cookpad news
コラム

「台所は社会とつながっている」料理研究家・枝元なほみさんが提案するおいしい“残り物活用”レシピ

世界には全人口を賄うだけの十分な食料があるにもかかわらず、9人に1人は飢えに苦しんでいます。一方で、世界の食料生産量の3分の1は捨てられており、先進国では食品ロスが社会課題となっています。「食の不均衡」を解消するために、私たちが自宅でできる、ほんのちょっとの“地球によいこと”とは? 国連WFP協会主催の世界食料デーキャンペーン2019「Zero Hunger Challenge for AFRICA ~食品ロス×飢餓ゼロ~」の呼びかけ人でもある料理研究家・枝元なほみさんに伺いました。

「インスタ映え」は卒業!

もともと私の料理家としてのベースは、若い頃、“貧乏生活”をしていた時にできたんですよね。劇団員で、毎日の食べるものにも困る生活でしたから、友達に実家のお中元の余りの素麺を分けてもらって、お助け食材のもやしを組み合わせて創作料理をしたり、そりゃあもうありとあらゆる工夫をして食いつないでいました。

とにかくそこにある食材を工夫して使い切って、自分や仲間の劇団員たちのお腹を満たす。限られた条件下でおいしいものを作る腕は、この時代に相当鍛えられたと思います(笑)。

その後、料理研究家として仕事を始めてからは、やはり世間のニーズに応えるために、安くて簡単でおいしい時短料理や、今で言う“インスタ映え”する料理、ダイエット食などを数多く手掛けてきました。

料理の仕事はクリエイティブでとっても面白い。でも、20年間こうしたリクエストに応え続けてきて、「もういいや!こういうのはほかのもっとうまい方にお任せしよう」と、ふと思ったんです。

お仕事を通して農家さんやいろいろな方とお話をしていく中で、さまざまな食の課題に気づきました。食品の大量廃棄農家の減少世界の飢餓問題のことを知り、このままいったら日本はもちろん、世界の食べ物はどうなってしまうんだろう……って心配になったんです。

地球には今、世界中の人間に食べさせるだけの食料が十分にあります。なのに、先進国は食料の過供給による大量廃棄、いわゆる食品ロスが社会問題化し、途上国は食料不足による飢餓で苦しんでいる。つまり、食料の総量が足りないのではなく、「分配」がアンバランスなんですよね。

より安いものを求める消費者のニーズに応えるために、企業は大量生産をしてコストを下げ、利益を得る。そして大量廃棄を生む。この連鎖が食品ロスの生まれる背景です。

こんなことを続けていたら、未来に残しておくべき子どもたちの食べ物を、先に私たちが食べ尽くしてしまう。白アリのように。「もっと安く!」「もっと利益を!」と、自分が得することばかりを追い求めていては、子どもたちの未来はなくなってしまいます。

大事なのは、自分が得をすることよりも、人のためになること。そう思いませんか?

私は、未来の子どもたちを飢えさせないために自分にできることは何かを、もっとちゃんと考えていきたい。そう思うようになって、ここ数年は「農業支援の活動」や「食品ロス×飢餓」に関する活動に力を入れるようになりました。

大根200円は高い?安い?

スーパーで買い物をする時、私たちはつい「ちょっとでも安いものを買わなきゃ損!」と思ってしまいがちです。でも、私は随分考え方が変わりました。

毎日使う野菜などの食材は、もちろん安ければ安いほうがいいけど、「安い」のには理由があります。安くするためには、たくさんの農薬を使って大量生産されていたり、保存料や添加物を多用しているかもしれない。

一方で、農家さんが農薬を使わず丁寧に作った野菜は値段が高く、形が悪いこともある。でも、だからといってみんながそれを買わなかったらどうなるでしょう。その食材は廃棄され、ゆくゆくはその生産者である農家さんの減少につながっていきます。そうしたら、私たちが安心して食べられる安全な食材はどんどんなくなってしまいますよね。

