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コラム

わたしの好きな映画『アメリ』に出てくる、クリームブリュレのお話【おいしい思い出 vol.20】

クックパッド初代編集長であり、自他共に認める料理好き・小竹貴子のエッセイ連載。誰にでもある小さな料理の思い出たちを紹介していきます。日常の何でもないひとコマが、いつか忘れられない記憶となる。毎日の料理が楽しくなる、ほっこりエピソードをどうぞ♪

映画に憧れて食べたクリームブリュレ。でも本当に好きなのは…

『アメリ』は、パリ・モンマルトルにあるカフェ「カフェ・デ・ドゥ・ムーラン」で働く主人公アメリの日常を描く、キュートなラブストーリー。2001年に公開され、日本でもとても話題になったので観た方も多いと思います。

映画の中できっと多くの人が覚えているのが、主人公アメリがクリームブリュレの表面のパリパリをスプーンで割ることが好きというシーン。スプーンを片手に、にこっと微笑む様子がとってもキュート。映画を観た人なら、間違いなく表面パリパリのクリームブリュレといっしょにお決まりのポーズをしたくなりますよね。

そうそう、わたしも何度もした記憶があります。当時はまだクリームブリュレを出すのはおしゃれなカフェぐらいだったからこそ、食べられるお店を雑誌で探し、仕事を終えてから気の合う女友だちとカフェで、クリームブリュレと珈琲で、お決まりのアメリのポーズから、たわいもない話を夜通ししたのは、今でも光景が目に浮かぶ懐かしい思い出です。

でもあのときも実は感じていたんです。わたしが本当に好きなのはクリームブリュレではなく普通のプリン、さらに言うと手作り感満載の〝す〟がはいったようなちょっとダサいプリン。あー、言ってしまいました。

映画の話に戻りますが、『アメリ』のなかでもう一つわたしが好きなところがあります。

たくさんの登場人物を〝好きなもの、嫌いなもの〟で紹介していくシーン。どんな性格なのかとか、どんな生い立ちなのかよりも、その人の人柄が見えた気がするんです。

この映画を観てから、わたしは初対面の方にあったときに「好きなもの、嫌いなもの教えて」と聞くことがたまにあるんです。この質問、なんとなくその人のちょっとプライベートを覗き込んだ気持ちになるので、ちょっと相手と仲良くなりたちときにはおすすめしますよ。あ、合コンとかね。

ちなみに主人公アメリが好きなものとして紹介されているのはこの3つ。
・クリームブリュレの表面のパリパリをスプーンで割ること
・石を投げて水切りをすること
・豆袋の中に手を突っ込むこと

そして、わたしはどうかと聞かれるとこんな感じです。
・カラメルたっぷりの、すが入った固めプリン
・眠るときにパジャマの袖を触りながら寝ること
・頬杖をつきながら、ぼーっとすること

嫌いなのは、適当に盛り付けられたごはん。あとは秘密。

クリームブリュレではなく固めプリンが好きなのは、論理的に説明は難しいのです。もう考えても理由がわからなくてとにかく好きなのです。憧れのアメリ気分を味わいたくとも。

これほど好きなのは、前世も好きでそれだけは生まれ変わりのわたしに埋め込んだものに違いない。そんなことを思っていたりもします。

映画『アメリ』が好きだけど、プリンはやっぱり固めだよね。なんだか少し変な見方をしてしまったので、わたしの中で思い出に残った映画のひとつになってしまいました。

わたしが好きな固めのプリンレシピ

映画『アメリ』/(C)2001 UGC IMAGES-TAPIOCA FILMS-FRANCE 3 CINEMA-MMC INDEPENDENT-Tous droits reserves

小竹貴子

クックパッド株式会社コーポレートブランディング本部長。1972年、石川県金沢市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオを経て、2004年に有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年に『日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010』を受賞。2012年、同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰、現職。現在、クックパッドニュースにて『おいしい思い出』、ForbesJAPANにて『それ、「食」で解決できます!』を連載中。また、フードエディターとして個人でも活動を行っている。

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