1月22日のカレーの日に、「スパイス」にまつわるレシピ本を発売された印度カリー子さん、「カレー」をテーマにした小説を発売された幸村しゅうさん。そんなカレーに思い入れの深いお二人に、スパイスカレーにまつわる魅力をお伺いしました。前編は「スパイスカレーの魅力」、後編となる今回は「初心者の方向けのスパイスカレー作りのコツ」についてお届けします。
――初心者がスパイスカレーを作るとき、「ここさえ押さえておけば失敗しない!」というコツがあれば教えてください。
カリー子:失敗しないためには、玉ねぎをしっかり炒めること。これはスパイスより重要です。あとは塩味です。塩でしっかり味を調えること。食べてみて、ぼんやりした味付けであまり…という方は、塩不足な方が多いです。
幸村:味見をして、「なんだかよくわからないな」というときは、本当に塩なんですよね。味が決まらないな、というときにバターやコンソメ、ソースなどを入れて味を調えようとしてしまいがちなのですが、これはおすすめできません! スパイスカレーの場合は、じたばたしないで塩に頼るのが一番です。
カリー子:そう! 塩なんです!! ルーで作るカレーの場合は、煮込んで、煮込んで、全ての味を調和させて完成させます。ですが、スパイスカレーはスパイスの香りと素材の味以外は際立たせてはいけないんです。
注意してほしいのは、塩を足しすぎてしょっぱくなってしまうこと。塩は、溶けるまでに時間がかかるので、ちょっと足したらよく混ぜて、1分待ってから味見をします。まだ味が足りなかったら、また塩を足して、1分待って味見です。塩が重要と初心者の方に言っていると、20人に1人くらいはとんでもなくしょっぱいものが完成してしまうのですが、それは潔く諦めて、カレーの佃煮のように楽しんでみてください(笑)。
――これからスパイスカレーに挑戦しようという方たちへメッセージをお願いします。
幸村:スパイスを買ってきて、そのまま味見をしたことがありますが、そのまま食べておいしいいと思うものは一つもないんです(笑)。やっぱり、熱を加えたり、油や塩を加えることで、スパイスはおいしくなっていきます。1つずつではおいしくないスパイスを、ミックスして炒めることで、なぜか非常においしくなるというミラクルが起こるんです。ぜひ、そのミラクルを体験してみてください。
カリー子:私は、カレーの食べ歩きもしますが、一番好きなのは自分の作ったカレーです。それはやはり、作る工程が1番楽しいからです。私は、おつとめ品の棚に置いてある、誰も手に取らないような賞味期限間近のしなびた食材を買ってきて、スパイスを混ぜてシンデレラのようにおいしいカレーに変化させるのが好きです。スパイスカレーは楽しみながら、おいしいものが作れるので、ぜひ、試してみてください。
――お二人は、おうち時間が増えている今、書籍をどのように読んでもらいたいと思いますか?
幸村:『私のカレーを食べてください』は、好きなことを見つけたら、それに向かって一直線に走り出し、閉塞感を打ち破るような希望の物語にしたいと思って書きました。おうち時間が増えた今、これまであまり小説を読む時間がなかったという方たちにも、ぜひこのタイミングで小説を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
カリー子:『一肉一菜スパイス弁当 毎日食べたいおかずと、冷めてもおいしいカレー』は、スパイスが本当に大好きでお弁当にまでスパイスを持っていきたいという方はもちろん大歓迎ですし、家でごはんを食べる機会が増えたことで、毎日の食事がマンネリ化している方にもおすすめです。
――最後にそれぞれの著書の中で、おすすめしたいポイントがあれば教えてください。
幸村:私は、料理が苦手なので、レシピ本を見て「◯g」と書いてあるだけでハードルが高く感じてしまいます。そんな私が圧倒的に大好きだなと思ったのが、『一肉一菜スパイス弁当 毎日食べたいおかずと、冷めてもおいしいカレー』の中で紹介されている「サラダキチン」。今、サラダチキンがマイブームで、欠かせないんです。ただ、サラダチキンって、味に変化がなく、すぐ飽きてしまうのが悩みでした。カリー子さんのレシピだと、スパイスを使っているので味に変化も出るし、何よりとってもおいしいです!
カリー子:スパイスは、マンネリの救世主なのでおすすめです! 飽きずに工夫して食べた方が、食事満足度があがりますよね。
幸村:塩と砂糖だけのサラダチキンのレシピはたくさんあるけど、それだけだと飽きちゃうので、サラダチキンにスパイスを使うというのはすごく良いですね。
カリー子:ありがとうございます。スパイスのことになると話が止まりません(笑)。幸村さんの小説の主人公も私も、カレーという共通項で、本当に人生が変わるくらい好きなものに出会ってしまい、突っ走って生きていく姿が印象的でした。
なので、読んでいて自分と重なるところがすごくたくさんありました。本当に好きなものに出会える人生ってすごくラッキーだと思うんです。もちろん、出会っていなくても幸せに生きていけるんですが、出会ったら確実に人生が変わるということを表現している小説だと思います。
――お忙しい中、お時間ありがとうございました!
(TEXT:上原かほり)
古びた喫茶店の装いながら、本格的なスパイスカレーを出す「麝香猫」。そこで働く山崎成美は調理師学校に通う19歳。成美は幼い頃に両親が離婚、育ててくれた祖母も失踪してしまい、天涯孤独の身であった。 そんな彼女の運命を変えたのは、小学校の先生が作ってくれた一杯のカレーライス。成美はその味を自分でも作りたい一心で調理を始め、カレーの奥深さに戸惑いながらも、ようやくきっかけを掴みはじめていた。しかし突然、ある事情から「麝香猫」が店を閉めることになってしまい……。 理想のカレーを追い求める少女と人々の人情が織りなす、「おいしい×青春×お仕事」小説!
映画助監督、介護予防デイサービス兼鍼灸治療院の経営などを経て、小説を書き始める。
2020年、『私のカレーを食べてください』で第2回「日本おいしい小説大賞」を受賞する。
大人気スパイス料理研究家・印度カリー子さんによる初のお弁当本です。一見「難しい」と思われるかもしれないスパイス弁当ですが、実はとっても簡単! 保存もきくので作りおきし、朝は「詰めるだけ」でオッケーです。本書では、「肉のおかず、魚のおかず、野菜・豆・卵のおかず」のレシピを豊富に掲載しているほか、マフィンやおにぎりなどのクイックランチも提案。多様なライフスタイルに対応するよう、料理のバリエーションも多彩に紹介しています。毎日が楽しくなるようなスパイス弁当ライフをぜひ始めてみてくださいね。
スパイス初心者のための専門店 香林館(株)代表取締役。スパイスセットの商品開発・販売をする他、大手企業とレシピ開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。2021年1月現在東京大学大学院で食品科学の観点から香辛料の研究中。1996年11月生まれ、仙台出身。