例えば、大根を自分で作ったとします。自分で土を耕して種を植えて、天候を気にしながら何カ月もかけて丁寧に育てたその大根を何円で売りますか? その労力やかかった費用を考えると、私だったらそれに見合った値段で売りたい。100円や200円では売りたくないなと思うんです。

でも、悲しいかな、買う側になると私たちは200円でも高いと思ってしまう。ほかに安いものが売っていたらなおさら、自分が損をしているような気になってしまいます。そうして安い食材に手を伸ばし、大量生産商品の需要を高め、結果、大量廃棄を招き、地球全体の食の不均衡を生むという悪循環に加担してしまうのです。

私自身は、この負の連鎖からまず自分が抜けることを始めました。

私は身体に良い食べ物を食べたいし、少し値段が高くても皮まで食べられる野菜なら、余すところなく使って料理をもう一品多く作ることもできる。おいしく安全な野菜を買うたび、農家さんをほんの少し応援できた気になれる。おかげで、そうした日々の楽しみを得ることもできました。

だからといって、それをみんなに押し付ける気はないんです。あくまでも、「こっちのほうがもっといいよ!」とオススメし続けていきたいなと思ってます(笑)。

私たちは日に3度、社会を変えるチャンスと向き合っている

食品ロスや飢餓問題というと、どうしても縁遠く感じてしまうかもしれませんが、私たちの日々の生活の中でできることが実はたくさんあります。

私は常々、台所は社会とつながっていると考えているんです。1日3食、台所で食事の用意をしますね。その都度、何を選び、食べて、どういう暮らしをするか、私たちは無意識に選択しています。この時、何を選択するかが重要。実は、私たちは日に3度、社会を変えるチャンスと向き合っているんですよ。

地球全体の食の分配を正さねば!と大仰に構えると、打ち手はなかなか見えてきません。でも、一人ひとりが自分の暮らしをどう変えるかを考えていけば、やがて地球全体は変わる。だって、人間は皆、365日ごはんを食べているんですから。すべての人が今を少し変えたら、ものすごい変化が起こりますよね。

これまで捨ててしまっていたものを捨てずに使って料理をする。それだけでも、大量生産→大量廃棄の悪循環を断ち切っていける。それが食べ物を生み出す側の人を増やすことにもつながるし、未来の子どもたちの資源を守ることにもなります。

いつも捨てていた大根の皮を料理したら、「私、地球のためにこんなにおいしいもの作っちゃった」って自分を褒めてあげたらいいんです(笑)。ほんのちょっとのことでいい。自分も子どもたちの未来を考えることに参加してるって思いながら日々の料理と向き合うことが、地球を救う大きな一歩になるんですよ。

かけら野菜がごちそうに!

私がよく作る、簡単でおいしいフードロス削減レシピをご紹介しますね。冷蔵庫にある半端に残った“かけら野菜”を使った「ピクルス」はいかがですか? 野菜を酢で和えるだけなので、すぐに作れますよ。

半端野菜のピクルス

【材料】
・パプリカやきゅうりなど(冷蔵庫に少し残っている野菜なら何でも)
・米酢 1/2カップ
・塩 小さじ1
・きび砂糖(白砂糖でもOK) 大さじ3

【作り方】
1.野菜は細かく切っておきます。
2.米酢・塩・きび砂糖を混ぜ合わせ、同量の水(もしくは出汁)で割って調味液のベースをつくる。お好みで、胡椒の粒やローリエ、昆布茶(小さじ1/2程度)を入れてもOK。
3.野菜を2の調味液に10~20分漬けて置いたら完成。

このピクルスは、細かく刻んでマヨネーズを合わせてタルタルソースを作ったり、ポテトサラダに入れてもおいしくいただけますよ。国連WFP協会が主催する世界食料デーキャンペーンで紹介した「残り物チャーハン」にも、半端野菜のピクルスを添えました。彩り鮮やかになっていいですよね。


パプリカやきゅうりなどは一度に使いきれずに余りがちですが、半端な量でもこうして活用すれば立派な一品になります。余り野菜でどんな料理を作ろうか考えながら料理をするのも楽しいですよ。

食べ物がなくなったら、平和も何もない。「食べて」と誰かに食べ物を差し出すことは、「生きて」と言うのと一緒だと思っています。誰かが食べることに困っている世界は、私は嫌です。みんなが食べていける世の中を、みんなで楽しく一緒に作っていきましょうよ!

