情報番組「ノンストップ!」(フジテレビ系)の料理コーナーでさまざまな料理を作ってきた、お笑いコンビ・ずんの飯尾和樹さん。限られた食材の中で作る料理はどれも飯尾さんのアイデアが満載で、参考になるものばかり。それらのレシピを掲載した『ずん・飯尾さんの開き直りごはん』が2月21日に発売されました。そこで今回は飯尾さんに、料理との向き合い方についてインタビュー。料理を楽しく作るコツについて聞いてみました。
僕の両親は共働きだったので、子どものころから料理をよく作っていました。最初は、小学校2年のときに具を挟むだけのサンドイッチを作りました。作っておいてもらったゆで卵をつぶしてマヨネーズで和えて、ハムやきゅうりと一緒に挟んで食べた記憶があります。
我が家では子どものときに「飯尾家ガス検定」というのがあったんですよ。両親にガスのつけ方、消し方、元栓の締め方を教えてもらって、「テレビを見るときはガスを消す!」「玄関のピンポンが鳴ったときも消す!」「元栓はこっち向きに回す!」という訓練にクリアしたら火を使った料理ができるという。その試験に小学校3年生のときに無事合格して、そこからはカレーや生姜焼きなど、作るメニューがだんだん増えていきました。今思うと、子どもに火を使わせるなんて両親も気が気ではなかったでしょうね。
料理のほかに買い物も毎日のようにしていました。“◯円の豚のひき肉を買っておいて”というメモとお金が置いてあって、おつりはもらえることになっていたので、少しでも残金を多くしようと安い肉を買って帰ったら「お肉が足りない!」と怒られたりして(笑)。そのときに、買い物術みたいなものは身についたのかもしれません。
例えば、ピーマン1袋を買うときも「ここは130円だけど、あれ?あっちのスーパーは110円だったな」ってなったら、わざわざ片道5分かけて、もうひとつのスーパーに行ったり、相場を見ながらあっちに行ったりこっちに行ったりすることもありました。そんなふうにして安いものを手に入れたときの達成感は大人になってもありますね。
今も妻が忙しいときにかかわらず、家で料理をするのはほとんど僕。僕にとって料理はストレス発散のひとつになっています。でも、皆さんの中には「料理をしたくない」「料理は面倒」という人もいますよね。それは少し自分の中でハードルを上げすぎているからかもしれません。もっと気楽に料理と向き合ってみるといいですよ。
豆腐を手でちぎって上におろし生姜や醤油をかけるのも立派な料理です。手でちぎると、いつもと食感が違っておいしいですよ。あと、ナッツとマヨネーズを和えたソースをきゅうりにかけてもおいしいです。冷奴やサラダは料理といえないと思われる方もいますが、一品でも加わると献立が豪華になります。
食べたい料理があっても調味料や食材が揃っていないこともありますよね。そんなときは、別の食材で代用すればいいんです。
<材料>
豆腐…1丁
タマネギ…1/2個
小麦粉…適量
オリーブオイル…適量
A[しょうゆ、酢、砂糖]…各適量
ゆで卵…1個
マヨネーズ…適量
1.豆腐、タマネギを切る
豆腐はペーパータオルで包んで皿などをのせて水気をきり、5〜6等分に切る。タマネギはみじん切りにする。
2.豆腐を焼く
1の豆腐に小麦粉をまぶす。フライパンにオリーブオイルを熱し、豆腐を揚げ焼きにする。
3.ソースをつくる
耐熱の器にAを入れて電子レンジで加熱し、甘酢ダレをつくる。1のタマネギ、細かく刻んだゆで卵の白身、黄身、マヨネーズを混ぜ合わせてタルタルソースをつくる。
4.盛りつける
2を3の甘酢ダレにくぐらせて器に盛り、タルタルソースをかける。
