TV番組で披露した料理の腕前がプロ級で、一躍話題となったお笑い芸人・ポンポコ団のキングさん。YouTubeチャンネルで配信している料理は、どれも簡単なのに本格的。今回はそんなキングさんが料理に目覚めたきっかけや、定番メニューをおいしくするワザを聞いてみました。
料理を始めたのは21歳の頃。それまでは学校の調理実習で包丁を使ったことがあるくらいで、料理なんてしたことがなかったんです。料理をするようになったきっかけは、家でお酒を飲むようになったこと。お酒を飲みに行くのが好きだったんですが、毎日飲みに行くようなお金はなかったので、自炊するようになりました。
料理をするようになって、洋食の料理人さんのYouTubeチャンネルを見始めたんです。その人が牛刀を使っていて、包丁についての話をしながら料理をしていたんですよ。それを見ていくうちに「包丁ってかっこいいな」って思ったところから料理の世界に入り込んでいった気がします。
TV番組への出演をきっかけに、YouTubeチャンネルを見てくれたり、SNSをフォローしてくれたりする方が増えて、料理に関する相談が届くようになりました。そのほとんどが、「簡単に作れるレシピを教えてほしい」というもの。僕はもともと、家でもお店の味を作るということをしてきたので、何十時間もかけて料理を作るということもあったんですが、最近は「コンビニで買えるもので作れる◯◯」とか、「これをこうしたらおいしいですよ!」ということをやりはじめました。
僕のポジションって、料理人と主婦の人の間くらいだなと思っています。料理人のワザはやっぱり特別なので、簡単に真似するなんてことはできないんです。料理人には料理人なりのこだわりがあるし、家で食べる料理には家で食べる料理なりの良さがある。でも、おいしいものを作りたい、食べさせたいという方のために、プロが作る料理を一般の方ができるようなレシピに落とし込むことを考えてやっています。
手間をかけたらおいしいわけではないし、家庭料理なりのひと手間ってあると思うんです。例えば、お皿のふちが汚れていたら出す前にちゃんと拭いてあげるとかね。それも立派なひと手間ですよね。家庭料理だって、本当にちょっとしたひと手間でおいしくなります。今回は、家庭で作るメニューをちょっとだけおいしくするワンポイントを紹介したいと思います。
サラダは、お皿に盛った状態でドレッシングをかけるのではなく、ボウルに野菜を入れてドレッシングと和えてからお皿に盛ったほうがおいしいです。ドレッシングを使う量も少量でいいので塩分の摂り過ぎにもならないし、全体に味がなじむし、野菜の味もしっかりします。
水1Lに対して塩1gで茹でること。(ペペロンチーノの場合は、塩1.5g)。茹でるときに、パスタにしっかり味をつけてあげることがポイント。また、パスタを茹でるときは、お湯をブクブクさせてはいけないんです。理想は、波打つくらいのお湯で茹でること。ブクブク茹でると、麺が傷ついてしまうんです。
市販のルーに温かいお湯をかけて5分くらい置いてください。そうすると、油が浮いてくるので、取り除いてから使うとカレーがおいしく仕上がります。油揚げの油抜きみたいなイメージです。 おいしくなるちょい足しについても聞かれることがあるんですが、カレールーはあれで完成しているので、ちょい足しはせず、どうしても一味足したいときは「ガラムマサラ」を入れるとスパイスの香りが出ておいしくなります。 あと、水ではなく牛乳で作るのもマイルドに仕上がり、おすすめです!
僕がおすすめするのは、一切手をつかわずにお肉をこねること。木ベラかゴムベラでお肉をこねて、成型するときまで一切手を使わないんです。成型もできるだけ早く、薄めに作り、表面を包丁で押してあげます。とにかく、極力手で触れずに作ること。ひき肉は、手の温度でも油が溶けておいしくなくなるんです。
焼くときのポイントとしては、弱火か中火で火を通して、最後に強火で表面焼いてあげること。肉汁を閉じ込めるためにと強火から焼いたりする人がいますが、それだとまわりだけ焦げて、中は火が通っていないということになりがちです。そのためにも薄いハンバーグにすることがポイントです。
ベシャメルソースは手作りするのが一番おいしいです。とはいえ、面倒だと思うので、ソースも具材もまとめて炒めちゃいます。 グラタンの具材をフライパンで炒めたら、そこにバターを10g入れます。薄力粉10gと牛乳100mlをボウルで混ぜておいて、フライパンに濾しながら入れてください。全体を混ぜてとろみがついたら、お皿に盛り、オーブンで焼いて完成です。 香りが欲しい場合はローリエを入れるとお店っぽい味になります。使う前にコンロでちょっとだけ炙ってから入れると香りがたちますよ。
下処理として、ひき肉200gに対して、2gの塩しておきます。それを1時間くらい冷蔵庫で寝かせてからひき肉を焼きます。ここでもポイントがあって、熱々のフライパンにひき肉をおいたら、そこから触っちゃダメです。ハンバーグを焼いているイメージで焼いて、火が通ったらひっくり返して両面をしっかり焼きます。ひき肉を塊として焼くイメージです。両面がしっかり焼けたらほぐして、赤ワインを入れてフライパンについた旨味をそぎ落とします。 家庭や市販のミートソースには玉ねぎとかにんじんとかいろいろ入っていますけど、お店のものは入ってないほうが多いです。お肉だけのミートソースもおいしいですよ。トマトソースが面倒だったら、無塩のトマトジュースとローリエで煮込むだけでもおいしいんです。
「料理が上手になる方法」をよく聞かれるんですけど、僕は、「食べる人のことを考えてあげること」だと思います。うちの母は、固いものが平気な僕と、顎が小さくて固いものが苦手な弟のパスタの茹で時間を変えていました。母の作る料理はすごく丁寧だったんです。きゅうりの千切りの太さがちゃんとそろっているとかね。子どもながらに「きれいにしようと思って作ってくれている」というのが印象的だったんです。
例えば旦那さんが、暑い日に疲れて帰ってきたら、ちょっと塩を強めにいれてあげるとか、体調に合わせた献立にしてあげるとか。結局、料理ってそういうことなんですよ。完成したものから愛情を感じる料理が作れる人は料理が上手になるんです。気持ちを込めて、そこにひと手間がかかっていたらおいしく感じるんです。
料理芸人としてはやっぱり、料理人と主婦の真ん中というポジションから、料理人のワザを簡単にわかりやすく発信していきたいと思います。ちょっとでも難しい工程があると諦めてしまう人も多いから、誰にでも簡単に作れるということをテーマに作っています。オムレツの作り方を紹介しているんですけど、今、世に出ているレシピであれ以上簡単なものはないと言い切れるくらい、1番簡単なレシピです。
あと、日本はフードロスが多いので料理をする人間として気になっています。冷蔵庫の中身を確認するとか、古いものから使っていくとか、飲食店だと当たり前にやっていることを家庭でも楽しくできるような方法を考えていきたいです。僕は、捨てるところを使った料理をしたりするんですが、野菜を使ったら、皮も料理に使おうとか、パプリカのタネをオーブン焼いて料理に添えてみようとか、そういうことを考えるのが楽しいので、そういった視点からも料理の新しい提案をしていけたらと思っています。
ポンポコ団としては、最近、ネタに料理を取り入れてるんです。料理も好きだけど、ネタをすることも好きなので、いつかポンポコ団の単独ライブをやってみたいです。大阪城ホールみたいな大きなところで。ネタを見ながらごはんが食べられる空間みたいなものを作れたらいいな。それが今の僕の夢です。
(TEXT:上原かほり)