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コラム

鮨店のシャリに学ぶ!おいしい「酢飯」の炊き方【日常酒飯の「つまみめし」レシピVol.5】

「お酒の締めにお米を食べようとすると、お腹がいっぱいで食べられない」。そんな声を聞くことがあります。ならば、お米を食べながら、お酒を楽しむのはどうでしょう? 思わずお酒が呑みたくなるようなお米料理、名付けて「つまみめし」。お酒の肴になるだけでなく、子どももおいしく食べられる楽しい“日常酒飯”ライフを、お米ライター・柏木智帆がお米のコバナシとともにご提案します。

理想のシャリはお米選びから

2月3日は節分。百貨店やスーパーやコンビニなどでは「恵方巻き」商戦が繰り広げられています。大阪発祥と言われている恵方巻きですが、今ではすっかり全国的に定着しています。

恵方巻きの具材はさまざまですが、基本はごはんと海苔。寿司酢と合わせる「シャリ切り」をすることを想定して、ごはんを硬めに炊飯できるように内釜に「すしめし」の水位線がある炊飯器もあります。

鮨店によって「理想のシャリ」は違いますが、私がおいしいなあと思うのは、「外硬内軟」の食感で、舌触りが良く、米粒同士の離れが良く、口の中で米粒がほろほろとほどけていくようなシャリです。対局とも言えるのは、以前にトルコの日本料理店で食べたシャリ。軟らかすぎて米粒が潰れていて、まるでおはぎのようでした。

鮨店では、理想のシャリを目指して、さまざまな工夫がなされています。

お米の粘りを抑えるために古米を使ったり、「ササニシキ」「ササシグレ」「ハナエチゼン」「日本晴」など、粘りの少ないあっさりとした品種を使ったり、ここ最近は「笑みの絆」などの「寿司専用米」を使う店もあります。

古米が欲しいけど手に入らなかったというある鮨店では、試行錯誤の上、7分づきにしたお米を使っていました。粘りを抑えて米粒同士の離れを良くするためだそうで、見た目も食感も分つき米(※)とは気づきませんでした。

※分つき米:玄米から胚芽やそのぬかの部分を一部残して精米した米のこと。精米度合いに応じて、3分づき・5分づき・7分づきと、数字が大きくなるほど白米に近づく。

酢飯は寿司酢がなじんだ時点で完成

普段、私たちが食べる白ごはんは、本来は冷蔵庫の中で半日かけてじっくり浸水すると、米粒の芯までしっかりと火が入り、ふっくらと炊き上がって、よりおいしく食べることができます。

しかし、炊飯前のお米の浸水時間をあえて短くしている店もあります。ある鮨店では、冷水で20分浸水させた後に、ざるに上げて20分。さらに、水量を少なめにして炊いていました。炊きあがったらすぐにシャリ切り。寿司酢を合わせたばかりのシャリを食べると、米粒がしっかり、しっとりとして、酢が効いています。それから1時間半後に食べると、酢がまろやかになってごはんになじんでいました。

シャリは炊飯によって完成するのではなく、熱々炊きたてから人肌ほどの温かさになり、寿司酢がなじんだ時点で完成するのです。冷めておいしいおむすびとは根本的に炊飯の考え方が違うことが分かります。

この鮨店では、シャリが冷めた状態の鮨は提供しません。浸水時間も炊飯の水量も少なく、寿司酢に砂糖を使っていないため、冷めると硬くなってしまうからです。一方で、特にテイクアウトの鮨店では寿司酢に砂糖を使っている店がほとんどです。

家庭で恵方巻きを作る時は、シャリが冷めてから食べる場合がほとんどでしょう。冷めてからもおいしい恵方巻きを作るならば、あくまでどんな酢飯が好きかによりますが、浸水をしっかりした上で、少なめの水で硬めに炊き、寿司酢には多少の砂糖が入っていたほうが無難かもしれません。

ただし、巻く作業は酢飯がほんのり温かいうちに。鮨店では専用のおひつで湯煎するなど、シャリの温度が下がらないようにしています。冷めてしまうとごはんがうまくまとまってくれません。

米と酒と青魚はゴールデンコンビ

恵方巻きはその年の恵方(方角)を向いて丸々1本かぶりつき、食べ終わるまで口をきいてはいけないものだそうです。でも、かぶりついたときに海苔に押されてごはん粒がつぶれてしまうし、楽しくおしゃべりしながら食事をしたいので、私は恵方巻きを切り分けて楽しんでいます。もはや恵方巻きではなく太巻きですが。

太巻きと言えば、きゅうり、白ごま、厚焼き卵、椎茸の含め煮、かんぴょう煮などが定番。煮穴子や桜でんぶなどが入ったものもありますが、すべての具材を用意するのは大変。海鮮も良いけど、あれこれそろえようとすると意外に高くついてしまいがちです。

そこで、こちらのレシピのような巻き寿司はいかがでしょう?

自家製焼き鯖巻き寿司

焼き鯖ならば手に入りやすく調理も簡単。寿司酢におろし生姜を混ぜ、ごはんに白ごまを混ぜ、焼き鯖に大葉を添えたら、日本酒に合わないはずがありません。米と酒と青魚はゴールデンコンビです。おろし生姜を抜けば小さなお子さまも楽しめますよ。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。

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