料理僧・青江覚峰(あおえ かくほう)さんが提案するのは、誰でも簡単に作れる「一汁一菜のお寺ごはん」。実際にお坊さんたちが食べている、肉や魚を使わない一工夫あるレシピを教えていただきました。からだと心がほっとゆるむ、優しい味わいのお料理ですよ。
寒い時期は温かい汁物がほしくなります。とりわけ手軽に作れるお味噌汁は食卓に是非ほしくなる一品です。
普段、皆さんはどんなお味噌汁を作りますか?
煮干しやカツオでおだしをとります?
お寺で作るお料理は、たとえだしであっても肉や魚をつかいません。
では何でおだしをとるかといえば、きっと皆さんもご想像の昆布やしいたけ。
それからもう一つ。今日はお寺のおだしに欠かせない「大豆だし」のお話をします。
大豆でおいしくおだしをとるコツ。それは「音」なんです。
大豆を煎り始めた頃には「カラカラ」と乾いた音だったものが、だんだん火が入ってくると「コロコロ」とくぐもった音に変わっていきます。さらに煎り続けると、再び「カラカラ」と軽い音になっていきます。この頃には香ばしい香りが立っていることでしょう。
だしをとると言うと、動きのない地味な作業に思われがちですが、小気味よい音の変化を聞きながら、腰や手首を使ってテンポよく煎る作業を続けるのは案外楽しいものなんです。
さて、煎り上がったら、その大豆をお湯に入れます。ここでも、焼け石を水につけるような、ジュッ、ジュッという音が特徴的。
一気に大豆を入れると沸騰して吹きこぼれてしまい、ここまでの作業が文字どおり水の泡になってしまいますので、あくまでも丁寧に、そっと少しずつお湯に入れていきましょう。
工程としてはここまでです。あとはそのまま半日おくだけ。大豆独特の甘い味わいと、香ばしい香りがぎゅっと詰まった大豆だしが出来上がります。
この大豆だしを使ったお味噌汁、今回は具材に豆腐とお揚げを選んでみました。だしと豆腐とお揚げ、いずれも大豆から作られた、いわば親戚のようなもの。相性の良さは折り紙付きです。
水…1リットル
大豆…150g
1.鍋、またはフライパンに大豆をいれ中火にかける。
2.大豆が焦げないように鍋をゆすりながら炒る。大豆の音がカラカラからコロコロという重い音に変わり、やがて再びカラカラという軽い音になるまで炒る。
3.沸騰した湯(火は切っておく)に少しづつ大豆を入れ、半日置く。
大豆だし…400cc
味噌…大さじ2 (今回は越後の味噌使用)
豆腐…1/4丁 (約90g)
油揚げ…1/2枚
1.豆腐をさいの目にし、油揚げは湯通しし、短冊に切る。
2.鍋に大豆出汁をいれ、中火にかける。
3.沸騰直前になったら火を止め、味噌を溶き入れ、1を入れる。
4.弱火にかけ再度沸騰直前になったら火を止め、盛り付ける。
大根…3センチ程度(150g)
米の研ぎ汁…3カップ
(A)
水…3カップ
昆布…5センチ
(B)
赤味噌…大さじ2
酒、みりん、砂糖…各大さじ1
水…20cc
1.大根は皮を向いて1.5センチの厚さの輪切りにし、片方の面に十字に隠し包丁を入れる。
2.鍋に1と米の研ぎ汁を入れ、中火にかける。沸騰したら弱火にし、芯に火が通るまで20分ほど煮て、冷水に取る。
3.鍋にAと2を入れ、中火にかける沸騰したら弱火にし、更に15分煮る。
4.小鍋にBを入れ、弱火にかけ、焦がさないように混ぜながら煮詰める。
5.器に3を盛り付け、4をかける。好みで柚子の皮を飾る。
目だけではなく耳や鼻、全身を使って作る大豆だし、ぜひ皆様もお試し下さい。
思えば日本の食文化はいかに多くの大豆に支えられていることでしょう。豆腐や湯葉、豆乳だけではなく醤油や味噌も大豆から。煮豆やきなこ、枝豆も。日本人の食卓に、大豆ほど深く関わり支えてくれている食材はないかもしれません。
クックパッドでも多くのお豆腐のレシピがありますし、豆腐マイスター・工藤詩織さんのコラムも合わせてお楽しみください。
次回は、「乾物だって揚げ物になる。あたかも鶏から!唐揚げもどき」を紹介します。
1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。
ユニット「料理僧三人衆」の一人として講演会「ダライ・ラマ法王と若手宗教者100人の対話」などで料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。
【公式HP】https://www.ryokusenji.net/kaku/
【Instagram】@junjunfukuda