コロナ禍でブームに!今の「キャンプごはん」はどんなレシピが人気?【あの食トレンドを深掘り!Vol.8】

コロナ禍でブームに!今の「キャンプごはん」はどんなレシピが人気?【あの食トレンドを深掘り!Vol.8】

90年代に流行した「ティラミス」、数年前に話題になった「おにぎらず」、直近では社会現象にもなった「タピオカ」など、日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

コロナ禍で「キャンプ」がブームに

夏はキャンプを楽しむ人が増える。特にコロナ禍の今年は、3密を避けやすいアウトドアという面からも、注目度が高まっている。ブルームバーグニュース7月3日配信記事によれば、アウトドア用品を扱うスノーピークの売上が好調で、5月にチタン製マグカップが前年同月比25%、小型のダッチオーブンが34%増にもなっている。

また、是枝裕和監督の映画『そして父になる』でも出てきたが、出かけずに自宅にテントを張ってキャンプ気分を楽しむ人たちもいる。

キャンプブーム自体はここ数年続く。『ゆるキャン△』、『ふたりソロキャンプ』、『山と食欲と私』といった人気アニメや漫画、テレビのアウトドア・キャンプ番組も人気の要因になっているようだ。もちろん、楽しそうなキャンプの様子を伝えるSNSの影響もあるだろう。

アウトドアでの楽しみは料理、という人は多いのではないか。しかもここへ来て、キャンプ料理のバラエティはぐっと広がっている。

クックパッド食の検索サービス「たべみる」によれば、キャンプ料理を探す人の割合は、2013年以降上り調子だった。2020年はコロナの影響で下がっているものの、巣ごもり生活の反動で、世間の関心は高まっている。

クックパッドのレシピ検索で興味深いのは、2018年まではキャンプにバーベキューを組み合わせるワード選択が上位だったのに、2019年からは低下傾向にあることだ。近年は、鍋として使えるアウトドア用飯盒のメスティンや、鋳鉄製の小さなフライパンのスキレットを使った料理が人気。

メスティンの検索で多いのは、パエリアや炊き込みご飯などのご飯ものだが、パスタやアヒージョなども作れ、レシピ本も出ている。
スキレットは、コンロで表面だけ焼いたのち、スキレットごとオーブンに入れてじっくり中まで火を通す肉料理に便利な道具。薪の火を使うキャンプでは、肉料理はもちろん、ラザニアや焼き栗などもできる。

料理のバリエーション増加の傾向は、キャンプ料理専門のレシピサイト「ソトレシピ」でも表れている。ソトレシピ総研が実施した「キャンプ料理トレンド調査2020」によれば、特に20代で、よく作るキャンプ料理として、和食、中華、フレンチ、アジアンなど幅広いジャンルを挙げる傾向があり、多様化してきたことがわかる。

昭和のキャンプ、令和のキャンプ

こうしたデータを見ると、昭和育ちの私は遠い目になってしまう。1970~1980年代、中学生の頃大人たちの引率で行ったキャンプでも、高校生で参加したキャンプでも、重そうなカーキ色のテントを二重に張って、周囲には雨どいの役割をする溝を掘った。料理はカレーか豚汁ぐらいしか記憶にない。

20代だった1990年代は、第一次キャンプブームと言われた時代と重なる。アウトドア雑誌の『BE-PAL』が人気で、アウトドア仕様のパジェロなどの車が登場し、新しいキャンプ道具が揃った。

アウトドア好きな会社の同僚たちが誘ってくれたキャンプでは、道具の進化に驚いた。テントは軽くて溝を掘らなくていいし、タープの下で、カセットコンロの熱源のコンロを使って、焼き網料理が自由自在。ホイル焼きをしたり、ハマグリを焼いたりといったバラエティが楽しめるので感動していた。

それも平成初期の昔話。今のキャンプは、パエリアだ、パスタだ、塊肉だと、コツさえつかめば何でもできてしまうのではないか、と思える程料理の幅が広がっている。

1990年代は、グルメブームの真っただ中ではあったが、1993年の平成米騒動でタイ米が臭いと廃棄されたほど、日本人は外国の味に慣れていなかった。道具以前に発想の幅も狭かったかもしれない。

それが今や、世界各国の味に慣れ親しんだ人たちが、アウトドアでもふだんと同じようにバラエティ豊かな料理を楽しもうとしている。その環境は十分整ったからだ。外国食材は手軽に買えるし、シーズニングなど、本場の味を再現できる便利な合わせ調味料もある。レシピサイトも充実している。便利な調理道具もある。

21世紀、世界の秘境はなくなったと言われるが、キャンプもワイルド感は雰囲気だけになったのだろうか。腕次第で、さまざまな料理を楽しめる。それはしかし、腕次第で料理の質に格差ができてしまうということでもある。アウトドアならではのアクシデントもあり、ふだん以上に技術と応用力が試されてしまう。もしかして、みんなでカレーや豚汁を作って満足していた昭和のほうがよかったのか。

いや、いつでもどこでもおいしいものが手に入る時代だからこその楽しみがある。料理に舌鼓を打った思い出が残るか、逆に、キャンプで失敗して料理がまずかった思い出が、強烈に記憶に残るか。過去になってしまえば、むしろ情けない失敗ほど、笑って思い出せる楽しいものになるのではないだろうか。


阿古真理(あこ・まり)

Dac2a396eb6f2a4d1a2180992f7d52af ©坂田栄一郎 1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』、最新著書『母と娘はなぜ対立するのか』(筑摩書房)など。

 

クックパッド編集部

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