【まいにちごはんの撮り方レッスン vol.5】暗くなってしまったり、うまく質感が出せなかったり、料理の写真を撮るのは意外と難しいもの。この連載では、料理写真家・田部信子さんに「おいしい料理写真」の撮り方をレクチャーしていただきます。コツをマスターして、SNSやブログにアップする料理写真をぐっと魅力的にしてみませんか?
随分暑くなってきましたね。こんな暑い日はさっぱりしたものが食べたくなります。 今回はそうめんを夏野菜と一緒に撮れる一皿でご説明します。
さて、前回の記事では、下の「撮り方のステップ」の(2)についてお話ししました。ご自宅の「どこ」で撮るかが決まったら、次は(3)どこから(高さ)から撮るか、考えてみましょう。
(1)イメージを決める
(2)どこで撮るかを決める(どんな光を使うか)
(3)どこから撮るかを決める(アングル、カメラの位置)
(4)どのくらいの範囲を写すのか決める(レンズを選ぶ)
(5)構図を決める
(6)スタイリングを決める
(7)明るさと色の調整
(8)主役にピントを合わせて撮影
よく「こういう料理はどこから撮るのが正しいですか?」という質問を受けます。
正直に言うと、この料理はこの位置から撮るのが正しい!という公式はありません。 例えば同じパンケーキでも、お皿にクリームやフルーツなどと一緒に盛り付けたものであれば、上から撮っても格好いいですよね。でも、メープルシロップをかけているシーンを捉えたいのであれば、斜めから撮るなど、もっと低い位置から撮った方がメープルシロップがパンケーキに落ちてくるところが良く見えます。このように、自分が「この料理をどう写したいのか」で、撮る高さは変わってくると思うのです。
1番良いのは、その料理をじっくり見て、どの角度から見ると一番おいしそうに見えるのか、ということをご自身で考えることだと思います。
ただ、そうは言っても、何かしらのガイドがあった方が分かりやすいと思うので、今回は撮る位置の目安を3種類と、それぞれの位置でどのような効果があるのか、というところをご説明します。
どこの高さから撮るか、を写真用語では「アングル」と言います。
アングルには大きく分けて3種類あります。
(A)真上から撮る (B)斜めから撮る (C)横から撮る、の3つです。
ここ数年よく見るこのアングル。これを俯瞰(真上からの場合は真俯瞰)と言います。 このアングルの効果は、
・デザイン的な印象の写真になる
・テーブルコーディネート全体を同じ距離感で写すことができる
というものです。食卓に色々な料理が並んだ写真など、雑誌でよく目にするのではないでしょうか。 ただ、ある程度高い位置から撮影する必要があるので、テーブルの高さによっては脚立に乗らなければいけないなど、撮るのが大変な場合もあります。できるだけ低いテーブルにセッティングをすれば、楽に撮ることができます。 また、シーリングライトなど、天井に光源がある場合は順光となって自分の影が写真に入ってしまうので、天井の電気は消す、光の向きを半逆光にするなど気をつけましょう。
料理写真では、一番多いのがこのアングルです。このアングルの効果は、
・いつも食べる時に見ているのと同じ角度なので、おいしそう!という感じが伝わりやすい
・後ろがボケる場合は、背景に物語を語るような小物を置いてストーリーを作れる
というものです。
素材に寄ることで、更に「食べたい!」という感覚を刺激できます。 アップにするとより味が伝わりやすくなると思います。
普段の生活ではなかなか見ないアングルなので、ちょっと目をひく写真になります。 このアングルの効果は、
・高さが見せられる
・透き通ったものなどは、透過光(透ける光)で透明感を演出できる
というものです。 ただし、カメラが真横を向くので背景がしっかり入ります。背景に窓の抜けを持ってくる、雰囲気のある壁を写すなど、背景をどうするかをまず考えてから撮りましょう。
このように綺麗な色の飲み物の場合は、低い位置から撮ると、後ろから来る光が透過して(透けて)綺麗に写ります。
まず大事なことは、撮影する料理がどこから見たら一番おいしそうに見えるのか、この料理をどう見せたいのか、ということを考えてから撮影に望むことです。撮影の前に考える、という時間を是非作ってみてください。
次回はレンズによる見え方の違いについてお話します。お楽しみに。
横浜市出身。青山学院大学文学部英米文学科卒業。外資系IT企業のSE職を経て、カメラマンへ転身。広告、雑誌、ブライダルの撮影を行う。双子出産後、カメラ教室で約3000人の生徒さんに写真の撮り方を教える。2018年より、料理写真家として活動中。