冷蔵では2〜3日しか保たない食品を長持ちさせることができる「冷凍保存」は、いまやどんな家庭でも行っている保存法のひとつではないでしょうか? でも実は冷凍保存には、食品を良い状態で保存するポイントや、おいしさを保つ方法、そして、解凍をするときに気をつけたいポイントがたくさんあるんです。なんとなく冷凍していた方必見の「新常識」を、冷凍生活アドバイザーの西川 剛史さんに伺いました。
冷凍保存の一番のメリットは長期保存ですが、実はそれだけじゃないメリットもあるんだそう。
「保存と一口に言ってもそのメリットはいろいろな要素が含まれていて、食品ロスを減らすことだったり、それが節約につながったり、下味冷凍をすることで調理時間の時短になったりもしますよね。また、冷凍することで食材に起こる変化を楽しむこともできるので、それもメリットかと思います」(西川さん)
冷凍することで、変化を楽しめる食材には、具体的にどんなものがあるのでしょうか。
「おすすめの食材は豆腐や卵です。豆腐は冷凍することで弾力が出るので、それを活かして唐揚げにしたりそぼろにしたりして楽しめます。卵は、冷凍することで黄身が固くなりもっちりとした新たな食感を楽しめます。また、冷凍することで栄養がアップする食材としては、しじみやきのこ類があります。この2つは、冷凍することで繊維が壊れ、出汁がでやすくなるというメリットもあるんです。玉ねぎや長ねぎは、冷凍することで甘みが出やすくなるので、カレーなどに使うたまねぎは冷凍するのがおすすめですね」(西川さん)
みなさんの頭の中には、なんとなく冷凍に向いている食材と、向いていない食材というのがあると思います。豆腐や卵を冷凍して食べておいしいの?と疑問を覚えた方もいるかもしれません。
「豆腐や卵は、元の状態には戻らないことを理由に冷凍できないと言われてきましたが、変わる食感を活かすということで冷凍できる部類に入りました。豆腐や卵だけではなく、こんにゃくも冷凍して解凍することで、こりこりした食感が楽しめるんです」(西川さん)
なるほど。元々の状態と異なってしまうので、冷凍できないという認識になってしまっていたんですね。では逆に、「これは絶対に冷凍には向いていない」という食材はあるのでしょうか。
「正直、冷凍に絶対に向いていない食材はないですよね(笑)。食べ方を工夫すれば、どんな食材でも冷凍することができます。サラダに使う野菜などは冷凍に向いていないイメージがあるかもしれませんが、レタスはスープやチャーハンに入れるなど加熱して使うのであれば冷凍しても大丈夫です。冷凍したことが活かせる食べ方ができる食材があれば、なんでも冷凍可能です」(西川さん)
使い方さえ心得れば良いんですね! 冷凍後の変化を楽しむ食べ方を知ることで、冷凍の幅が広がりそうです。
冷凍保存した食材をおいしく食べるためには、解凍方法もとても重要なんだそう。食材や冷凍方法別の適した解凍方法とはどんなものがあるのかも聞いてみました。
「せっかくいろいろ気をつけて正しく冷凍をしても、間違った解凍方法で食材が台無しになってしまうことがあります。みなさんが思っている以上に解凍の仕方が大事だということを知ってほしいです。ただ、食材によっても、調理方法によっても解凍方法は変わるので、一言で「これが正しい解凍方法です」と言うことは難しいんですよね」(西川さん)
そうですよね…できれば代表的な解凍方法をざっくりとでも伺えると嬉しいのですが。
「いろいろと方法はあるのですが、簡単に言うと、野菜は「加熱解凍」、お肉や魚は「氷水解凍」「流水解凍」がおすすめです。トマトやフルーツなどは「凍ったまま食べる」という方法もあります。トマトは、しっかり解凍するとドロドロになってしまいますが、半解凍や凍った状態で食べるとおいしいです。凍った野菜をそうめんのトッピングにしたり、冷や汁の具として凍った野菜を入れるというのもおすすめです。このほかに、「冷蔵庫解凍」「常温解凍」と言った解凍方法もあるので、解凍する食材に適した方法で解凍してみてください」(西川さん)
凍った状態で食べるというのはなかなか自分では思いつきませんでした。ちなみに「流水解凍」は水道代がもったいない気がして少し敬遠していたのですが、良い方法はありますでしょうか?
