世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんが、各地の家庭料理をお届けします。
一日を元気に始めるために大事な朝食。でも時間のない朝にちゃんと作るのは大変だし、作るにもワンパターンになりがち…そんな悩みをお持ちではないでしょうか。 今回は、南米コロンビアの台所から、「5分でできるしっかり朝食」の話をお届けします。
日本では、一日三食で夕飯メインなのが一般的ですが、コロンビアで一番しっかり食べるのは昼食です。夕飯は軽くスープやパンを食べる程度か食べない人もいるくらいと軽く、朝食はその中間の「ほどほど」くらいです。日本の常識から考えると、ちょっとびっくりですね。
さらにびっくりするのが、食事の回数が一日五回だということ。午前と午後に一回ずつの間食があり、これらも食事として位置づけられています。小腹が空いた人が食べたいタイミングでパンやビスケットやスナック菓子を口にするので、台所にはすぐ食べられるものがいつもあります。
実は、世界を見渡してみると、一日三食でない国も夕食メインでない国もたくさんあります。それぞれの風土や生活にあわせてそれぞれのスタイルがあり、「食事の時間にルールはないよ、食べたい時に食べるよ!」と言われることもあります。満面の笑みでそんな言葉をかけられると、意外に自由でいいんだなあと気が楽になります。
こちらはコロンビアの山の上の家庭。じっとしといると牛と鳥の声だけが聞こえる、そんなのどかな暮らしです。
この家で普段料理をするのはお母さんですが、包丁と火を使ってしっかり料理をするのはお昼だけ。
「畑の水やりに、鳥の世話に、家のことに…毎日やることはたくさんある。一日何度も台所に立つのは非効率だから、料理は一度で全部したい」
そんなお母さんの言葉を聞くと、週末作りおきする日本の私たちと変わらないのかもと親近感がわいてきます。
この日の昼食はレンズ豆のスープ。たまねぎやトマトを炒めたところに水と豆を加えて煮込むだけの、シンプルでほっとする家庭料理です。ご飯とじゃがいもを添えていただきます。
昼ごはんにつくったレンジ豆のスープは、形を変えて朝食や夕食にも登場します。みんなが楽しみにするのが「カレンタード」と呼ばれる翌日の朝食。「あたためたもの」という意味です。
作り方は本当に簡単で、レンズ豆スープの鍋に冷やご飯を入れたら、まぜながら温めるだけ!しっかりお腹にたまる朝食が、起きて5分でできてしまいます。
カレンタードの作り方に決まりはなく、スープとご飯の比率もその時残っている量によって違いますし、この日は残っていた付け合せのじゃがいももつぶして入れていました。レンズ豆スープ以外にも、イモや他の豆のスープなどでも作ります。なんでもよくてたまたまが楽しい、そんな気楽さも魅力です。
あまりに簡単な料理で、最初見た時は「残り物ねこまんま」と思いましたが、みんなが心待ちにして喜ぶ顔に「二度目のごちそう」なのだと思えてきました。
家庭の料理は暮らしの中にあるものです。レストランのようにロスなく一回完結させるのではなく、多めに作って何度も楽しんだり変化させていくのは、自然でリアルな暮らしの知恵なんだなあと教えられました。
ちなみに、軽めの夕飯にはミキサーにかけてさらさらのスープにしていました。一回で三度おいしい、暮らしの知恵です。
どんな食事の後も家族は「おいしかったよ、ありがとう」とお母さんにキスします。手間や時間をかけてがんばることよりも、お母さんも無理せず笑っていられることが、家族みんなにとって大事なんだなと感じたのでした。
「温め直しただけのごちそう朝ごはん」、クックパッドにも素敵な知恵がありました。朝食に悩むことがあったら、参考にしてみてはいかがでしょうか。
台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
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