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コラム

とろとろ卵あんが新感覚!レンジだけで作る「親子丼」が旨すぎる【“クックパッド芸人”藤井21のソロ飯】

“クックパッド芸人”を自称し、自らのキッチンに1000品以上のレシピを掲載している「藤井21」さん。1人(ソロ)で作って1人で食べるという「ソロ飯」を日々楽しんでいるそう。藤井21さん自作のおすすめレシピと、悲喜こもごものエピソードをご紹介します。第10回のテーマは「親子丼」。深夜にお腹が空いてしまって、どうしても何かが食べたい。そんなときに生まれた、藤井さんのアイデア力が爆発した絶品レシピです。

深夜一時、親子丼のある風景

男は空腹だった。
時刻は夜の帳などとうに下りた、深夜の一時。

台所に行き、頼みの綱の冷蔵庫を開けると玉ねぎが半分と卵のみ。
これで何が出来る。
男は一瞬で答えを出す。これだけあればあとは鶏肉さえあれば親子丼が出来る。

男は親子丼が好きだ。
曰く、親子丼には全てが内包していると。

丼の下方に鎮座したほかほかで熱々の真っ白な白米、
その上には柔らかく煮込まれた鶏肉、薄茶色く色づいた薄切りの玉ねぎ、それらの具材たちはとろりと半熟の黄色い卵の衣をまとう。そしてそれらを引き立てる様に頂点にパラリと散らされた緑の三つ葉。

スプーン片手にはふはふと一気にかき混む。
鶏肉と玉ねぎの食感、とろりとした玉子、出汁が染みたご飯、それらが渾然一体になって口の中に入った瞬間幸福が訪れる。
想像しただけで空腹は加速度的に増していく。

しかし肝心の鶏肉がない
部屋の時計の短針はとうにてっぺんを通り過ぎているというのに。
こんな時間ではスーパーは閉まっている。鶏肉を手に入れる術はない。

男は悩んだ。
ウンウンと唸りたてる冷蔵庫の前でしばらく悩んだ男は、天才的な閃きに辿り着く。
コンビニ、コンビニならいつ何時であろうと開いている。コンビニなら鶏肉はないが「アレ」がきっとあるはずだ。
思い立つが早いか、米を一合だけ研ぎそれを炊飯器にセットして深夜のコンビニに急いだ。

深夜にも関わらず、煌々と明かりを灯したコンビニエンスストアから出てきた男が手にしていたのは「缶詰のやきとり」であった。
男は確信していた、缶詰のやきとりを鶏肉の代わりにして親子丼が出来るはずだと。

軽やかな足取りで自宅に帰った男は、早速台所に立ち玉ねぎを切り始める。
男は無精な人間だった。
無精が故に電子レンジだけで親子丼を作ろうとした
器に薄切りの玉ねぎと缶詰のやきとりをそのまま丸ごと加えて電子レンジで加熱。缶詰の煮凝りがいい具合に汁感を演出してくれるに違いない。
あとはここに加水、さらにめんつゆと卵を加えて再度加熱して…そこで男はふと思い出した。

親子丼の出汁に水溶き片栗粉を混ぜる事で、卵がふわとろの食感になると聞いたことがある。
男はさらに一計を案じた。

具材の上に玉子を後がけしたらどうだろうか

出汁に水溶き片栗粉を加えたとろみのある餡に、溶き卵を加えた方がより卵のとろとろ感が増すのではないかと。

出来た。

これこそ白米、具材、卵餡が綺麗に三層になった新しい形の「親子丼」。
男は待ちきれないとばかりに台所で丼を手にして、立ったまま熱々の親子丼をかき混む。

旨い
缶詰のやきとり、これがどうして中々良いじゃないか。
口の中でほろほろと崩れていく食感は、まるで何時間もかけて煮込んだ鶏肉のようだ。そこに玉ねぎの歯ざわりが良い塩梅で食感のコントラストになっている。

そして秀逸なのがこのとろとろの卵餡だ。
半熟卵のそれよりもさらに濃厚でもったりしていて、口の中に絡みつくようだ。
それでいて全体のバランスを崩す事なく具材と米一粒一粒をコーティングして舌の上を撫でていく。旨さと心地良さがいっぺんに口内に広がる。

男の顔には自然と笑みが溢れた。
台所に立ったままなのも忘れ、男は飽くことなく親子丼を口に運び続ける。

やがて空になった丼をシンクに置き男は思った。
あぁやっぱり親子丼が好きだ

藤井21(ふじいにじゅういち)

料理と笑いで天下を目指す男性ピン芸人。
埼玉県東松山市出身。東松山のやきとりを愛し、東松山市親善大使「東松山市應援團」の一員。食品衛生責任者の資格を持ち、クックパッドには1000以上のレシピをアップしている。日本テレビ系列『ウチのガヤがすみません!』などに出演。

>>オフィシャルブログ「良い香りのある生活

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