これさえあれば白ごはんが何杯でもいける!というような絶品ごはんのおともに出会ったら、ごはんライフが楽しくなること間違いなし。ただし、ごはんのおともは「おかず」ではなく、あくまでも“ごはんの味”を美味しく引き立ててくれる存在。主役は白ごはんです。だからこそ、そのレシピはシンプルに。日常の白ごはん量がぐんとアップするようなごはんのおともを、お米ライター柏木智帆がお届けします。
かつてお米は「ぎゅっぎゅっと水が透明になるまで『とぐ』」などと言われていましたが、現代では「精米技術が発達したため、『とぐ』のではなく、指で軽くかき混ぜるようにして『洗う』程度で良い」と言われています。
確かに、力を入れてお米を洗うと炊飯中にお米が割れやすくなってしまうため、かつて言われていたように力を入れてお米をとぐ必要はありません。
しかし、現代でもお米をどう洗うかは、精米と保管次第。
ぬか切れが良く、絶妙な磨き歩合のプロの精米、かつ精米したばかりのお米の場合は、お米は指でかき混ぜるようにして洗う程度で大丈夫ですが、ぬか切れが悪く、磨き歩合が米質に合っていない精米、または精米してから日数が経ってしまったお米の場合は、水の中で両手のてのひらを使って優しくお米をこすり合わせるようにして洗うことをおすすめします。
以前に、いただいたお米をさっと指でかき混ぜる程度で洗って炊いたところ、お米から若干の古米臭がしたため、水の中でてのひらを使って優しくお米をこすり合わせるように洗って炊き直してみると、古米臭が消えてお米のツヤが出ました。
一度、指でかき混ぜる程度の洗い方で炊いてみて、風味や輝きがいまひとつだなぁと感じた場合は、優しくこすり合わせる洗い方を試してみてはいかがでしょうか。
最初にお米を浸した水はすぐに捨て、洗う過程で水を2、3回変える程度で大丈夫です。この段階でもなお水を白く濁らせているのは、ぬかではなくデンプン。おいしさを捨ててしまわないよう、お米の洗いすぎには注意しましょう。
さて、おいしいごはんが炊けたなら、この時期にぴったりなおともと一緒にぜひ楽しんでいただきたいと思います。皆さんは「お茶の佃煮」を食べたことはありますか?
数年前、おいしい無農薬有機栽培の緑茶をいただいたときに、お茶を飲み終わった後の出がらしを捨てるのがもったいなく感じました。
そこで思い出したのが、以前に神奈川県・山北町のJA茶業センターで「すすり茶」(現在の名称は『足柄うまみ茶 花里(はなり)の雫』)を体験したこと。専用のふた付き器に入れた玉露に低温の湯を少量注ぎ、ふたを少しずらして飲むという趣向でした。三煎楽しんだ後は、出がらしに醤油や酢をかけて食べ、お茶を余すことなく楽しめます。
そうだ、出がらしは食べられる。というわけで、お茶で佃煮を作ろうと思いつきました。佃煮は嫌いではありませんが、市販の佃煮は砂糖や水飴やブドウ糖果糖液糖などをたっぷり使った甘すぎるものばかり。そこで、酒、醤油、みりんだけでシンプルに作ってみました。
二煎飲んだ出がらしを使うと食べやすいですが、お茶の風味をより残したい方は、一煎だけ飲んだ出がらしを使ってみてください。甘じょっぱさの中にほろ苦さが感じられる、大人の佃煮です。
とは言え、お茶を一度入れて残る出がらしはほんのわずか。「少量の佃煮を作るのは面倒」という方は、密閉できる容器に出がらしを入れて冷凍保存しておくと、ある程度の量の出がらしがたまったときに、まとめて作ることができます。もっと甘めがお好みという方は、みりんの量を増やして調整してみてください。
以前は値段の高いお茶を買うのをためらっていましたが、お茶は飲んだ後も佃煮で楽しめると気づいてからは、少々高くてもおいしいお茶を選ぶようになりました。
「日常茶飯」という言葉があるように、お茶の佃煮を乗せたごはんは、まさに「茶」と「飯」がある食卓。「茶」と「飯」と言えばお茶漬けがポピュラーですが、お茶漬けに負けず劣らず、お茶の佃煮とごはんの相性は抜群です。新茶の季節に、ぜひ一度お試しください。
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
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