【まいにちごはんの撮り方レッスン vol.6】暗くなってしまったり、うまく質感が出せなかったり、料理の写真を撮るのは意外と難しいもの。この連載では、料理写真家・田部信子さんに「おいしい料理写真」の撮り方をレクチャーしていただきます。コツをマスターして、SNSやブログにアップする料理写真をぐっと魅力的にしてみませんか?
「スタイリングが苦手なんです」
写真を教えていると、よく聞くセリフです。
でも、そう言われて写真を見てみると、実はスタイリングというより、もっと別なところに原因があることが多いのです。
それは、「写真がゆがんでいる」ということ。写真のゆがみを取れば、スタイリングはそのままでも、意外に写真はまとまって見えるかもしれない。今回はそのお話をしていきます。
「撮り方のステップ(4)」のお話です。
(1)イメージを決める
(2)どこで撮るかを決める(どんな光を使うか)
(3)どこから撮るかを決める(アングル、カメラの位置)
(4)どのくらいの範囲を写すのか決める(レンズを選ぶ)
(5)構図を決める
(6)スタイリングを決める
(7)明るさと色の調整
(8)主役にピントを合わせて撮影
料理の写真を撮っていると、背景に入れたくない部屋の様子だったり、おてふきやスマホなど、机の上の余分なものが入ってしまうことはないでしょうか? 今まで多くの方に写真の撮り方を教えていて、よく見るのが下のような写真です。なんだか画面がスカスカしてしまって絵にならない。それが、冒頭でお話した「スタイリングが苦手」という結論につながってしまう印象です。
しかし、この同じ料理を、レンズをズームして撮ると、こうなります。
スタイリングはほぼ変えていませんが、上の写真と比べて、写真としてまとまりが出ています。つまり、この場合の「うまく撮れない」原因は、スタイリングではなく「ズーム」で解決できるんです。
では、なぜズームするとまとまって見えるのでしょうか? それには3つ理由があります。
ズームをすると
(A)背景が少なくなるので、余分なものが入りづらい
(B)前後に並べた2枚のお皿のサイズが自然に写る
(C)ゆがみが出ないので、ものの形がきちんと写る
となります。
では、先程の写真を比較しながら1つずつ見ていきましょう。
(A)背景が少なくなるので、余分なものが入りづらい
左のズームしていない方の写真は、テーブル向こう側まで写っています。一方ズームした右の写真はテーブルの奥の方は入っていません。つまり、ズームすると「写り込む背景が少なくなる」のです。背景が少なくてすむ、ということは余計なものが入り込まない、スタイリングするべき場所が少なくて済む、ということです。テーブルクロスも特大なものを用意しなくても良いですし、スペースを埋めるために小物を色々用意する必要もありません。これは料理写真のスタイリングをする際にとても助かります。
(B)遠近感がつきにくいので、2枚のお皿が同じ大きさで写せる
今度は、お皿の大きさに注目してみましょう。上の写真では同じお皿を2枚使っています。しかし、左の写真では、前のお皿と後ろのお皿で大きさが違って見えないでしょうか?一方、ズームした方ではあまり大きさの差は感じません。ズームをすることで、違和感のない写真になっています。
(C)ゆがみが出ないので、ものの形がきちんと写る
次の写真を見てください。
左の写真のペットボトル、少しゆがんで見えないでしょうか?一方、右のペットボトルは本物に近い形で写っています。ズームしないとモノの形がゆがんでしまい、そこがまた違和感の原因にもなります。 スマートフォンの場合、ズームすると画質が少し落ちますが、最近のスマートフォンは性能が良くなってきているので、それほど気にしないで良いのでは?と思います。 また、レンズが複数ついているスマートフォンの場合、望遠レンズがついていて「ポートレートモード」があれば、そのレンズを使用するとより綺麗に撮れます。
一眼レフカメラやミラーレスカメラをお持ちの方であれば、レンズを50mm以上の数字に合わせることで、ゆがみのない写真が撮れるのでやってみてください。
ここまで、ズームすることで生まれる写真の違いについて書きましたが、最後は撮り方についてご説明します。
いつも撮っている感覚でズームすると、料理が拡大されてびっくりする方が多くいらっしゃいます。でも、その場合は、ズームはそのままで、ご自分がさがってください。上の写真で分かる通り、ズームなしの場合は、かなりカメラと料理は近いですが、ズームありの場合はかなり離れます。でも、それが正しい料理の撮り方なので、是非体感して覚えてください。 ポイントは「まずはズームして、それから離れる」これが料理写真撮影の鉄則です。是非やってみてください。
いよいよ次回は構図についてご説明します。お楽しみに。
横浜市出身。青山学院大学文学部英米文学科卒業。外資系IT企業のSE職を経て、カメラマンへ転身。広告、雑誌、ブライダルの撮影を行う。双子出産後、カメラ教室で約3000人の生徒さんに写真の撮り方を教える。2018年より、料理写真家として活動中。