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コラム

おいしくてヘルシー!春の京都で「和菓子」の魅力を発見【ニッポン全国「和食探訪」の旅 vol.6】

東京すし和食調理専門学校の学校長・渡辺勝さんが、日本各地を旅してお届けする「和食探訪」連載。知られざる和食の起源や、絶滅寸前の郷土料理などにフォーカスし、素敵なエピソードの数々をご紹介します。

和菓子の本場、京都で出会ったスイーツ

こんにちは。ご当地和食めぐりが大好きな「東京すし和食調理専門学校」の学校長・渡辺勝です。今回は、おいしい和菓子がテーマです。和菓子の本場・京都では、良質な糖分を素材に、脂分をほとんど使わない和菓子作りの技が、江戸時代に磨き上げられ、今も食通や観光客に愛されているのです。コーヒーや紅茶にも合う、人気の創作和菓子にも注目しました!

300年続く老舗で特に愛される和菓子は?

まずは、京都で一番の繁華街・祇園四条の「鍵善良房」へ。享保年間から、京菓子ひと筋300年の名店。店頭の菓子販売も、奥の茶房も賑わっています。

茶房に訪れる老若男女、幅広く好まれるのが「くず切り」です。秋の七草の一つであるマメ科の植物、クズの根から取れるくず粉を使った水菓子で、麺のように細く長く、ぷるぷると瑞々しいのです。

そう、和菓子の魅力は、味もさることながら、四季を映す意匠の美しさ。しかも、低カロリーの天然素材でヘルシーですから、おうちの定番スイーツに加えると、この春から夏、季節感豊かで、爽やかに過ごせること請け合いです。

低カロリーでヘルシー、目にも美しいくず切りの秘密

鍵善良房のくず切りを箸で持ち上げると、柔らかな氷のように透明です。黒蜜に浸し、再び上げると、蜜のしずくが絡んで、深みのある色と輝きを、うっとり見つめてしまいます。口へ運べば、なんとも優しい舌ざわりと食感。黒蜜の甘さとコクに頬が緩み、笑顔が浮かびます。 この誰もが魅了される味の秘密を知りたい! 今回は特別に、鍵善良房の厨房を見学させていただきました。

くず切りは、葛粉を水に溶かし、湯煎をして作ります。鍵善良房十五代目当主・今西善也さん曰く、「一番おいしいのは作り立てで、賞味期限は15分」なのだとか。だから湯煎には、注文が入ってからかかります。なるほど、風味も食感も新鮮なのが頷けますね。

おうちで楽しめる!くず切りアレンジ

くず切りといえば、家庭では鍋の具材でおなじみですね。市販のくず切りを使って、おうちで冷たいくず切りスイーツを楽しんでみましょう!

作り方は簡単。市販の乾燥くず切りをたっぷりのお湯で茹でて冷まし、氷水を張った器に盛り付けるだけで出来上がり! 市販の黒蜜につけてお召し上がりください。きな粉やあんこ、冷たいレモンシロップなどアレンジしてもおいしいですよ。

葛粉で作れば出来立ての瑞々しさ!

ちょっと手間を掛ければ、おうちで葛粉から作れます。 一人前の材料は、葛粉50g、水150ml。これをムラなく混ぜ、こし器か目の細かいザルで、潰しながらこします。これを流し缶、あるいはバットに流します。厚みは3mm程度がベター。大きめの鍋に湯を沸かし、中火にして生地を入れた流し缶またはバットをトングなどで支え、鍋に浮かせます。生地が固まったら器ごと沈め、全体が透明に変わったら、氷水を張ったボウルで冷まします。竹串で器から外し、包丁で幅5㎜ほどに切り揃えます。氷水を張った器に盛り付け、プルプルで瑞々しい、出来立てくず切りをどうぞ。

京和菓子の進化を「ZEN Café」で体験

続いて、鍵善良房が祇園の街並みの一角に開く「ZEN Café」を訪問。こちらは、ギャラリーを思わせるモダンな店内で、創作和菓子を味わえる注目のカフェです。今回は三品を味わいました。

「花霞」は、桜色をした上生菓子。白あんが入った生菓子。

「都の春」という和菓子。桜の葉の塩漬けを練り込んだ白あんと、浮島という桜風味のスポンジをキューブ状にしています。

吉野の本葛を砂糖と水だけで練り上げた、本格的な「くずもち」。これら雅な和菓子は、緑茶でもおいしくいただけますが、あら不思議、コーヒーに合うんです! 

