ハーブ料理のレジェンドとして、80歳を超えた今も鎌倉の家で庭仕事をしつつ素敵に暮らす北村光世さん。毎日の料理に気軽にハーブを使いながら、料理と暮らしを楽しむ秘訣をお伺いしました。
ハーブというと横文字なので、慣れないと少しとっつきにくくてハードルの高い印象があるかもしれません。でも日本にも昔から山椒や三つ葉があるのと同じで、薬味のひとつだと思えばぐっと親しみがわきますよね。
香りや薬効のある草=ハーブ、というくらいに考えて、気軽に使ってみれば良いんです。
また、どんな料理にどのハーブを合わせればいいのか…と迷うかもしれませんが、難しく考えなくても大丈夫。普段のお料理に香りをプラスしてみる感覚で、何にでも使ってしまいましょう。自分でいい香りだな、と思えばそれでOK。特別な料理のためにたまに使うのではなく、毎日何かしらにハーブを使ってみると良いですよ。和食なら、いつも大葉を使っているところをバジルやミントに替えてみたり、お味噌汁にハーブを入れてしまっても面白いです。
広いお庭がなくても、ハーブは鉢植えで元気に育ちます。むしろ鉢植えなら、陽当たりや水やりの状況に応じて鉢ごと移動できるので便利です。
よく、「枯らしてしまうので、自分はハーブを育てるのに向いていない」とおっしゃる方がいますが、そんなことは気にしないで。ハーブ以外の植物も枯れることがあるんですから(笑)
ハーブにもそれぞれ個性があり、逞しく育つ苗もあればちょっと弱いものもありますから、水加減など様子をみてあげてください。もし枯れてしまっても、くよくよせずまた育て直せば良いんです。そうして手元に自分のハーブがひと鉢あれば、躊躇せずどんどん使いまくれます。
初心者の方がまずハーブを始めてみるなら、ローズマリーが良いのではないでしょうか。一年中青い状態で元気に育ってくれるし、虫がつきにくいのも良いですね。年中使えて、摘んでも後からすぐにまた新しい芽が出てきます。
ローズマリーはお料理にも使いやすいだけでなく、枝ごとハーブティーにしても良いです。私はクコのみやナツメと一緒にカップに入れて熱湯を注いで飲んでいますが、滋養たっぷりで美味しいですよ。
そしてどんどん摘んで毎日のお料理に使ってみてください。摘んだ後は横からたくさん新芽が出てくるので、こんもりと茂らせることができます。
ローズマリーを使った、とっても簡単でおいしいひと皿をご紹介します。
こちらはオーブン焼きですが、フライパンでも手軽に作れるのでぜひトライしてみてください。
じゃがいもは茹でた後に冷蔵庫で冷やしておくと、身がしまって崩れにくくなります。私はまとめてたくさん茹でておき、使いたい分だけ冷蔵庫から出して活用しています。一度に使い切らない場合は、残りをまた別のハーブと和えてサラダにするのもおすすめです。
今年、予期せず始まったステイホームの生活ですが、実はハーブのおかげでとても充実したものになりました。遠くへの外出ができなくても、毎日庭に出てハーブの世話をし、その恵みで食卓や生活そのものを豊かにすることができています。
この生活の中で書いた新しい本に、私自身が生活の中で身につけたハーブとの暮らしの素晴らしさについてまとめました。
フレッシュな葉はおいしい料理に、乾燥した枝は香りの素としてお部屋に飾る、枯れてしまった枝は燻製チップに…と、最後まで使い切れるのもハーブの魅力。これが私のライフスタイルであり、ハーブとの暮らしは生きることそのものだな、と改めて実感しています。
私のようなひとり暮らしの方も、もちろんご家族でも、ハーブがひと鉢あれば家での時間がいっそう充実します。ぜひ気軽に初めてみてくださいね。
「四季折々のハーブと庭仕事の楽しみを、シンプルなお料理と共に紹介しています。各種ハーブの種類や使い方を図鑑のように眺められるし、読み物としてもレシピ本としても楽しんでいただけるのでは。
お庭のハーブの写真も満載なので、「今日のうちのお庭はこんな感じですよ〜」というリアルな雰囲気が伝わる1冊になったと思います。気張らずに活用しくださいね」(北村さん)
食文化研究家、ハーブ・オリーブオイル料理研究家。アメリカやメキシコで過ごした留学時代にハーブに出会って以降その魅力にどっぷりハマり、自身でハーブを育てる生活をスタート。以来ずっと、毎日の料理や生活にハーブを欠かさない日々を送る。
80歳を超えた現在も鎌倉の家でひとり暮らしをしつつ、四季折々の庭仕事を楽しんでいる。真っ赤なエプロンがお似合いで、お元気の秘訣ももちろんハーブです(ご自身談)。