【元気をもらえるスパイスレシピvol.4】「スパイスカレー」や「ビリヤニ」をはじめ、スパイスを使った料理の人気がじわじわと高まっています。「スパイスはおくすり」と妄信する馬塲悠衣さんによる電子書籍『インドには行ったことないけど、日々カレーを作っています。』より、奥が深いスパイスの話とレシピを一部抜粋してご紹介します。第4回は「ギーチキンカレー」です。
私が初めて「バターチキンカレー」を食べたのは、赤坂にあったインド宮廷料理のレストラン『モティ』。宮廷を思わせる豪華な店内で「きっとマハラジャは毎日こんなところでこんな食事をしているに違いない」と妄想していた。
当時インド料理屋さんに行くと、厨房にいる調理人たちが私を見にくることがよく起こった。濃いめの顔立ちで地黒だったせいなのか。友人たちは「インドの人と間違われているんじゃない? 苗字も『ババ』だし、きっと前世はインド人だったんだよー!」といつも揶揄していた(baba:文脈にもよるが、インド語圏においては父や目上の人に対して使われる言葉だそうだ)。
そんな友人たちとインド料理屋さんに行くと、必ず誰かが頼むのが「バターチキンカレー」。友人のお裾分けをもらってバターチキンカレーを食べ(私はいつも違うカレーを頼んでいた)、目をつぶって味わいながら「おいしいなぁ」とインドへの妄想をふくらませることもしばしば。ゴージャスなお店でいただく、クリーミーなカレーは私にとって「ハレの日のカレー」だった。
ハレの日のカレーでなく、「毎日食べたいバターチキンカレー」を作ってみたらどうなるだろう? 軽い感じにしてスパイス感を際立たせたら、どんなカレーになるのだろうか、とふと考えた。
そこで、バターをギーに、生クリームをココナッツミルクに変更し、さらに市販のカレー粉にクミンやコリアンダーなどのスパイスをプラスして作ってみたところ、軽くてスパイス感もある素朴な味になった。これなら毎日でも食べられそうだ。
このレシピのおいしさのポイントは、何と言ってもクリーミーな甘みと、カレー味の染み込んだ鶏肉のしっとり感。ヨーグルトの入ったマリネ液に漬けることで、鶏胸肉がしっとりとする。お好みでバターや生クリームを入れて作ってもおいしい。
あらかじめマリネした鶏肉を使うので、実は短時間で作れるのもいいところ。大切なのは、仕上げの「カスリメティ」という乾燥した葉っぱ。これを振り入れると見た目だけでなく、全体がまとまり、お店のような味になる。 ぜひお気に入りのカレー粉で試してみてほしい。 自分流の「チキンカレー」ができますように。
アマチュアカレーグランプリ2019準グランプリ。物心ついた時からカレー好きで、今ではほぼ毎日カレーを食べる著者による、スパイスカレーのレシピ集。オリジナルカレーをはじめ、スパイスを使ったビリヤニや副菜、ドリンクなど、珠玉の29品を収録。レシピにまつわるエピソードも語ります。
>>> 詳しい内容をチェック!
この記事でご紹介した「ギーチキンカレー」を、Live配信で実演します。 質問にもお答えしますので、オンラインでおしゃべりしながら一緒に作っていきましょう。
11月5日(金)11時30分よりInstagramLiveで配信しますので、ぜひご覧ください。
配信アカウント
@cookpad_news
@yuibabad
※どちらのアカウントからもご覧になれます
馬塲悠衣(ばば ゆい) 東京都出身。立教大学文学部ドイツ文学科卒業。Switch、GEO日本版、別冊太陽臨時増刊CLASS Xなどの雑誌編集を経て、現在レシピ本の出版業務に携わっている。20代の頃、インド料理を学んだレヌ・アロラさんの「スパイスはおくすり」との至言から、スパイスへ興味をもつ。スパイス好きがこうじて、5年間のニューメキシコ通いを経て、メキシコで唐辛子遊学を1年間したが、インドには行ったことがない。スパイスとハーブを使った、体がよろこぶような滋味感のあるカレー作りを日々妄想模索中。2019年第二回アマチュアカレーグランプリ準グランプリ受賞。クックパッドニュースで「カレーヘッド列伝」連載中。