『月刊モーニングtwo』で大好評連載中の家庭料理漫画「いただきます、のまえとあと」の単行本1巻が発売!登場人物らがおいしそうに食べる料理のレシピも紹介されており、読んで楽しいだけでなく、実際に作って楽しむこともできる漫画になっています。今回は、作者の糸川一成さんに漫画のみどころはもちろん、自身の「食」に関する思い出も聞いてみました。
私自身がもともと料理や食が好きだったため、料理を扱った漫画を描いてみたいと思ったのがきっかけです。
といっても、この漫画は料理が軸になっているお話ではなく、あくまで描きたいのはキャラクターの人生。そこに料理がどう関わっていて、それがどう作用していくのかということを意識しているので、料理自体は専門的なものではなく、家庭でも作れるオーソドックスなものにしています。料理が専門的なものになればなるほど、料理そのものの紹介に比重をおかなければいけなくなり、キャラクターのストーリーが薄くなってしまうと思ったからです。
おいしそうに描くことはもちろん気をつけているのですが、いちばんは料理が漫画から浮かないようにすることですね。私の漫画はどちらかというと少女・女性系の絵なので、あんまり写実的でリアルな料理の絵を描いてしまうと、キャラクターの絵と料理の絵が分離してしまい、読んでいる途中で一瞬アレッとなってしまうかなと。
レシピや料理そのものが主役の漫画ならそれでもちろん良いのですが、「いただきます、のまえとあと」はあくまでキャラクターの物語が主役の漫画なので。
作品から浮きすぎず、おいしそうに描く。そこを意識するようにしています。
3話に登場する「ヅケまぐろ」ですね。主人公はきっとここで“ヅケまぐろ”が食べたいだろうなと思って軽い気持ちで描き始めたのですが、まぐろの刺身が200枚以上あって…刺身のツヤ感を出すだけの作業に2日間くらいかかりました。今後も刺身が登場した回は、私の手が死んでると思ってください(笑)。
毎日します。私は和食が好きなんですけど、夫はカレーやハンバーグといった洋食や麻婆豆腐などの中華が好きなので、洋食と和食と中華を日替わりで作る感じですね。自分一人の生活だと和食ばかりだったので、いろいろなものを作ろうと思えるようになったのはよかったなと思います。
おにぎりではないのですが、私の祖母がよく唐揚げを作ってくれていました。私の弟もいとこもその唐揚げが大好きで、祖母の家に行くと必ず作ってもらい食べ、お土産用にまた作ってもらって持って帰っていたくらい好きなんです。なぜだか何回レシピを聞いても、今にいたるまで母も叔母も誰もその味を再現できなくて…。
本当は漫画の中でも、そのすごくおいしいおばあちゃんの唐揚げのレシピを登場させたかったんですけど、前述のとおりレシピが未完成なので、今は断念して“唐揚げのおにぎり”という形にしました。もうかれこれ10年くらい配合を研究しているのですが、なかなかおばあちゃんの味にならないんですよね。でもちょっとずつ近づいてきてはいるので、いつかは完成させて漫画に載せられるように頑張りたいと思います。
冬になったら、旬の「かぶ」を使った料理に挑戦できたらと思います。でも、「この季節はこの料理をやりたい」とか「夏は野菜カレーを描こう」と考えていても、ネームを描いているうちに、そのときにキャラクターが食べたいだろうなと思うものやキャラクターが作りたいであろうものに結局なってしまうので…考えていたとおりのメニューが描けないことの方が多いですが、なるべく季節感のあるものをやりたいなと思っています。
クックパッドを見ていると「家族に喜ばれたレシピです」と書かれているものをよく見かけます。やはり、そういうふうに誰かに「おいしい」って言ってもらえてうれしかったから、「この料理って人に喜んでもらえるものなんだ、じゃあこのレシピを載せちゃおう!」というユーザーの方が多いんだな、と思いました。
私も同じなんです。ひとつひとつの料理や物語を通じてポジティブな気持ちを伝えられたらいいなと思って漫画を描いているので、この漫画を読んで少しでもそういう気持ちを受け取ってもらえたらうれしいです。
(TEXT:河野友美子)
10年前、母にお弁当ひとつだけを持たされ祖父に預けられたみつば。高校生になった彼女のもとを弟だという少年、そうまが母の遺骨を持ってやってきた。
近所の小説家志望の甲斐とともに納骨をすませたみつばは、同じ母親ごはんの記憶を持つそうまと暮らすことを決意するが……。母親を忘れてしまった姉と母親に残された弟、そして小説家志望の独身男、甲斐とのあったかおいしい毎日がはじまる!
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『ありんすじごく』 でモーニングゼロ2016年12月期奨励賞受賞。『ブラック企業新卒 座敷山童子の入社』 で第71回ちばてつや賞奨励賞受賞。『空男ソラダン』(全4巻)で「モーニング」初登場&初連載。