鶏肉ではなく豆腐で作ったチキン南蛮風おかず。鶏肉なしでもボリューム満点で、立派なごはんのおかずになります。揚げずに焼いて作るのでヘルシーですし、価格も抑えられます。
パスタを糸こんにゃくに替えたレシピです。痩せたい方には特におすすめです。ダイエット料理で白滝やこんにゃくを使うレシピってたくさんありますが「本当においしいの?」って思っていたけど、本当においしかったです。
<材料>
菜の花…1束
ちくわ…2〜3本
糸こんにゃく…1袋
塩…適量
卵…1個
牛乳、おろしニンニク…各適量
オリーブオイル…適量
赤唐辛子(輪切り)…適量
白ワイン、水…各適量
1.菜の花、糸こんにゃくをゆでる
鍋に湯を沸かして塩を加え、菜の花を30秒ゆでて食べやすく切る。ちくわは輪切りに、糸こんにゃくは食べやすく切り、熱湯で下ゆでする。
2.卵を炒める
ボウルに牛乳と卵を入れて混ぜ、ニンニクを加える。フライパンにオリーブオイルを熱し、卵液を流し入れて混ぜ、ふんわりしたら一度取り出す。
3.糸こんにゃくを炒める
2のフライパンにオリーブオイルをたし、赤唐辛子を入れ、1の菜の花を炒める。塩をふってちくわを加え、さらにニンニクをたして糸こんにゃくを加える。白ワイン、水を加えて炒め合わせ、塩で味をととのえる。2の卵を戻し入れて合わせる。
あまり作りたくない日はインスタント麺などに頼るのもひとつの手ですし、市販のお惣菜に一手間加えるだけでもいいと思います。僕は最近よく、お持ち帰りピザを活用しています。お持ち帰りで安く買ってきたピザにスライス玉ねぎをトッピングするだけで、立派なアレンジ料理の完成です。昨年の自粛期間中はよく食べていました。玉ねぎのほかにミニトマトや、カットキャベツをトッピングしてもおいしいですよ。ピザは冷凍しておけるので、小腹が空いたときや簡単にすませたい昼にもおすすめです。
料理が苦手という人や、料理が楽しくないという人は、まず包丁を使わない料理から試してみてはいかがでしょうか。おすすめの食材は「もやし」と「きのこ」です。
「もやし」は包丁を使わずに調理ができますし、「もやし炒め」はなかなか失敗しづらいのでおすすめです。もやしだけで物足りないときは、そこに豚こま肉を加えてもおいしいですよ。豚こま肉も包丁を使わずに入れるだけなのでおすすめです。炒めると焦がしちゃうという人は、さっと茹でて辛いタレで和えてもいいし、ごま油と塩をかけてもいい。もやしって価格は変わらないし、かさましにも使えるので本当に便利だと思います。
「きのこ」は塩こしょうで味つけしてもいいですし、僕がよく使うのはカレーパウダー。これは万能です。塩加減がわからない方は、ポン酢をかけて食べてもおいしいですよ。それこそ舞茸やしめじは包丁を使わず手でちぎれるので、洗い物を減らしたいときは便利です。
料理好きとはいえお店を開けるくらいの腕前でもないですし、皆さんに指南できるような立場でもないのですが、唯一言えるのは料理は「どうなるかな?やってみよう!」くらいの感じでいいんです。なので、恐れずに作ってみるといいと思います。焼いていて焦げそうなら火を消せばいいし、味付けが濃かったら水で薄めればいいくらいの楽な気持ちでやってみてはどうでしょうか。ちょっと実験みたいなところはありますが、僕はそんなふうに料理を楽しんでいます(笑)。
1968年、東京都生まれ。2000年、相方・「やす」とお笑いコンビ「ずん」を結成する。コンビとしての活動はもちろん、ドラマや映画でも活躍の場を広げている。共働き家庭で育ち、幼い頃から食事の支度をする機会が多く、料理が得意。著書に『どのみちぺっこり』(パルコ出版刊)など。本書は著者初のレシピ本。
撮影/林 紘輝(扶桑社)、TEXT/河野友美子