【子どもの心を育てるレシピvol.18】子どもに「食」の大切さを伝えたいと思いつつも、日々忙しくてなかなか教える機会がないという親御さんも多いのでは? そこで、子ども料理研究家・武田昌美さんが、子どもと楽しくトライできて心も育てられるレシピ、料理を通して子どもが得られる学びについて、わかりやすく解説! 気負わず、自然と生活の中に取り入れられる簡単料理で、とっておきの親子タイムをお過ごしください。
2021年もあとわずか。もうすぐ2022年が始まり、丑年から寅年になりますね!
今年もさまざまな出来事が起こりましたが、12年前の丑年はどうだったのかな? と調べてみました。12年前の2009年は、新型インフルエンザの感染が猛威を振るい、WHOがパンデミックの宣言をしました。更に、リーマンショックの余波が荒れ狂うという現在に負けないくらい渋い年でした。
私はこの時、就職活動真っ只中。採用取り消しコマンドが発生するというキンキンに冷え切った氷河期に凍えておりました。ずっと憧れていた航空会社からのお断りメールを、誕生日当日にディズニーランドで受け取り、その場で泣き崩れた…そんな辛い思い出があります。今となってはオイシイ笑い話ですが、立ち直るまで随分と時間がかかりました。
振り返ると、2009年も随分痺れる年でしたね。
我が家では、年始に子ども達に「将来どんな人になりたい?」「今年できるようになりたいことは?」など基本的にちょっとアツいことを質問しがちですが、新しい年を迎えても以前のように、「今年はどんな素晴らしいことが待っているかな?」と手放しに喜べないのも事実。せっかく楽しみにしていた行事も新型コロナウイルスの感染拡大で中止、という事態に何度も遭遇し、期待して待つことが苦しく思えてしまう、そんな気持ちもあると思います。親として、「何があるかわからないから、子どもに期待させすぎない」ことも考え、慎重に言葉を選ばなくてはならないもどかしさがあります。
なので、今回は少し趣を変えて、「時代に抗わず身を任せ、今ある幸せをたくさん見つること」を子ども達と考えてみたいと思っています。
私が常々子ども達に言っている言葉、「失敗は成功の一歩前」ということ。失敗や嫌なことは、その次に待っている素晴らしい出来事の布石であることを知ってほしい、という想いで伝えています。
苦い経験はその瞬間はとてつもなくしんどいけれど、必ず糧になる日が来る。「人生はいつもいい方へ流れていく仕組みになっているんだよ。だからね、時代に身を任せ、今ある幸せをたくさん見つけて行こうね」ということを考えて2022年を過ごしたいと思います。
12年前の丑年に世界や私たち自身に起こった出来事を家族で振り返ってみると、随分大変な世の中だったけれど、それでもこうして今があって、やっぱりなんだかんだ幸せに過ごしている。人生には自分の力ではどうしようもできないこともたくさんあるから、そんな時は流れに身を任せて、今ある幸せを見つける努力をしたいと思っています。
ということで! 今回はお正月に子ども達と作れるお料理のご紹介です。私は、クリスマスで完全に力が尽きてしまい、その後訪れるお節料理の具材はだいたい買ってきてしまいます。ですが、今年はおうち時間も増えるので、子ども達が楽しんで作れる伊達巻を作ってみたいと思います。
伊達巻は、ミキサーを使用したり、伊達巻専用の「鬼すだれ」という巻きすを使ったりと、一見ハードルが高そうなのですが、「子どもが簡単に作れて、親の負担を極力減らすこと」をゴールとし、できる限り特別な道具なしで作れるようにアレンジしました。専門の道具をお持ちの方はもちろんそれを使って下さいね。
伊達巻では卵をたくさん使います。子どもたちに渡したたくさんの卵に「5個も割るの!?」と目をキラッキラに輝かせて大興奮しながら作っていました。確かに一気に5個も割ることって滅多にないですもんね。大人にとって卵を5個割ることは取り立てることでもないのに、子どもにかかればそれすら大喜び。良かったねー、とほっこりしてきます。
オーブンで焼いた伊達巻をグルグル巻き、お箸を差し込んで巻き簾の代わりに波模様をつけるのですが、その作業は、まるで黒ひげ危機一発をやるかのような騒ぎ。キャッキャッと楽しそうに伊達巻の周りにお箸を刺しています。すごくシュールな光景です(笑)。
そんなこんなで出来上がった伊達巻は、お重に入る間もなく食べられてしまうのは言うまでもありませんが、家族で過ごす時間があたたかいお正月って素敵です。
コロナ禍で制限されることもたくさんあったけれど、世界が前より良くなったことも同じくらいたくさんあるんだよ、ということを子どもと一緒に考えながら、今ある「当たり前」を幸せとかみしめられる一年にしたいと思っています。焦らず、どんと構えて逆らわず。そんな年を過ごせたら幸せです。
みなさま今年もありがとうございました。2022年もよろしくお願いいたします。
クックパッドニュースの人気連載「子どもの心を育てるレシピ」「料理で子どもの好きを見つける」「今日から始める親子クッキング」に書き下ろしを加えて電子書籍化。
子ども料理教室を運営し、3000人以上の子どもたちを見てきた著者の経験を元に、「食」を起点にこれからの時代を生き抜く力を身に付ける方法を伝授。
著者自身の子どもとの日々や教室での印象的なエピソードも交え、親子で楽しめる四季折々の「子ども料理」レシピを紹介しています。
どこで子どもがつまずきやすいのか、小さな手での作業に適した方法は何なのか等、子どもが安全に料理するためノウハウを各所に散りばめた、子育て中のママパパ必携の一冊。
リトルシェフクッキング(株)代表取締役。フランスで料理の修行をしていた父の影響を受け、幼少の頃から料理に興味を持つ。航空会社にて客室乗務員をしながら、各地の料理や文化に触れ、知識を深める。2人の子どもの親となり、多くの子どもたちに料理の楽しさ、食の大切さを伝えていきたいと強く願い、2017年より「ママも知らなかった才能が花開くクッキングスクール」をコンセプトにした料理教室『リトルシェフクッキング』を主催。保有資格は、食育インストラクター、子供心理カウンセラー、フードコーディネーター。2019年3月、子どもが一人一人料理できる料理教室『リトルシェフクッキングEduCooking Lab』を東京都世田谷区にオープン。著書は、『失敗したって大丈夫!と言える子になる「子ども料理」のススメ』(クックパッド株式会社)。
【HP】https://little-chef-cooking.com/(ご予約はこちらから)
【Instagram】@masamis__kitchen
【YouTube】リトルシェフクッキング
【ブログ】子ども料理研究家 武田昌美の食育ブログ
【クックパッド】武田昌美のキッチン