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コラム

「仕込みごはん」でラクラク笑顔の食卓。 料理研究家・上田淳子さんが送る食エール【プロの日々ごはんVol.2】

自宅で料理教室を主宰するほか、雑誌やTV、広告など幅広いフィールドで活躍する料理研究家・上田淳子さん。今年の3月には、彼女の手がけた書籍『仕込みと仕上げ合わせて最短10分! 帰りが遅くてもかんたん仕込みですぐごはん』(世界文化社)も出版されました。共働きでふたごの子どもを育てたという上田さんが「料理をつくる女性たちに伝えたいこと」とは?

負担軽減の仕方を賢く考えて、自身にピッタリの方法を見つけてほしい

料理研究家の上田淳子です。私はこれまで『るすめしレシピ』(自由国民社)や『共働きごはん: 夕食を作りながら、作りおきもできる!』(主婦の友社)など、毎日の料理の「たいへん!」を少しでも軽減できるようにと本をたくさん書いてきました。

なぜなら、家事もこなしながら仕事や子育てをしている女性にとって、休むことなく毎日毎日家族のことを考えて、料理を作り続けることはそれなりに大変なことだからです。実は、私自身がそうでした。夫婦共働きで、ふたごの子どもを育ててきたからこそ、そう思うのです。本当に日々時間との戦いでした。だからこそ、どうしたら苦痛に思わず料理ができるようになるかを考え、いろいろな工夫をしてきました。

中でも今年3月に出版した『仕込みと仕上げ合わせて最短10分! 帰りが遅くてもかんたん仕込みですぐごはん』(世界文化社)には、多くの方々に届けたい毎日の晩ごはんを乗り切るノウハウをがしっかり詰まっています。

仕込み、というと面倒そうに感じる方もいるかもしれませんが、難しいことは一切ありません。前日の晩や当日の朝に、食材を切って下味を付けて冷蔵庫に入れて前仕込みをしておく。これだけなら、10分程度でササッとできますよね。そして帰宅後に、準備しておいた材料を調理し、後仕上げをする。

こうやって、前仕込み・後仕上げとレシピを分けることで、負担を分散させることができるのです。この方法、何と言っても疲れて帰ってからの調理作業が楽なのです。洗い物や片づけるものも減りますしね。

とはいえ、普通のレシピをただ2つに分けるだけでは、失敗が多々生じることも。だからこそ、私なりに、プロの視点で美味しくて作りやすいレシピをとことん追求しました。

そのように出来上がったレシピは、多くの女性たちに「少し余裕ができて気持ちが楽になった」など、感想をいただけるものとなりました。

レパートリーは多くなくてもいい。ちょっとした工夫があればいい

私はこれまで様々な料理を学び、それを礎として多くのレシピを生み出してきました。そんな私ですが、わが家でつくるメニューは案外定番のものが多いのです。カレーやハンバーグ、しょうが焼き、肉じゃが。普通の料理をつくって食べています。でも、実は、いつも飽きないためのちょっとした工夫をしています。

たとえばハンバーグ1つとっても、季節によって、夏はおろしハンバーグにするとあっさり食べやすいし、冬は冷めにくくコクのある煮込みハンバーグが喜ばれます。カレーにも季節の野菜を入れます。いまの季節ならズッキーニやナスやトマトを入れたり、秋だったらキノコを入れたり。定番メニューも季節によって模様替えしながら料理をしています。そうすると、全然マンネリじゃなくなるのです。だから、家族にいつも笑われていますよ。「同じカレーはいつ出てくるんだろう」ってね(笑)。

実のところ、日々の料理はこんな風に気楽に考えていけばいいのではないでしょうか?
レパートリーが少ないことや、マンネリ、時短料理をつくることを「家族に申し訳ない」と思う人がいるかもしれない。でも、けしてそんなことはありません。ずっとがんばるのは無理だから、メリハリや工夫が大切。

例えば、毎日一汁三菜じゃなくていいんです。ワンボウルの日があってもいいし、一汁五菜の日があってもいい。本当に忙しくてどうにもこうにも時間がなかったら、卵かけごはんだけでも大丈夫(笑)。そんな毎日の中で、実は一番大切なのが、作った本人がおいしいなあ~って笑って食べること!

そう、どれだけ手を抜いても、かんたんな料理でも、買ってきたお惣菜でも笑っておなかいっぱいになれば◎。日々の料理ってそのくらいの気持ちでやっていくからこそ、無理せず続くのではないかなと思います。

少しは、自分のことも考えてあげて

「子どもの栄養を考えてご飯を作らねば」とか「自分の好みはさておき、家族が喜ぶものをつくろう」とがんばってしまう人こそ、自分の気持ちや、希望も忘れないでほしいのです。

「私は今日、お魚を絶対に食べたいから魚料理をつくるね。今度は◯◯ちゃんの大好物作るから、今日は付き合ってね!」くらいの気持ちの日があってもいいんじゃないかな(笑)。自分が好きなものだったら、たとえ残されたって幸せです。「ありがとう。残してくれて。私がたくさん食べられる!」と思えるじゃないですか。でも自分が好きでもないものを、子どものために一生懸命つくったのに残されると、すごくがっかりするでしょう。

