「料理、お菓子作りの経験は全くなかったんです」と語るげんきスイーツさん。そんな彼のYouTubeチャンネル「げんきスイーツ/Genki Sweets」は、開設から1年4か月で登録者数7.9万人(2021.2.4現在)という人気チャンネルです。動画リストに並ぶスイーツの数々を見ると、とても未経験者が作ったとは思えない仕上がりスイーツばかり。今回は、そんなげんきスイーツさんに、初心者でも失敗しないスイーツの作り方のポイントを聞きました。
げんきスイーツさんが、スイーツ専門のYouTubeチャンネルを始めたのは2019年9月。大阪から上京し、知り合いが一人もいない生活を送る中で、何か趣味を見つけようとはじめたのがお菓子作りなんだそう。
「自分が一番しなさそうなことを趣味にしたいなといろいろ考えた結果、イメージから真逆のお菓子作りに挑戦してみることにしたんです。せっかく作るなら記録として残したいと思い、YouTubeにアップすることにしました。友達もいないし、一人で作って満足というのもさみしいなと(笑)」(げんきスイーツさん)
実家は料理屋さんというげんきスイーツさんですが、お菓子作りをはじめるまで包丁を持ったことは一度もなかったというから驚きです。そんなげんきスイーツさんが初めて作ったお菓子は、YouTubeチャンネルに最初に投稿された「ガトーショコラ」。げんきスイーツさんにとって、ガトーショコラはお菓子の王道だったんだとか。
はじめの頃の動画を見てみると、材料を買うのにも苦労されていたり、ふるいをかけずに粉を入れてしまったりと、ところどころに“初めての挑戦感”が出ています。だからこそ、お菓子作り初心者の方にとってもわかりやすい動画になっているのかもしれません。
おうち時間が増えた今、お菓子作りやパン作りなど、これまで作ったことのない料理に挑戦する人が増えています。そんな方に、げんきスイーツさんがおすすめするレシピを伺ってみました!
「お菓子作りをしたことがない人が初めて挑戦するなら、混ぜて冷やして完成するものがおすすめです。とにかく簡単で失敗することもほぼありません。その次は、クッキーや焼き菓子に挑戦するという感じでステップを踏むといいと思います。僕もそうだったんですが、『お菓子を作ってみよう!』という方って、いきなり難易度の高いものに挑戦しがちなんです。それで失敗すると、向いていないんだ…と思ってしまうので、まずは簡単なものから挑戦して、『おいしい!』と思ったら、どんどん作ることが楽しくなっていくはずです」(げんきスイーツさん)
成功体験を積んで、お菓子作りの楽しさを知ってほしいと語る、げんきスイーツさん。YouTubeチャンネルで紹介しているレシピの中で、特に初心者の方におすすめのスイーツを聞きました。
「僕が紹介している“混ぜて冷やすだけ”のスイーツは、どれも失敗しないレシピになっています。中でも、材料3つでできる「生チョコタルト」はおすすめ。今回の本の表紙になっている「濃厚プリンタルト」はタルト生地だけは焼かないといけないのですが、市販のクッキーを砕いて簡単に作れるので、ぜひチャレンジしてみてほしいです」(げんきスイーツさん)
少し工程は多いですが、げんきスイーツさんの動画は手元も見やすく、説明も丁寧なので、初心者の方も安心して挑戦できますよ。
クッキー…約250g
卵黄…4個分
牛乳…1と1/4カップ
生クリーム… 1/2カップ
練乳…あれば適量
グラニュー糖…100g
ゼラチン(粉)…5g
バニラエッセンス…適量
下準備:オーブンは170°Cに予熱する
1.ビニール袋にクッキーを入れ、めん棒でたたいて細かく砕く。
2.ボウルに移し、卵黄1個分、牛乳1/4カップ、バニラエッセンスを入れて手で混ぜる。
3.生地を取り出し、上にラップをかけ、めん棒で約15cm×15cmにのばす。
4.生地にケーキ型を押し当て、円形に生地を抜く。残りの生地は再び丸めておく。
5.型の底に4の円形の生地を敷く。丸めた生地をラップで包み、めん棒で7~8mm厚さにのばす。
6.5でのばした生地を型の大きさに合わせて切り、側面に沿うように入れる。手で押してすき間がないようにする。
7.冷蔵室で約30分ねかせ、型から出ている余分な生地をカットする。170°Cに予熱したオーブンで約15分焼く。
8.ボウルに卵黄3個分、グラニュー糖50gを入れて泡立て器で混ぜる。
9.鍋に牛乳1カップ、生クリームを入れて温め、バニラエッセンス、練乳を加える。沸騰したら火を止め、8のボウルに入れ、泡立て器で混ぜる。
10.ゼラチンと水大さじ2を電子レンジで30秒加熱し、9のボウルに加えて混ぜる。
