“クックパッド芸人”を自称し、自らのキッチンに1000品以上のレシピを掲載している「藤井21」さん。1人(ソロ)で作って1人で食べるという「ソロ飯」を日々楽しんでいるそう。藤井21さん自作のおすすめレシピと、悲喜こもごものエピソードをご紹介します。第13回のテーマは「バレンタイン」。
僕、バレンタインデーにチョコレートをあげたことがあるんです。
普通バレンタインデーって女子から男子にチョコあげるイベントなんですけど、それがどこで間違ったのか、むかし職場の男の先輩にチョコレートをあげたことがあるんです。
……あ、たぶんそういうやつじゃないです。
バレンタインデーに男から男にチョコあげるなんて、これは“ウケるぞー”くらいの構想なわけです。それも手作りのチョコレートなんてあげたら、これはもうめちゃくちゃおもしろいに違いないなんて。義理も義理、大義理チョコなわけですよ。
ただ普段お菓子作りとかあんまりしないもんだから、結構大変で半日くらいかけて試行錯誤しながら作ったりしたんです。
しかも慣れないもんだから材料も買い過ぎたりしてけっこうな量のチョコを余らせたんです。そんなこんなで出来たら出来たで箱に入れたりラッピングしたりも手間なわけで。
当日渡すときもウケ狙ってたはずなのに、なぜか地味に緊張するし。
もうすでに世のバレンタインに手作りチョコあげる女子達めちゃめちゃ偉い! って気持ちがすごいんです。
あの時たぶん生まれて初めて、手作りチョコあげる女子の気持ちを垣間見た気がする。
結局渡したら渡したで……
僕「これバレンタインなんでチョコ作ってみたんすよー(半笑)」
先輩「へーそうなんだ、藤井君料理得意だもんねー(カバンにぽーいっ)」
僕「(え……?)」
まあそれはもう駅前で配ってるポケットティッシュ受け取ったかってくらいの放りっぷりだったわけですよ。一瞬、あれ? ティッシュ配ったっけあたし、くらいの。
もうウケるウケないなんてどこへやらで、
「いやいやいやそれだけ!? なにそれ! もうちょっとありがたがっていいだろ! ありがたがれよチョコだぞ! そんなんだからモテないんだよ!! このヤロウ!!」
という気持ちは、うちに帰って余った結構な量のチョコと一緒に飲み込んだ。
そんな気持ちでも、美味いんだチョコは。美味いけど変に凝って製菓用のチョコ(※1)も一緒に買ったもんだから、濃厚だし甘味も少ないし、味も単調だから飽きる飽きる。
結局のところチョコって、そのまま大量に食べるもんじゃないなってなるんです。
あぁチョコレートからは学ぶことが多いなって。
僕の好きな映画の台詞に、
『人生はチョコレートの箱みたいなもの。開けてみるまで中身は分からない』(※2)
というものがあるんです。
チョコレートの箱には何が入っているのか、とびきり甘いチョコ? それともビターチョコ? ホワイトチョコだってあるかも。開けてみるまで中身は何が入っているか分からない。
それは人生も一緒で、どんな事でもやってみるまでどうなるかなんて誰にも分からないってことで。
チョコレートの箱を開けるみたいに新しい事にチャレンジするのが人生だって。 だから新しいことにチャレンジしないとなーってなもんで、チョコで料理とか色々挑戦したんです。
だってチョコが大量に余ってたから……。
ほんとチョコって偉い。
そのままでも美味しい、料理にも使える、しかも人生の教訓を与えてくれるし。
そんなこんなでマグカップ片手に、チョコには教わることばかりだなって思いながら、今年も余ったチョコで作ったポタージュを飲んでいるわけですが。思い返してみれば、自分もバレンタインデーにチョコを貰う時にはたして喜んでたかなって、塩対応してないか自分って。
いかんいかん、自分も反面教師にしないとなってよくよく考えてみたら、一番僕にチョコをくれてたのは母親だった。
お母さんありがとう。
(※1)
製菓用のチョコレート(クーベルチュールチョコレート)は、
・カカオバターの成分が31%以上。
・カカオ固形分を2.5%以上。
・カカオバターと固形分を合わせた総カカオ分が全体の35%以上。
のものを指す。
出典:チョコレート製品の国際規格より
(※2) 映画『フォレスト・ガンプ』より引用
料理と笑いで天下を目指す男性ピン芸人。
埼玉県東松山市出身。東松山のやきとりを愛し、東松山市親善大使「東松山市應援團」の一員。食品衛生責任者の資格を持ち、クックパッドには1000以上のレシピをアップしている。日本テレビ系列『ウチのガヤがすみません!』などに出演。
>>オフィシャルブログ「良い香りのある生活」