実はこんなエピソードがあるのです。
子どもが小さい頃のことです。その時、私がどうしてもバジルソースのパスタが食べたくて、どうせ子どもたちは食べないだろうと、自分の分だけバジルソースに、子どもたちの分をトマトソースにしたことがあるのです。
でも、食べ始めたら「なにそれ、ちょっと味見させて」と言われ、最終的にこっちが気に入ったから変えてね!って取られてしまいました(笑)。子どもたちには、私がどれだけバジルパスタをおいしそうに、満足そうに食べていたのかがわかったのだと思います。その時、お母さんが楽しそうに食べるって大事なことなんだなって教えられました。

これは息子が漬けている梅酒です。彼もよく料理をするので、料理がコミュニケーションツールの1つになっています。
最近は、『かんたん仕込みですぐごはん』の本のレシピを使って前仕込みを私がやって、後仕上げを息子がすることもあります。仕込み置きをミールキット的な使い方ができるのもこの本のいいところなのです。料理が不得意な旦那さんやお子さんにこそ、この方法を使って積極的にごはん作りに巻き込んでみてはいかがでしょう?
家族で協力してご飯を作るのって、案外楽しいことが、きっと伝わると思いますよ

誰かと食べるときは、食卓は笑ってる場所にしなきゃ

先ほどもお話しましたが、お母さんはもっと気楽に料理をすればいい。時には、大好きなものをつくって、おいしそうに食べればいいと思うのです。そのほうが食事も楽しい。大事なのは、食卓でお母さんが笑っていること。食卓を楽しい場所にすることで、料理を作ることが苦ではなくなっていくはずです。

毎日の料理は、何十年も続いていくマラソンです。短距離走じゃないのです。いまだけがんばるのではなくて、ずっと続けていかなければいけない。バテないようにするには、どこで歩くか、どこで止まるか、どこで水を飲むか――と、倒れないように休憩を入れなければね。そう、体力もメンタルも、両方のコントロールが上手でなくてはいけません。

料理を苦しいものだと思うと、どんどん嫌になってしまうだけです。自分が楽しいと思えるようなペースで、料理を続けていった方がいい。倒れそうなら、かんたんご飯でもいい。それで一息ついたら、またおいしいものを作りたくなるかも。何より、自分をないがしろにしないで、ちゃんと食べることが大切です。

そんな毎日を送りながら、家族ご飯を作り続けて20数年。子育て終わりに近づくと強く思うことがあります。

一緒に笑って食べられる相手がいるってことは、何より幸せなこと。
だからこそ、笑いのある食卓のために、時に手を抜き、疲れたらやすみ、どうしようもなければ家族に甘え、でも時に頑張り、過ごしてほしいなって思います。
それがあなたの、家族の笑顔がたっぷり詰まった食の記録であり、記憶となるのだから。

(TEXT:中薗昴)

上田淳子さんの新刊著書

仕込みと仕上げ合わせて最短10分! 帰りが遅くてもかんたん仕込みですぐごはん』(世界文化社

毎日、帰宅後10分で晩ごはんが食べられたら、とってもラクだと思いませんか?
作りおきしなくても、5〜15分ほどでできる「かんたん仕込み」さえすれば、それが叶ってしまうのです。面倒だったり難しい作業は一切ないので、忙しい朝または前夜に仕込みをしても苦になりません。

楽でおいしいごはんを作るアイデアが詰まった本書から、上田さんのお宅で子どもたちに人気のおすすめメニューをお伺いしました。

「『豚肉と野菜の中国風うま煮』は、我が家の20年来の定番人気メニューです。これは、子どもたちに野菜を食べさせるために生まれたものなのです。野菜炒めだと固くて食べないし、かといってスープにしても汁だけ飲んで具が余ってしまう。これはあんかけだからとろっとしていて食べやすいし、お肉も野菜もうずらの卵もたっぷり入ってます。ごはんにかけても焼きそばにかけてもいいから、アレンジが効きますよ。

あと最近のブームだと、やっぱり『チーズタッカルビ』ですね。電子レンジで作れるからとても簡単です。子どもたちも「心も胃袋も満足!」と褒めてくれます(笑)。読者の方にも人気のメニューなんですよ」

主菜のほか、ごはんものや副菜など、合わせて98レシピを紹介しています。ぜひ、今日からの晩ごはん作りに生かしてみてください。

全国の書店やオンラインストアで好評発売中。>>>購入はこちら

上田淳子(うえだ・じゅんこ)

兵庫県出身。甲南女子短期大学卒業後、辻学園調理技術専門学校で西洋料理・製菓・製パン技術を習得し、卒業後同校の西洋料理研究職員を経て渡欧。スイスのホテルのレストラン、ベッカライ(パン屋)、フランスではミシュランの星つきレストラン、シャルキュトリー(ハム・ソーセージ専門店)などで約3年間、料理修業を積む。 
帰国後、シェフパティシエを経て料理研究家として独立。自宅で料理教室を主宰するほか、雑誌やTV、広告などでも活躍する。
フランスのワイン産地ロワール地方での日本の食の紹介活動、子どもの食育についての活動も行う。著書多数。日本ソムリエ協会公認ワインアドバイザー。

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