お米は日本の主食ですが、世界を見渡すとお米を食べている国は意外とたくさんあります。お米の食べ方や炊き方、保管方法、そしてお米の価値観など、世界のお米を知ると、その多様性や魅力を再発見することができます。そこでこの連載では、知っているようで知らない海外のお米料理をお米のコバナシとともにお米ライター柏木智帆がお届けします。
炒飯の好みは「パラパラ重視」「しっとり重視」「あっさり重視」「こってり重視」とさまざま。個人的にはいくらでも食べられちゃうパラパラ炒飯が好みなので、今回はパラパラ炒飯をおいしく作るコツをご紹介します。
パラパラ炒飯にはどんなお米が合うでしょうか。粘りがある日本のコシヒカリ? 粘りがなくパラパラとした長粒米?
パラパラとした炒飯を作るためには後者だと思われるでしょう。でも、長粒米だけでなくコシヒカリでもパラパラ炒飯は作ることができます。
以前に都内にある中華料理店の料理人に教えてもらったのは、「1人前ずつ作ること」「炊きたての温かいごはんを使うこと」でした。炊飯後に保温するとごはん同士がくっついてしまうので、炊きたてをやけどに注意しながら手でほぐすのがベスト。コシヒカリのように粘りがある品種は手に水をつけるとほぐしやすいそうです。
ちなみに長粒米を使うときも、ごはんを炊いた後に送風機で水分を飛ばしながら冷ましてほぐすのがポイントだと教えてもらいました。
そして、炒飯はお米料理ではありますが、「卵料理と考えたほうがいい」とも。その心は、炒飯の炒め時間のタイミングを判断するのは、 卵の状態を見ることがポイントだから、とのことでした。炒めすぎて卵が焦げ付き、ごはん粒が油を吸い込んでガチガチになった状態は、炒飯ではなく「焼き飯」。カステラのようにふわっと立ち上がっているうちに仕上げなくてはならないそうです。
卵に火が入ってごはんと混ざったと思ったら完成。手早く切り上げないと、ごはんの水分が飛び、卵の香りもなくなってしまうとのことでした。
コシヒカリよりも粘りが弱く、粒がしっかりとした品種を使うとより作りやすくなります。
また、お米を購入してから日数が経って古米臭が出て粘りが薄くなってしまった場合は、炒飯に使うと古米臭を包み隠すことができる上、パラパラと仕上げやすくなり、おいしく食べることができます。
都内にある別の中華料理店の料理人からはユニークな一手間を教えてもらいました。
使っているお米は粘りがあるコシヒカリ。炊飯後にバットに広げて粗熱を取ってから、ラップを密閉させずにふんわりとかけて冷蔵庫で寝かせます。1日経ったらごはんをひっくり返して冷蔵庫でもう1日。すると、生米かと思うほどパラパラとしたごはんになります。
お米は加熱や水分量の増加によってデンプンを「アルファ化」させると、ふっくらとやわらかくなり、消化しやすくなります。これが炊飯です。そして、この状態から冷却や乾燥によって硬い状態に戻ることを「ベータ化」と言います。
ベータ化したパラパラのごはんを高温でさっと炒めて、絶妙な食感を保ちながら消化しやすい状態に戻す。それがこの店の炒飯でした。
この店でも、炒飯にとって卵はお米と同じくらい重要な存在。多量の油を使っても卵が油を吸うことによってべちゃっとならないため、卵抜きの炒飯はあり得ないそうです。
炒飯作りが苦手だという人は、ひとまず肉や海老や野菜などを抜いて、まずはお米と卵だけのシンプルな炒飯から始めてみてはいかがでしょうか。
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
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