世界食料デーキャンペーン2019開催中!


枝元さんも参画している、国連WFP協会主催の世界食料デーキャンペーン2019「Zero Hunger Challenge for AFRICA ~食品ロス×飢餓ゼロ~」は、2019年8月1日〜10月31日まで実施中! 捨てられがちな食品を使ったレシピを、SNSに「#ゼロハンガーレシピ」と「#wfp」を付けて投稿すると、1投稿につき120円がアフリカの子どもたちの学校給食支援に寄付されます。
>>詳しくはこちら

枝元なほみ

横浜生まれ。明治大学卒業後、『転形劇場』劇団員として国内外の公演に参加する傍ら、無国籍レストラン『カルマ』でシェフとして約7年間働く。1987年に料理家としてデビュー。自由な発想で生み出されるおいしい料理と、気さくな人柄が人気となり、「エダモン」の愛称でテレビに雑誌に大活躍。社団法人チームむかごを設立して農業生産者をサポートする活動も行う。『食べるスープレシピ』『今日もフツーにごはんを食べる』など著書多数。『ビッグイシュー日本版』のcookingのページも連載中。 【Twitter】 @eda_neko

関連する記事
1つ16円で!給食人気メニュー「きな粉揚げパン」を5分で完全再現する方法 2023年03月27日 18:00
プラントベースフードって、実際どうなの? 日本で浸透しない理由は?代替食品の“これから” 2023年04月06日 16:00
あと一品に◎野菜だけでも大満足「カリカリチヂミ」 2023年04月02日 09:00
潮干狩り後に大活躍!「アサリの保存」の正解はコレ 2023年04月30日 18:00
卵の入荷が2〜3週に一回の地域も。高騰が続く、世界の“エッグフレーション”事情 2023年04月01日 20:00
ドラッグストアは「白い食品」が安い!狙い目商品とお得な買い方 2023年03月31日 20:00
アメリカ人が夢中の悪魔料理!毎日食べたい旨さ「デビルド・エッグ」 2023年04月07日 20:00
今が旬!レンチン3分半「丸ごと新玉ねぎ」が驚きの甘さ 2023年04月17日 12:00
新年度が絶好のチャンス!? 習慣化したい「腸活ライフ」の始め方 2023年04月14日 13:00
大型連休直前!冷蔵庫の食材使い切りレシピ5選 2023年04月27日 07:00
【ぐっち夫婦が直伝】すぐ作れて食べごたえも抜群!甘辛だれのトンテキ丼 2023年04月23日 18:00
1人前17円!意外なアレを生地にした「悪魔のピザ」が5分で完成 2023年04月24日 21:00
平日ランチに!飽きずに楽しめる「冷凍うどん」日替わりレシピ 2023年05月11日 11:00
簡単だけど“丁寧に作ってる感”はほしい。料理家・長谷川あかりさんに聞く、心も身体も喜ぶ料理 2023年04月22日 14:00
食費がピンチの時に!お手軽食材で作れるボリュームおかず特集 2023年05月11日 14:00
4月から食費「月2000円」増える?続く値上げ、年後半にかけ厳しく 2023年04月07日 18:00
3年前まで料理未経験!ケンティー健人が460万人以上が注目する「料理アカウント」に成長したワケ 2023年05月22日 20:00
アンミカさんも大絶賛「愛のある料理に脱帽!」7分で完成する"魔法のおもてなしごはん"とは 2023年05月16日 19:00
お米の保存場所、どこが正解?編集部おすすめの保存アイテムも紹介 2023年05月17日 19:00
10人に1人は"歯が足りない"!歯や口のトラブルを避ける「7種類の食材」を知ってる? 2023年06月18日 17:00
たっぷり野菜と食べて栄養バッチリ!「カリカリ豚」レシピ3選 2023年06月02日 21:00