11.茶こしでこしながら7のタルト生地に流し入れ、冷蔵室で約5時間冷やす。
12.鍋にグラニュー糖50g、水20mlを入れて火にかけ、あめ色になったら火を止める。
13.好みのカラメルソースに仕上げる。
14.11のタルトにカラメルソースをかける。
お菓子作りというと失敗がつきもの。中でも初心者にありがちな失敗について、げんきスイーツさんに伺いました。
「お菓子作りの中で失敗するポイントはいくつかあるのですが、どの失敗も結局のところ、レシピをアレンジしたことによって起こることが多いんです。僕もそうだったんですが、初心者あるあるで何かを足したり、差し引いたりすると、そのちょっとのアレンジが失敗のもとになります。なので、絶対守るべきポイントとしては、分量をアレンジしないことです」(げんきスイーツさん)
慣れてきたとしても、分量や工程をアレンジすれば失敗するのがスイーツの難しさです。さらに細かく、お菓子作りの代表的な工程ごとにありがちな失敗について伺いました。
生地が膨らまない原因としては、分量を間違えた、アレンジしたということの他に、混ぜ方も原因になります。また、レシピによっては室温によって膨らまないということもあります。温度管理まで考えると、ハードルが高くなってしまうのですが、暑すぎず寒すぎずの温度が目安になります。
しっかり固めた状態に仕上げたい場合は、ゼラチンが冷めないうちに混ぜることがポイントです。作りながら工程を確認しているともたついてしまったりして、ベストなタイミングを逃してしまうことになるので、始める前にある程度の手順はしっかり把握して、手順をしっかり守るというのが大事です。材料を数回に分けて混ぜると書いてあるのに一気に入れたり、ふるいにかけるを怠ったりすると失敗の原因になります。
焦げるというのは、なかなか難しくて使っているオーブンのクセだったり、寒い部屋でオーブンを使うと温度が変わってきたりするので、いきなりスポンジを焼いたりするよりは、クッキーのような、多少焼きすぎても失敗にならないもので試作をして、オーブンのクセを理解していくのがいいと思います。
もちろん作るお菓子のメニューやレシピによって、細かな失敗の原因は異なりますが、初心者の方は、まずはげんきスイーツさんのアドバイスを肝に銘じてみるだけでもよさそうです。
げんきスイーツさんが、12月に発売した初めてのレシピ本のタイトルは、『うますぎて、100万人のハートをわしづかみ! 失敗から生まれた 極うまスイーツ』。タイトルの通り、これまでのお菓子作りの中でのたくさんの失敗をされたそうです。
「数えきれないくらい失敗してきました。シュークリームを作ったときは、生地が膨らまずに焦げた饅頭みたいなものがたくさん焼けました(笑)。これまでで一番失敗したのはロールケーキです。生地はうまく焼けるんだけど、巻くのが本当に難しくて途中で折れてしまったり、破けてしまったり……。5回目で成功したんですけど、4回は全部同じ失敗でした」(げんきスイーツさん)
そんな失敗経験の中でも、特に記憶に残っているものはなんでしょうか。
「『バーチ・ディ・ダーマ』というイタリアのお菓子があるんですが、結構油分が多いスイーツなんです。生地を手で丸めてから丸い状態で焼くんですが、作った丸が大きすぎても小さすぎてもよくないんです。オーブンに20個くらい並べて焼いたら、全部くっついて真っ平な1枚の生地が焼きあがったことがあります(笑)。失敗を重ねて、10時間以上かけて作ったレシピは、その通りに作ってもらえばきれいに作れます!」(げんきスイーツさん)
笑顔で失敗談を語ってくれた、げんきスイーツさん。お菓子作りを続ける上でパワーになっているものはなんでしょうか。
「自分が作って食べたときの「こんなの作れた!」という達成感ですね。おいしいだけじゃなくて、食感を良い感じにするにはどうすればいいかとか、そういうことを考えるのも楽しみの一つです。お菓子作りにハマる理由は奥深さと、オーブンで焼いているときの匂いですね。お菓子が焼きあがる香りの中で、次のお菓子を考えるのも楽しいです」(げんきスイーツさん)
(TEXT:上原かほり)
「この本は、お菓子作り初心者方に向けて作りました。僕にとっても初めての書籍ということもあり、お菓子作りをはじめてから今までの自信作を厳選して掲載しています。そのまま作ってもらえば大丈夫! 失敗しにくいレシピばかりです。この本を通して、お菓子を作ったことがない人にお菓子作りの楽しさを伝えていけたらいいなと思っています。僕のこの本を見たことをきっかけに、将来パティシエになりたいと思ったりする人がいたらうれしいなと思っています」(げんきスイーツさん)