毎日の料理は、極力手を抜いてラクをしながらも、ちゃんとおいしく仕上げたいですよね。2020年5月28日に発売された、クックパッド編集担当本部長・小竹貴子さんの新刊『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』には、それを叶えるためのシンプルで簡単な料理のコツが満載。この連載では、本書の中から厳選して、すぐに使える“おいしくなるルール”をご紹介します。マスターすれば、急に料理が得意になること間違いなし!
家にあればいいスパイスは2つ。クミンシードとフェンネルシードです。この2つとも、スーパーのスパイスコーナーにあるはず。もしなくても、ちょっといい食品を扱っているところにあるので、ぜひこの2本だけそろえてみてください。
シード(種)なので、少量で味が楽しめます。そして、それ以上に味のレパートリーがとても広がります。さっと一振りでいろんな食材の味が変えられます。いろいろ試した結果、最もコスパがいいのがこの2本です。
昔、カレー研究家の水野仁輔さんと仕事をご一緒することがあり、スパイスについてかなり研究しました。スパイスは、ざっくり分けると大きく4種類あり、よく煮込むことで香りが立つものや、ガラムマサラのように辛みづけをするもの、ウコンのように色をつけるもの、そして短時間で香りが出るものに分けられます。
前の3つは日々の家庭料理だと時間がかかったり煩雑なので、いちばん使えるのが、最後の「短時間で香りが出るもの」です。クミンシードはカレーっぽい風味、フェンネルシードは酸味のある爽やかな風味になります。
クミンシードは、カレー粉の原料にも使われている、いわゆる「カレーの味」の主な香りです。じっくり炒めたり煮込んだりせずに、入れるとすぐに香りが引き立つので、非常に便利です。
カレー粉じゃだめなの?と思われるかもしれませんが、カレー粉にはさまざまなスパイスがミックスされており、煮込むことを前提とされたものも入っているので、まさに煮込む料理でいちばん真価を発揮します。ですので、すぐ香りを出したいと思ったらクミンシードを使うほうが効率的です。また、パウダー状だと、食感が粉っぽくザラっとしてしまいます。シードのほうが見た目もおしゃれになります。
クミンシードが合う料理は、きのこ炒めやブロッコリー炒めなど野菜料理全般です。ざっくり言うと、クミンシードは、火をとおしてはじめて香りが立つスパイスなので、サラダ以外ならなんにでも合います。
油とスパイスで野菜を炒めるこの料理は、「サブジ」と呼ばれているれっきとしたインド料理です。といっても、ただのじゃがいも炒めにクミンシードを振っただけのものですが、他のスパイスでは絶対に出せない香りと味です。たった数振りで本格的な味になるので、手の込んだ非日常感が出ます。じゃがいもは水に浸せば、さっと炒めるだけで食感がシャキッと食べられます。
じゃがいも2、3個をスライサーなどを使い、薄い細切りにして水に5分ほど浸します。水に浸すのがシャキシャキのカギです。
じゃがいも...... 2、3個
オリーブオイル...... 大さじ1
クミンシード...... 小さじ1
塩...... 少々
1 じゃがいもを細切りにして5分ほど水にさらす。
2 じゃがいもの水気を拭き取る。
3 フライパンにオリーブオイルを熱してじゃがいもを炒める。色が透き通ったらクミンシードと塩を振って混ぜあわせる。
もうひとつのおすすめスパイスのフェンネルシードは、ミントのような爽やかな香りです。レモンを思わせる香りで、ヨーロッパでは私たちがごまを使うような感覚でさまざまな料理に使われます。クミンがエスニックな味に変えるとしたら、フェンネルは料理を西洋風にします。
フェンネルシードがありがたいのは、火を通さずそのまま振りかけるだけで香りが立つこと。だからクミンシード以上に使い方が簡単で、火を通す料理はもちろん、サラダにも直接振りかけるだけでOKです。するとあと味にふわっとミントの香りが広がります。
サラダだと、中華風や和風以外のサラダのどれにでも合うので、コールスローや、 サラダのミントをフェンネルシードに置き換えたりなどしてもいいでしょう。
フェンネルは、もちろん生のフレッシュハーブでもいいのですが、結構高めなので、スパイスになっているフェンネルシードがコスパがよく日持ちするのでおすすめです。クミンシードもフェンネルシードも、スーパーでよく見かけるS&BやGABANのスパイスシリーズにラインナップされています。
メイン料理では、肉より魚のほうが相性がいいです。特に白身の魚によく合うので、私はタラや鮭に使うことが多いです。特にタラは、ホイル蒸しなど和風にしか使えないと思われがちですが、フェンネルシードがあるだけでバリエーションが広がります。
このタラのフェンネルシード焼きは、フランス料理のようなバターとレモンの風味が特徴です。目標は、タラをカリっと焼くこと。臭みをとり、小麦粉をきちんとはたけばバッチリできます。
まず、タラの臭みを抜きましょう。料理を始めるいちばん最初にタラに塩を振り、出てきた水分が臭みのもとなので、それをキッチンペーパーで拭きます。そのあと小麦粉をはたきます。小麦粉で、柔らかいタラの身がカリッと香ばしくなります。
タラ...... 2切れ
小麦粉...... 大さじ1
オリーブオイル...... 大さじ1
フェンネルシード...... 小さじ2
バター...... 10g
レモン...... 1/2個
1 タラに塩(分量外)を振り、10分置いて水気を拭き取る。
2 タラに小麦粉をまぶす。
3 フライパンにオリーブオイルを熱し、フェンネルシード小さじ1を入れて香りが出たら、タラを入れてこんがり焼く。
4 タラに焼き色がついたら裏返して2分焼く。
5 火がとおったら、バターを乗せ、レモンをしぼりフェンネルシードを小さじ1かけてソースを作る。
(撮影:深澤慎平)
★調味料はぜんぶ大さじ1
★家族のためにはつくらない
★同色でそろえるとおしゃれに見える
「今日、料理するのがおっくうだな」。そう思ったことはないでしょうか? この本は、全編文章で「あなたが料理が得意になる」ために、さまざまな方法をお伝えします。
クックパッドの立ち上げメンバーで、現在は編集本部長を務める著者は、これまでクックパッドの320万に及ぶ膨大なレシピを見て、たくさんのシェフに会い、そして日々の自分の料理をする中で「ここは手を抜いてもいい」「ここはこだわった方がおいしい」のラインを仕組み化してきました。この本では、その方法と全68品のオリジナルレシピを紹介しています。
>>ご購入はこちらから
著者の小竹貴子さんが、2020年6月22日(月)のお昼12:08より、文化放送「くにまるジャパン 極(きわみ)」に生出演予定! 発売後、即重版が決定した本書の中のレシピを、生放送中に実際に作ります。お楽しみに♪
クックパッド株式会社ブランディング・編集部担当本部長。1972年、石川県金沢市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオを経て、2004年に有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年に『日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010』を受賞。2012年、同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰、現職。現在、クックパッドニュースにて『おいしい思い出』、ForbesJAPANにて『それ、「食」で解決できます!』を連載中。また、フードエディターとして個人でも活動を行っている。