食べ過ぎリセットやカロリーコントロールに!糖質を控えたいときに選ぶべき食べ物ガイド 2023年06月28日 20:00
話題のアレでもちもち新触感!1人前58円【レンジシュウマイ】 2023年05月23日 11:00
絵本『パンどろぼう』の柴田ケイコさんが描く、親も子どもも料理が楽しくなる“不思議なフライパン” 2023年05月15日 18:00
PR
脂肪肝に血糖値……健康診断で再検査からのオールAへ!−25kgの減量を叶えた「我慢しないダイエット」 2023年05月27日 19:00
豆腐1丁で4人分!節約食卓の救世主「豆腐で作る肉味噌丼」 2023年07月15日 10:00
重症化すると意識障害も…出掛ける前にできる1番の熱中症予防は「朝ごはん」だった! 2023年07月22日 10:00
なすは1ヶ月も保存できる!ニチレイフーズの広報さんに教わる「食材冷凍の正解」とは 2023年08月03日 19:00
97歳の義母とは喧嘩もするけど…3世代同居、円満の秘訣は「食後の習慣」 2023年06月24日 19:00
「これくらい良いでしょ」が大惨事に!カップ麺の汁はトイレに流してOK?掃除のプロに聞いてみた 2023年07月02日 19:00
10代でシワシワのおばあちゃんに⁉︎過酷な〇〇だけダイエットに身を投じた女性の末路 2023年06月24日 21:00
「私の生きがいって……」20年に渡る母の介護、見送り後に待っていた大きすぎる喪失感 2023年07月22日 20:00
二度の妊娠・出産を経ても体重キープ!「-20kgダイエット成功者」のその後が凄かった 2023年08月19日 20:00
フランス流「無理しない家事」完璧主義の私がやめたこと 2023年06月29日 21:00
ささみ6本で家族4人分!「ピーマンの肉詰め」を大量生産するワザ 2023年08月08日 09:00
レシピの流行はどう生まれる!?上半期にTikTokでヒットしたトレンドレシピを深掘りしてみた 2023年06月30日 15:00
2人暮らしで食費月3万円!無理なく節約するために「しないこと」「やめたこと」 2023年08月04日 20:00
あの大物芸能人も溺愛!「アジフライ」ブームはなぜ起きた? 2023年08月29日 19:00
食べるまで爆速10分!【レンジ調理の柔らかとろ~り豚ナスうどん】 2023年08月28日 18:00
連休明けはアルモンデ!ストック食材を活用した節約レシピ 2023年08月21日 19:00
連休明けの節約に◎「豚こま」でごちそうレシピ3選 2023年08月20日 15:00
目からウロコ!ガス代が節約できる「パスタ」の茹で方 2023年08月03日 16:00
もはや手料理では勝てない…!?編集部スタッフも大絶賛のおいしすぎる「冷凍食品」 2023年08月11日 17:00
「麦茶ポット」はこれが絶対おすすめ!30代編集部スタッフが推す、後悔しない麦茶ポット 2023年08月25日 18:00
今の若者は「ベトナム料理ネイティブ世代」。ライスペーパーが人気な理由を探ってみた 2023年09月20日 19:00
驚異の味しみ1分!アレ入れるだけで、ありそうでなかった【カフェオレフレンチトースト】が完成 2023年09月25日 12:00
アメリカで日本のお菓子が人気急上昇中!話題の"DAGASHI"サブスクを実際に取り寄せてみた 2023年09月22日 20:00
借金アリ、汚部屋生活から逆転!1000万貯めた4児母の「スゴい自炊術」 2023年09月01日 21:00
「家族全員1日2食」「食料がなくて雑草を」追い詰められる、ひとり親家庭の現状 2023年08月22日 20:00
被災後に毎日同じメニュー、トラウマで食べられず 災害時の偏った食事が引き起こす健康問題 2023年08月29日 13:00

おすすめ記事