スーパーや食料品店などで買った加工食品には、「消費期限」か「賞味期限」のどちらかが表示されています。その食品の特性や製造、加工時の衛生管理状態、容器や包装の形態など、さまざまな角度から検査を重ね、科学的、合理的な根拠と、これまでの経験、知識に基づき、それぞれの製造業者、加工業者、販売業者が責任を持って設定し、その年月日を表示しています。
この表示を正しく知ることで、食品を安全に、おいしく食べることができます。しっかりとおさらいしておきましょう。
「消費期限」は、指定する保存方法のもとであれば、微生物の増殖や品質の劣化等で健康被害の原因となることはないと認められる期限で、たとえば、コンビニのお弁当や調理パン、スーパーのお惣菜、生菓子、食肉、ゆでめんなど、保存期限がおおむね5日程度の食品に使用されます。「消費期限」は、期限を過ぎると安全性を欠く可能性が高いので、期限を過ぎたら廃棄してください。
「賞味期限」は、製造者が指定する保存方法のもとであれば、おいしく食べられる期限を示しています。たとえばスナック菓子、カップ麺、レトルト食品、缶詰、チーズ、かまぼこ、ソースをはじめとする調味料などに使用されています。
「賞味期限」は、期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありませんが、食べられるかどうかは、見た目やにおいで判断しましょう。賞味期限の表示は、3カ月以上日持ちするものについては、年月だけのものもあります。
いずれの表示においても、その期限は容器や包装を開封する前であることが前提です。未開封の状態で、なおかつ表示されている保存方法を守った場合(保存方法の表示がないものについては、常温での保存が可能)の期限であることを忘れてはいけません。いったん開封した食品は、表示された期限に関わらず、早めに食べきることが大切です。
消費期限や賞味期限の表示は安全においしく食べるための目安としてとても便利です。しかし、前述の通り、表示通りの保存方法で保存しなかった食品、一度開封してしまった食品については、この期限は意味がありません。
開封した食品に、時間の経過とともに起こる変化の1つに「カビ」があります。パンや餠、ビン詰めのジャムなどに緑や白のカビがはえてしまった、という経験はだれにでもあるのではないでしょうか。
カビは穀物などの原材料や屋内外にかかわらず、生活環境中の空気など、どこにでもいます。カビは水分・栄養・酸素のある環境でどんどん増殖し、冷蔵庫の中でも増殖します。どんな食品でも、開封して、空気に触れたならカビの生える可能性があります。
カビの中には、実は私たちの暮らしに有効なカビもあります。みそやしょうゆ、チーズなどの発酵食品もカビの力を利用して作られますし、抗生物質などに利用されるカビもあります。
しかし一方で、「カビ毒」という、健康に悪影響を与える毒を産生するカビも多く存在します。ナッツ類や乳製品などに生えるカビが産生するアフラトキシン、台風などで落下して傷のついたりんごなどに生えるパツリンなどがそれです。
カビ毒は発がん性があったり、健康危害の要因となったりします。カビ毒は、カビと違って、見た目ではわからず、加熱調理では完全に除去できません。
カビが生えた食品は、カビの部分を取り除けば大丈夫という人もいますが、これはやめた方がよいでしょう。カビは目に見える部分だけでなく食品中に菌糸を伸ばしており、取り除くのは不可能です。またカビそのものは加熱により死滅しますが、産生したカビ毒は熱に強いものもあります。カビが生えてしまったら、「もったいないけど捨てる」ということを徹底しましょう。
気温や湿度が高くなる時期は、特にカビが生えないように食品を保存するのも大切です。カビは栄養のあるところに温度や湿度、酸素、時間などの条件が揃えばいつでも生える可能性があります。キッチンを清潔にし、温度管理できる場所に食品を保管しましょう。また、食べものは清潔な手や器具で取扱い、できるだけ新しいうちに食べきることを心がけてください。
普段から食品のさまざまな特徴と期限表示について正しく理解すれば、家庭での食中毒予防だけでなく、食べものをムダにすることも少なくなります。ぜひ買い置きしている食品の期限表示を確認し、食材を有効活用してみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
◎消費期限、賞味期限
農林水産省「食品の表示をすっきり、わかりやすく。」
農林水産省「消費期限と賞味期限」
消費者庁「加工食品の表示に関する共通Q&A」
東京都福祉保健局「一般用加工食品(消費期限又は賞味期限)」
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