機でふるい分けられた「被害粒」「死米」「着色粒」だけを炊いて食べてみました。
炊き上がりは酸っぱい香り。食感はぐちゃぐちゃねちゃねちゃ。風味が悪くて苦くて、食べ続けられませんでした。選別作業は見た目を良くするためだけではなく、食味を良くするためでもあるということが身をもって体感できました。私たちはさまざまな工程によって選び抜かれた、おいしいお米だけを食べているのです。
普段何気なく食べている白ごはんのおいしさに感謝して、シンプルな「菜めし」を日本酒の肴に。
日に日に寒さが増して、根菜がおいしい季節になってきました。スーパーに並んでいる大根のほとんどは葉が切り落とされていますが、葉付きの大根に出会えたらぜひ「菜めし」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
小さめのおむすびにすると、お酒を呑みながらつまみやすく、小さな子どもも食べやすくなります。シンプルだからこそ、白ゴマを混ぜたり、醤油をほんの少したらすなど、アレンジの幅も広がります。浸水は冷蔵庫の中で2時間以上置くとおいしく炊くことができますよ。
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。