ZEN Caféのコーヒーは、伝説の珈琲焙煎人・中川ワニさんとコラボしています。今西当主は、「コーヒーは主張が強くなく、和菓子のおいしさを優しく引き立てる味に工夫してもらいました」とのこと。うーん深い。和と洋が舌の上で出会う。妙なるハーモニーに陶酔しました。京菓子には、無限の可能性があるのです。

たまには淹れ立ての日本茶をゆっくり味わってみては?

京都といえば、おいしいお茶も語らないわけにいきません。鍵善良房とほぼ同時期、1717年に創業の老舗「一保堂」は、京都の公家「山階宮(やましなのみや)」より「今後、茶一つを保つように」と命名された由緒ある店。店内には、厳選されたお茶と有名京菓子店の名品を楽しめる「嘉木(かぼく)」という喫茶室もあります。

今回は、一保堂茶舗直伝の煎茶の淹れ方をご紹介します。 急須がなければ、紅茶やハーブティーのティーポットでもできます。ぜひお試しください。

まず、お湯の温度が重要です。一般的な煎茶は80℃が基本です。ただし高級煎茶である玉露は60度。特徴の甘みが引き立ちます。

お湯はいったん沸騰させ100℃にします。そして茶碗に注いで待ちます。湯気が収まり、器が手で持てるようになったら、温度は90℃くらい。またヤカンに戻し、器に注ぐ。これを2回繰り返すと、80℃になります。

このお湯を、茶葉を入れた急須やポットに注ぎます。お茶は急須やポットからの最後の一滴が、一番おいしい。最後は少し急須をゆすって、しずくを滴り落としてください。

淹れ終えたら、急須やポットの蓋を、写真のように三日月型に開くようにずらしておく。こうすれば中で茶葉が蒸れず、二煎目、三煎目もおいしく淹れられます。

煎茶は、茶葉が開き切るまで淹れられます。一般に高級な茶葉ほど開きがゆっくりで、何煎もいただけます。茶葉が完全に開いたら、出し殻です。

そしてオマケ情報。出し殻は捨てないで! 「究極の無農薬野菜」ですからね。ポン酢をたらし、鰹節をかけると実においしい。ご飯のおかずとしても、酒のつまみとしてもいけます。ぜひ、おうちでお試しを。

和菓子はコミュニケーションツール?

今回お訪ねした鍵善良房と一保堂茶舗は、本校創立以来の特別講師です。学生は講師の指導で、くず切り、水ようかんや上生菓子を実作し、お茶を習います。京都の菓子とお茶の哲学、精神も知れて、いつも感銘を受けます。今回は、鍵善良房の今西当主の「和菓子はコミュニケーションツール」という言葉が印象に残りました。

「和菓子はそれ単体で完成するものではなく、御茶席で抹茶と合わせ、茶席のご亭主が説明を加えて完成するものです。和菓子は、それを囲んで人々が話を弾ませる役割を担うのです」と今西当主。つまり、人と人の調和を取り持つのが京菓子です。それは、古から茶席で育まれた雅な伝統。大切な家族や友人と、京菓子の上品で洗練された甘さを共有すれば、心穏やかで、ゆったり素敵な時間を過ごせるのではないでしょうか。

また、くず切りは、材料も作り方もシンプルですが、四季を通して一定の味わいになるよう、職人が心を配っています。「気温や湿度、葛の状態などで少しずつ水の分量や配合を変えるのです」と当主は明かします。

これには膝を打ちました。和食は「水の料理」といわれます。厳選された素材の鍵善良房の「くず切り」は、まさに日本料理と通じる、水を知り尽くした老舗の知恵と技で作られているのです。京都の和菓子とお茶は、日本人の美学や哲学が凝縮した和食の宝です。素材と作り方が吟味され、季節のナチュラルな味わいを極めています。ぜひ、おいしく健康を手に入れてくださいね!

※本記事の取材は2020年の3月に取材したものです

渡辺 勝

東京すし和食調理専門学校の学校長。度重なる海外出張で日本の良さや和食のおいしさに気付く。趣味は旅行と食べ歩き。近年、郷土料理の素晴らしさに目覚め、日本の宝である『郷土料理』を世に広める使命を個人的に請け負っている。

東京すし和食調理専門学校

日本で唯一のすしと和食を学ぶ調理専門学校。2016年4月に東京都世田谷区に開校。海外からの留学生も多数在籍。校舎1階のカウンターにて学生によるすし懐石料理店「一膳」を定期的に営業。卒業生はすしや和食の専門店や旅館、海外のホテル内和食店などで活躍中。

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