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コラム

バナナは黄色だけじゃない!?メキシコのカラフル市場を歩く

【世界の台所探検 Vol.35】世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さん。今回は、メキシコのカラフル市場をご案内します。

食好きなら地元市場はマスト

旅行に出かけたら、地元の市場を訪れるという方も多いのではないでしょうか。活気ある掛け声が飛び交い、その土地らしい野菜や魚や調味料が並ぶ市場は、眺めて歩くだけで気分が上がりますよね。

世界の台所を探検している私も、お世話になる家族と必ず訪れるのが、その土地の市場です。市場ではなくスーパーのこともありますが、いずれにしろ食料を買う場所というのは、その地の個性や暮らしが見えて、地元の食を知るのに外せません。

メキシコのカラフル市場

訪れた市場の中でも思い出深いものの一つが、メキシコ郊外の卸売市場。とにかくカラフルなのです。

私がこの市場を訪れたのは、メキシコの大きなお祭り「死者の日」直前のこと。滞在先の家族とともに、一家総出で、ぎゅうぎゅう詰めの車で向かいました。死者の日は、日本のお盆にも少し似ていて、家に祭壇を作ってご馳走を用意して死者の魂を迎えます。飾りつけのための果物や、料理のための食材が、たくさんいるのです。

市場に到着して歩き始めると、同じように死者の日の買い出しのためにやってきた人たちでごった返しています。人に押しつぶされながら進んでいくと、目に飛び込んでくるのは、色とりどりの果物や野菜たち。メキシコは様々な作物の原産地で、種類豊富なのです。山積みの唐辛子は、赤くてつるっとしたのから黒くてシワシワしたものまで、色形も大きさも多種多様。近づくと、燻したような甘いような香りがしてきます。

バナナの山もまた見もの。メキシコ原産ではありませんが、気候の豊かさもあってか種類豊富です。黄色・緑・それに紫。大きいものより小さめの方が甘そうだなあ、などと考えていたら、一瞬で家族とはぐれました。

果物はキロ単位。安い!

「オレンジを3キロ、グァバを4キロちょうだい。あ、サトウキビも3キロ」 人ごみをかき分けて追いつくと、お母さんは果物を買っています。私も、さまざまな国を訪れてキロ買いには慣れてきたつもりですが、この量は驚き。しかも1キロ100円強と、激安なのです。

家に帰ってからわかったのですが、これは食べるためだけではなくて、祭壇の飾り付けに使う分もあったのでした。何にせよ、10キロの果物は到底持ち歩けない重さなので、一旦車に戻って置いて、買い物再開です。

つまみ食いをどうぞ

市場は、野菜や肉などの生鮮品だけでなく、おやつも売っているのが楽しいところ。死者の日のためのがいこつキャンディも色鮮やか。祭壇に飾ったり贈りあったりするのです。

さらに進むと、ナッツやキャンディ類が袋にパンパン詰まった、はかり売りのお店に。お母さんの目当ては、ピリ辛の炒りピーナッツ。にんにくと唐辛子が入ったものが大好物で、キロ買いです。私はその横の赤いグミのようなものが気になって、じっと見ていたら「どうぞ!」とお店の人が食べさせてくれました。「他に気になるのはある?」と次々勧めてくれたりして。こういう市場は、案外試食をさせてくれるから、あれこれ気になる私のような欲張りには天国です。つまみぐいさせてもらうコツは、「これどんな味?」と、気になり顔で聞いてみること。周りを見ると、地元っ子は断りもせずあたりまえのようにつまみぐいしていますが。

スナック菓子も量り売り

最後に寄ったのは、奥の方にあるお店。人だかりができています。見ると、ドラム缶サイズの大袋にスナック菓子がパンパン。お店の人に注文すると、台所で使うようなプラスチックザルですくって袋に入れてくれます。それを両手に下げて店を後にする人々。みんないい体格です。私たちも二袋買って、食べながら車に向かい、家路につきました。

メキシコは、古代文明の時代から育まれた伝統的な食生活もありつつ、現代では世界有数の肥満大国という事実も。主原因の一つは間食と知って複雑な気持ちになりつつも、スナックを食べ続ける手は止められません。

市場は人と暮らしが見える場所

地元市場は、ただ歩くだけでも楽しいもの。さらに、その風景をじっと見つめてみると、歴史のストーリーや生活の価値観が見えてきます。市場は、その土地の人と暮らしを知るのに格好の場所です。

世界の市場歩き絵本、発売!

「魚市場からおしゃれ市場まで、世界各地の個性あふれる24の市場を集めた絵本が発売されました。肉の繊維が見えてきそうなくらい精細なイラストは、ヨーロッパのイラストレーターさんが描いたもの。ヨーロッパ発の絵本で、私はこの翻訳をさせてもらいました。空想旅行に、お子さんの調べ学習や自由研究のお供に、ぜひ手に取ってみてください!」(岡根谷さん)

『世界の市場 おいしい!たのしい! 24のまちでお買いもの』
マリヤ・バーハレワ 文 / アンナ・デスニツカヤ 絵 / 岡根谷実里 訳
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岡根谷実里さん

台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。 著書に 「世界の台所探検 料理から暮らしと社会が見える(青幻舎 )」がある。