「そもそも凍らせる時に薄く冷凍するのがポイントですね。そうすると、物にもよりますが10〜15分くらいで解凍できるかと思います」(西川さん)
ついつい保存袋にパンパンに食材を入れてしまいがちなので、今度から薄く冷凍するように心がけます!
普通、おひたしは野菜をゆでて調理しますが、冷凍した野菜をめんつゆをかけて解凍する「だし解凍」という調理法を教えていただきました。今回は、野菜の栄養を逃さないだけでなく、苦味が和らいで食べやすくなるピーマンのレシピをご紹介します。
まず、ピーマンを冷凍しましょう。冷凍の仕方にもポイントがあります。
ピーマン…4個
1.ピーマンは、へたと種を除いて、3mm幅の細切りにする。
2.保存袋に、1のピーマンを並べて入れて空気を抜き、なるべく薄く平らに広げて冷凍する。
冷凍ピーマン…4個分
めんつゆ(ストレート)…200ml
かつおぶし…適量
ちりめんじゃこ…適量
1.冷凍ピーマンの保存袋を開け、めんつゆ、かつおぶし、ちりめんじゃこを入れる。
2.1の保存袋の空気をしっかり抜いてジッパーを閉じ、ピーマン全体がめんつゆにつかるようにして皿の上におき、室温で10分解凍する。
3.皿に盛る。
確かに生のピーマンと比べると青臭さや苦味がマイルドに感じます。シャキシャキとした食感も楽しめる今の時期にぴったりの副菜ですね。本の中には他にも小松菜やナスを使ったレシピもあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
いろいろと冷凍保存の基本やワザを教えていただきましたが、最後に食材を冷凍する際に一番大事なことを教えていただきました。
「実は冷凍保存で一番大事なポイントは、鮮度がよくておいしい状態で冷凍するということなんです。これが冷凍のコツの8割を占めているといってもいいです。賞味期限が近くなったから冷凍するというのは、食材を無駄にしないという意味ではもちろんいいことなのですが、冷凍するときの状態には気をつけてください」(西川さん)
「賞味期限以内に食べきれなさそう」とギリギリで冷凍庫に移し替えているという方は耳が痛いですよね。買ってきたものはなるべく早いタイミングで正しく冷凍保存することがまずは冷凍保存マスターへの第一歩と言えそうです。他にも気をつけるべきことはありますか?
「冷凍の敵は空気。空気があるとどんどん酸化してしまうので、保存する際には、保存袋に入れた時にしっかり空気を抜きましょう。また、1度に使いきれる量で小分けに冷凍することも食材を無駄にしないポイントです。冷蔵庫に入っている食材は頭に入っている方が多いのですが、冷凍庫に入れているものは忘れがち。しっかり把握して、1ヶ月を目安に使いきることも心がけてください」(西川さん)
今までなんとなく冷凍保存をしていましたが、正しい冷凍保存の方法や解凍法を知ることで、より長くおいしく食材を楽しむことができるとわかりました。みなさんもこれを機に「冷凍保存の新常識」を取り入れてみてくださいね。
(TEXT:上原かほり)
今回ご紹介した西川さんの冷凍術がぎゅっと詰まった著書が発売中です。 基本の冷凍・解凍テクニックをわかりやすく解説するほか、肉・魚介・野菜・フルーツ・薬味・主食など116もの食材の冷凍術を紹介。また、下味冷凍、だし解凍を使ったかんたん&絶品レシピもたくさん収録しています。
「冷凍レシピということをしっかり意識して作りました。下味冷凍だけでなく「冷凍ってこういう使い方があるんだ」という発見がたくさんある内容になっているので、ぜひそれを知っていただきたいです」(西川さん)
もっと早く知っていればよかった! ――そう思わずにはいられない新常識がたくさん掲載されています。この本があれば、冷凍に関する知識をたっぷり吸収することができそうです!
「それぞれにテーマがあるので、ただ冷凍するレシピを寄せ集めたのではなく、冷凍保存した食材を使った量の幅が広がる内容になっていると思います」(西川さん) 下味冷凍もかんたんとしっかりに分かれていて、いろいろな料理にアレンジできるのが嬉しいです。一家に一冊、辞典的に置いておきたいですね。
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