チャンネル登録者数約38万人のYouTubeチャンネル「飲食店独立学校/こうせい校長」。料理人歴18年、飲食店経営10年の経歴を持つ“こうせい校長”が、飲食店を開業できるレベルの料理や、経営のノウハウを伝えるチャンネルです。ちょっとしたコツで普段の料理がお店の味になるというワザがたくさん! こうせい校長自身のお話から料理がおいしくなる秘訣まで、たっぷり伺いました。
――YouTubeチャンネルでは数々のプロの技を紹介されているこうせい校長ですが、そもそも料理に目覚めたきっかけを教えてください。
子どもの頃にチャーハンを作ったことをきっかけに、料理に興味を持つようになりました。お腹がすいたら、魚肉ソーセージを焼いたりするような子どもだったんです。高校生になってからも、友達とホットケーキやハンバーグを作ったりしていました。
――高校生のときに友達とハンバーグを作るのは、なかなかの料理好きですね。その後、料理関係のお仕事に進まれたのですか?
高校を卒業後、名古屋の企業に就職しました。その会社は、いろんな業態のお店を持っていて、僕は和食と洋食が融合されたお店に配属され、バックヤードの洋食担当になりました。当時の上司が非常にまじめな方で、とにかく厳しく育ててもらいました。そこで3年修業した後、和食のお店に移り、新店舗立ち上げから経験したんです。そのあたりから独立したいという気持ちを抱き始め、24歳の時に上京し、自分のお店を持つことができました。
――24歳で独立されているんですね。飲食店の経営をする傍ら、YouTubeチャンネルを開設したのはどんな理由からですか?
2018年の8月にYouTubeチャンネルをスタートしました。当時、飲食店を4店舗展開していたのですが、これからは個人の時代が来ると予想していたので、新しいことに挑戦したいと考えてYouTubeに注目しました。当時はまだ、飲食店を経営しながらYouTubeチャンネルをやっている人がわずかだったので、すごく可能性を感じたんです。
――YouTubeチャンネルを開設してから、一番反応があったものや印象深い動画を教えてください。
ブロッコリーを茹でる動画です。公開した月だけで約15万人も登録者が増えたんです。その前に、マグロの下処理の動画も注目していただくことができたので、この2本が、僕のYouTubeチャンネルの運命を変えた2本だと思います。僕の得意技である“比較して見せる料理動画”の形が定番になっていきました。
――新刊の「プロのコツでいつものごはんが100倍おいしくなるレシピ」では、ちょっとしたことでもっとおいしく仕上げる方法や、プロのワザを惜しみなく紹介されていますが、中でも特に読者に知って欲しいものを教えてください。
特におすすめしたいのは、唐揚げや卵焼き、フライドポテトになります。このメニューは、ちょっとしたプロのコツを取り入れることで、目で見てわかりやすい変化が現れるからです。
例えば、唐揚げは肉汁が溢れ出てきます。卵焼きはパサつかずジューシー、フライドポテトは芋の品種を変えるだけでホクホクに。わかりやすく違いを感じることができます。
変化がわかりやすい料理を作って成功体験を得ることによって、料理をすることがより楽しくなると思うので、ぜひ作っていただきたいです。
2度揚げで水分を逃さずジューシーに
鶏肉を高温の油で一気に揚げると、肉の中心まで火が通る前に周りの水分が蒸発してパサパサになってしまいます。まず低温の油で揚げて取り出してから、油の温度を高温にして2度揚げすることでカラッと食感よく仕上げることができます。
ブライン液=魔法の水!?
