昨年、「2020年の食のトレンド予測」と題し、ブームの兆しが見える5つのレシピを紹介しましたが、そのなかに「プロテインシェイク」という飲み物がランクインしていたのを覚えていますか?
家で過ごす時間が長くなり、健康や体力のことを気にする人がたくさん増えている今、改めてその魅力を大特集。
アスリートじゃなくても飲んでいいの? 太るって聞いたけど本当? など、わからないことも多いプロテイン。そんな疑問に、ラグビーW杯2019日本代表S&Cコーチと、スーパーラグビー「サンウルブズ」のS&Cコーチを務めている太田千尋さんが答えてくれました。
プロテインは運動している人だけが飲むものというイメージがありますが、決してそうではありません。そもそもプロテインは、日本語で言うと“たんぱく質”のこと。ふだんの食事でもたんぱく質は摂っていますよね? そう考えていただくとシンプルだと思います。
私たちの体の多くはたんぱく質とミネラルでできているので、それらが不足すると疲れが抜けなくなってしまうんです。しかも、私たちの食事はどうしても炭水化物が多くなりがちで、一度の食事でたんぱく質をたくさん摂るのはなかなか難しい。それを補う意味でプロテインを摂取してみるといいと思います。
スポーツ選手は運動後に摂取しますが、運動しない方も「朝ごはん」や「間食」で取り入れるといいと思います。朝食ってすごく大事だけど、時間がなかったり、食欲がない場合もあるので、そういうときに「プロテインシェイク」を飲むと簡単に必要な栄養を摂取できます。
また、夜に寝る前に飲むのもおすすめです。アスリートも夕食で補えなかった分を夜寝る前に摂取しています。分食することで、体に常に栄養素がいきわたって、体が強くなる状態を作れます。
ソイプロテインの場合、消化が緩やかで余分な脂質とか糖質が少ないので、ダイエットとして使用している人も多く、太るという心配は少ないですよ。
シンプルに筋肉を大きくしたい人はホエイプロテイン、リカバリーを高めたい人はカゼインプロテインなど、目的に応じて変えていくといいと思います。大体1回の摂取量で20~30g。それ以上多いとなかなか吸収できなくて排出されてしまいます。女性は15gでも大丈夫ですよ。
部活動をしているお子さんが飲むケースもあると思います。成長期のお子さんであれば摂取しても大丈夫です。ただし、食育の面から考えると、子どもはしっかりいろいろな食材から栄養素をとったほうがいいでしょう。食べ物を噛む回数が多くなることで、健康にプラスの面もあります。どうしても疲れて食欲がわかない、ごはんが食べられない、食事の準備が難しいというときは、プロテインを活用してみるのも手だと思います。
プロのアスリートも飲んでいるレシピをご紹介します。まずはこれらのレシピから試してみてください。慣れてきたら野菜や果物を足していって、自分好みのプロテインシェイクを作ってみるのも楽しいですよ。
アスリートは、これを朝の運動前やお昼ごはんに飲んでいます。皆さんも朝が忙しくて食べられないときは「エナジーシェイク」を活用してみてください。
プレーンヨーグルト…100g
水または牛乳…200ml
ホエイプロテイン…付属のスプーンすりきり3杯
ブルーベリー…10〜15粒(またはいちご3粒)
はちみつ…大さじ1
材料をすべてミキサーに入れ、撹拌する。
がっつり運動する人向けのプロテインです。疲労を回復させるエネルギーがないと、筋肉からエネルギーが分解されてしまいます。そうなるとせっかくトレーニングをしても体がしぼんでしまうので、なるべく枯渇したエネルギーを早く補充してあげて、体の素になる栄養素を血中に流してあげることで効果が高まります。
プレーンヨーグルト…100g
オレンジジュース…100ml
ホエイプロテイン…付属のスプーンすりきり3杯
バナナ…1本
ブルーベリー…10〜15粒
はちみつ…大さじ1
材料をすべてミキサーに入れ、撹拌する。
カゼインプロテインの「カゼイン」には、夜の睡眠の質を高める成分が入っているので、スポーツ選手以外にも一般の仕事をされている方のストレスの回復にも役立ちます。その分、摂取エネルギーが増えてしまうので、夕飯を少し減らすなどの工夫は必要です。夕食を適度にとって、小腹がすくところにナイトスムージーをとると健康につながると思います。
豆乳または低脂肪牛乳…200ml
カゼインプロテイン…付属のスプーンすりきり2杯
ブルーベリーやいちごなどベリー類…スプーン2杯
材料をすべてミキサーに入れ、撹拌する。
プロテインは使用していませんが、暑い時期の練習やハーフタイムで休んでいるときに体温を上げ続けさせないために飲みます。熱中症の予防にもいいですよ。運動をしているお子さんにもおすすめです。
氷…10個程度(または凍らせたスポーツドリンク200ml)
レモン果汁…小さじ1
エネルギーゼリー…半分〜1個
はちみつ…大さじ1
材料をすべてミキサーに入れ、撹拌する。
僕は「オートミール」に入れて食べています。ココア味のプロテインを入れて食べると、コーンフレークのチョコ味みたいになっておいしいですよ。僕はもともとあまりオートミールが好きじゃなかったんですけど、これで食べられるようになりました。
あと、パンケーキに入れたりもしています。いつものパンケーキに20gくらいプロテインを加えて焼くだけなので、使いやすいですよ。
こんなご時世なので、今はご近所を少し散歩して運動不足を解消されている方もいると思います。そのときに心がけるといいのが、スピードに変化をつけること。信号まではゆっくり、信号すぎたら速足にするなど、歩く速度を変えるだけで、それがエネルギー消費につながるだけでなく筋肉の活動量も増えます。筋肉の活動量が減ってしまうと脂肪が蓄積したり、血行が悪くなってしまうので、筋肉量が増える散歩の仕方をするといいと思います。
今、リーグも中断しているため、チームでも何かできることはないかと考えて「家でできるトレーニング」をSNSで配信することになりました。これまでのような運動はできなくても、そうやって家の中でできることを少しずつ始めてみるのもいいですよ。お子さんのいるご家庭は、それを見ながらみんなで楽しくトレーニングしてみてください。
最後に。何でもそうですが、プロテインは簡便に取れる反面、過剰な摂取は不健康のもとです。取りすぎは脂肪の蓄積や体の負担になるため、1日1回〜2回ぐらいを目処に規定量を守って正しく、楽しく活用しましょう。
(TEXT:河野友美子)
1979年、千葉県千葉市生まれ。
2015年〜現在、ラグビー日本代表S&Cコーチ。今大会はサイモン・ジョーンズコーチとともにフィジカル強化を担う。ラグビー日本代表アシスタントS&Cコーチ。
2013年~ 2015年、スーパーラグビーサンウルブズS&Cコーチ。2016年〜現在、慶應義塾大学ラグビー部S&Cディレクター。2011年〜現在、パフォーマンスゴールシステム株式会社代表取締役、NPO法人コンディショニング科学研究所副代表ほか