食と健康のエキスパート・管理栄養士の藤橋ひとみさんが「腸活」に関する豆知識をお届けする連載。「腸」は美容・健康の鍵を握る臓器。様々な心身のトラブルの解消のために日々の食生活の中で継続して実践できるメンテナンス術を分かりやすくご紹介していきます。
さつまいもや栗、かぼちゃ、梨、ぶどう、柿、サンマなど、様々な美味しい食べ物が旬を迎える“食欲の秋”。今年の猛暑による夏バテで元気がなくなっていた方も、日に日に暑さが和らいでくると、少しずつ食欲が戻ってきた頃ではないでしょうか?食欲が戻るのは良いことではありますが、つい食べ過ぎてしまい、体重増加に悩む声も毎年よく耳にします。
そこで、今回は“食欲の秋”の救世主になってくれるおすすめの食材の1つ、「キノコ」について、知って得する食べ方の知恵をお伝えします。
キノコがなぜ “食欲の秋”の救世主になってくれるかというと、その理由は食物繊維が豊富で低カロリーという栄養学的な特徴にあります。繊維質で噛み応えがあり、胃の中で水分を吸って膨らむので食べ応えがあることからも、ダイエット中の食事に積極的に活用したい食品の1つです。
また、食物繊維には、私たちの腸内にもともと存在する善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えてくれる働きがあるため、美容と健康のために意識をしたい「腸活」もサポートしてくれます。食物繊維は現在、多くの日本人が不足気味なので、まずは1日あたりプラス3~4gを目標に、積極的に摂取するように意識をしてみると良いでしょう。
参考までに、日本人に馴染みの深いキノコ6種類について、カロリーと食物繊維含有量をまとめてみました。キノコを1日100g(約1パック)摂ることを意識すると、日本人が平均的に不足している分の食物繊維の補給ができそうですね![1-3]
食品名 | エネルギー(kcal) | 食物繊維(g) |
なめこ(生) | 15 | 3.4 |
まいたけ(生) | 15 | 3.5 |
ぶなしめじ(生) | 17 | 3.0 |
エリンギ(生) | 19 | 3.4 |
えのきたけ(生) | 22 | 3.9 |
しいたけ(菌床栽培/生) | 20 | 4.9 |
キノコには、食物繊維の他にも様々なビタミンやミネラルをはじめとした栄養成分が含まれていますが、特にキノコに特徴的な栄養素はビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と言えるでしょう。特にキクラゲ、まいたけ、エリンギに多く含まれ、カルシウムの体内吸収を助け、骨の健康を維持する働きを持っています。
ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで体内生成もできますが、紫外線を避けている方は不足しないよう食事から積極的に摂取したい栄養素です。 [1,4]
スーパーで売られているキノコは、一般的に泥や虫などがつかない環境で栽培されているため、洗わずに調理ができる食品です。洗うことで水っぽくなってしまったり、栄養成分が溶け出しやすくなるため、汚れがある場合はふきんやペーパータオルで軽くふく程度にしましょう。[5]
キノコは、カサ増し食材としても活躍してくれる優れもの。例えば、ひき肉料理にみじん切りしたキノコを混ぜるなど、お肉の代わりに置き換えて使うことで料理のカロリーを抑えられたり、いつもの料理にプラスして使っても、カロリーへの影響は少なく食べ応えだけをアップさせられます。腸活を意識している時は、味噌汁に入れるなど、発酵食品と組み合わせると効果的だと考えられています。 [2]
大量に買ってしまい、すぐに使いきれない場合は、冷凍保存がおすすめです。食べやすい大きさに切ってから、保存用の袋などに入れて冷凍し、1ヵ月ほどを目安に使い切ると良いでしょう。使うときは、解凍せずに凍ったまま、味噌汁やスープ、シチューなどの汁物に使うのがおすすめです。[5]
腸活やダイエットに役立つ食物繊維が豊富で、低カロリーなキノコ。スーパーで年中見かけるものは、工場で安定的に栽培されているため、野菜や果物などの他の食材に比べ、季節による価格変動も少なくお財布に優しいのも優秀なところ。天然のキノコは秋に旬を迎えるものが多いため、天然物を見かけたら、この時期ならではの美味しさを味わってみるのも良いですね♪
炊き込みご飯や汁物、煮物、炒め物など、様々なお料理に活用しながら、美味しくヘルシーに“食欲の秋”を楽しみましょう。
〈出典〉
1. 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
2. 厚生労働省|e-ヘルスネット|腸内細菌と健康
3. 厚生労働省|平成30年「国民健康・栄養調査」の結果
4. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
5. 株式会社雪国まいたけ|きのこに関するQ&A
(全て2020年8月26日 参照)
I’s Food & Health LABO.代表。フリーランス管理栄養士として、商品開発やレシピ開発、コラム執筆やメディア出演、コンサルティング等、幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得を目指し、栄養疫学の研究に取り組んでいる。大のお豆腐好きが高じて、豆腐マイスターの認定座学講師として、国内外で日本の豆腐の魅力を伝える活動をしているなかで、その原料である大豆自体への興味が深まり、大豆関連の資格の制覇を目指し、学びを深めている。
近年は特に、豆腐を作る際に同時にできる「おから」に注目し、日本人に必要な食物繊維の宝庫でもある「おから」を、有効活用できる方法を広げる活動に注力している。著書に「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ(ベストセラーズ)」がある。
●所有資格
管理栄養士、調理師、製菓衛生師、豆腐マイスター、食育豆腐インストラクター、豆乳マイスタープロ、おから味噌インストラクター、ソイオイルマイスター、おから再活プロデューサー、インナービューティープランナー、ほか