肉をやわらかくしてくれるブライン液を使います(ブライン=塩水)。塩分が繊維をとかしてくれるため、その分肉の中に空間ができて保水力がアップします。筋肉が収縮しにくくなる効果もあるのでジューシーな唐揚げができるというわけです。
鶏もも肉…500g
<ブライン液>
水…1L
塩…20g(大さじ1強 ※水に対して2%)
サラダ油…適量
A
料理酒…15g(大さじ1)
みりん…10g(小さじ1+2/3)
濃い口しょうゆ…10g(小さじ1+2/3)
おろしにんにく…20g(大さじ1強)
おろししょうが…5g(小さじ1弱)
こしょう…適量
<衣>
片栗粉…125g(大さじ10+1/2)
米粉…50g(大さじ4+1/3)
<トッピング>
レモン…適量
1.鶏肉は余分な脂や筋を取り除く。キッチンペーパーでドリップを拭き取り、大きめに切っておく
2.ブライン液をつくり、鶏肉を1時間漬けこんでから水けを拭き取る
3.ボウルに衣の材料を合わせておく
4.別のボウルにAを入れ、2.の鶏肉を入れてもみこんでから、3.を少しずつ加えながら鶏肉全体に衣をからませる
5.鍋で油を160度に熱し、鶏肉に7割程度火を通す
6.鶏肉を取り出し、5分間おく(この間に余熱で火が通る)
7.鍋の油を180度にしてから鶏肉を再び入れ、きつね色になるまで揚げる。皿に盛り、レモンを添える
卵液を入れる回数を減らす
卵液を入れる回数は少なく、3回に分けて多めに入れて巻いていくとふわふわに焼けます。少ない量で少しずつ入れると、その都度水分が蒸発しパサついてしまいます。焦げやすくもなるので気持ち多めに入れるくらいがよい分量です。
半熟で巻いて余熱で仕上げる
巻いている時点で卵にしっかり火が通った状態だと、仕上がりが固くパサパサに。余熱で中の方まで火が通っていきますので、半熟の状態で巻いていくとジューシーに仕上がります。まだ早いかな、と思うタイミングが正解です。
卵…3個
濃い口しょうゆ…5g(小さじ1弱)
みりん…5g(小さじ1弱)
和風か粒だし…1g(小さじ1/3)
水…50mL
サラダ油…適量
<トッピング>
大根おろし…適量
濃い口しょうゆ…適量
かいわれ大根…適量
1.ボウルに卵、しょうゆ、みりん、和風か粒だしを入れ泡立てないように混ぜたら、卵と水が混ざりやすくなるように水を3回に分けて入れて混ぜ合わせ、ざるでこす
2.卵焼き器にサラダ油をキッチンペーパーで薄くひいて熱し、1.を1/3量ずつ流し入れ、手早く巻きながら弱火から中火で焼く
3.キッチンペーパーを巻いた巻きすで2.を巻いて形を整える。切って盛りつけ、トッピングを添える
――毎日料理をする中で自分の味に飽きてしまったり、メニューを決める際にマンネリしがちという悩みを持つ方は多いですが、日常的に料理をする人に向けて、何かアドバイスはありますか?
日常生活の中で、食事は大きな楽しみの一つなので、できるだけおいしいものを食べたいと思いますよね。とは言え、忙しい日々の中で、毎日凝った料理を作るのは難しいもの。そんなときにこそ、プロのコツを取り入れてもらいたいと思います。
唐揚げであれば、塩水に30分漬けてから唐揚げを作るだけで、肉汁たっぷりに仕上がります。塩水を作ってその中に漬けるという工程を増やすだけなので、手間でいくとそんなに大きなものではないのかと。それでいて、いつもと違ったプロの味が楽しめますよ。
週末など時間があるときは、少し手間をかけて本の通りチャレンジしてもらえると嬉しいですし、逆に、平日など時間があまりない時は、ワンポイントだけ真似てやってみるだけでも、いつもの料理が変身するのでおすすめです。
――最後に、こうせい校長が調理するときに欠かせないキッチンアイテムを教えてください。
はかりと温度計です。大さじ1って人によって変化するんです。でも、はかりで量れば正確ですよね。レシピ通りに作りたいときには、はかりを使ったほうが断然いいです。温度計も同じく、おいしく仕上がる温度をしっかり目で確認できるので便利です。あと、おろし金のマイクロプレインがあると便利です。ショウガやニンニクだけではなく、大根もおろせるし、見た目もスマートで洗いやすいのでおすすめですよ!
(TEXT:上原かほり)
「僕のYouTubeチャンネル動画の真骨頂である、比較して見せる方法を盛り込みました。できるだけわかりやすい言葉で説明をするように意識し、使う調味料も一般家庭にあるものを想定してレシピを考えました。また、僕のYouTubeチャンネルの特徴でもある、科学的知識を踏まえて、わかりやすく説明を入れています。料理は感覚で覚えることも大切ですが、常に一定でおいしいものを作り続けるためには、科学的な知識を覚えておくと役立ちます。そんな内容が盛りだくさんなので、ぜひ一度手に取っていただけると嬉しいです」(こうせい校長)
すべてを真似するのではなく、コツだけを取り入れるだけでもOK! 本当にちょっとしたコツで、プロの味になる感動をぜひ体験してみてください。
岩野上幸生(いわのうえ・こうせい)
18歳から愛知・名古屋市で料理の修行を開始。24歳のときに東京で独立し、飲食店を複数店舗展開。好きな食べ物は卵かけごはん。YouTubeチャンネル「飲食店独立学校/こうせい校長」で料理についての動画を公開。人気を博し、動画総再生回数は2500万回を超える。
※2021年9月現在