料理を温めるだけでなく、さまざまな調理に使える便利な家電「電子レンジ」。火を使わず手早く調理ができるので、利用している人も多いのではないでしょうか。しかし、正しく使用しないと発火など重大な事故を引き起こす可能性があるって知っていましたか? そこで今回は電子レンジを使うときの注意点を、製品事故の調査を行っている独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の実験を元に紹介。特に私たちが見落としがちなポイントについて解説します。
電子レンジによる事故が後を絶ちません。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が行った調査によると、2017年から2021年に発生した調理家電の事故は電子レンジが最も多く、誤った使い方による事故がたびたび発生しています。
電子レンジの事故で最も多いのは、製品の不具合などによるもの。ターンテーブルが回らなくなったまま使用を続けたり、電源が入ったり切れたりする状態で使い続けると発火・発煙するおそれがあります。ターンテーブルが回転しない、異臭・異音がする、不意に電源が落ちるなどの異常や故障を確認したら、直ちに使用を中止し、電源プラグをコンセントから抜いてください。
電子レンジ事故の原因で最も多いのが「製品の不具合などによる事故」ですが、最近は特に「庫内汚れ」「食品の過加熱」「突沸」による事故も増えています。寒くなるこれからの時期は、電子レンジを使って食べ物や飲み物を温める機会も増えてきますよね。そのとき、特に以下の点には気をつけましょう。
庫内やドアの内側に食品かすなど汚れが付着した状態で加熱をすると、火花が発生し、発火するおそれがあります。特に庫内カバーには注意が必要です。庫内カバーはマイクロ波が庫内に入る際に通る通路カバーで、このカバーに汚れが付着しているとマイクロ波が集中的に照射されて発火する恐れがあります。そうならないためにも、庫内カバーについた汚れは早めに取り除くようにしましょう。
食品を加熱しすぎると炭化し、発火する恐れがあります。2020年には肉まんを長時間加熱したことによる発火事故も発生しています。特に肉まんや天ぷらなどの油分を含む食品は、加熱しすぎると爆発的に燃焼するおそれがあるため注意しましょう。また、パンや芋類など水分の少ない食品は水分を含む食品より早く炭化しやすいため、食品の様子を見ながら少しずつ加熱してください。
電子レンジによっては、食品の重さや温度を測って加熱時間を自動で算出してくれる機能がついているものもあります。しかし、蓋付きの容器に入った食品や100g未満の少量の食品を自動加熱機能(オート機能)で加熱すると、正常に温度が検知されずに過加熱になって発火する恐れがあります。事前に取扱説明書をよく読み、自動加熱できる食品の量や容器を確認しましょう。
カレーやシチューを作る機会も増える冬。余ったカレーを再加熱するために電子レンジを使う人も多いですよね。その際に注意してほしいのが「突沸」です。カレーやシチューなどの粘性の食品や味噌汁を電子レンジで加熱するとき、攪拌や振動が少ない状態で加熱すると、取り出したときの振動などで突然激しい沸騰が起こることがあります。これが「突沸」といわれる現象です。熱くなった容器の中の汁が爆発したように飛び散り、やけどをする恐れがあるので注意してください。突沸は事前によくかき混ぜ、様子を見ながら短時間の加熱を繰り返すことで防げます。加熱しすぎた場合は1〜2分間、時間をおいてから取り出し、かき混ぜてください。
カレーやシチュー、味噌汁などのとろみがある食品のほか、水や牛乳などの液体を温める際も注意してください。加熱後に砂糖などをいれる際に突沸が発生することもあります。液体を温める際は、「食品用」の温めキーでなく「飲み物用」の温めキーを使用して過加熱を防いだり、加熱の設定時間を控えめにしてください。
このほかにも、電子レンジで加熱してはいけない食品や容器を加熱したことによる事故も発生しています。ゆで卵、ソーセージなど殻や膜が付いている食品は電子レンジで温めることが禁止されている場合や、切れ目を入れておくことが必要な場合があるなど、注意すべき点があります。事前に取扱説明書や調理法を確認してから加熱しましょう。
ドアを開けると空気が庫内に流れ込んで火が大きくなるので、電源プラグは抜いて、火が消えるまでドアを開けないようにしましょう。また、ドアのガラスも高温になっているので触らないようにしてください。熱くなっているからといって水をかけると急激にガラスの温度が下がることでガラスが割れ、けがをするおそれがあります。
短時間で調理ができたり、調理後の洗い物が少なかったりと、便利なことがいっぱいある電子レンジ。電子レンジを使うレシピも多くあり、使う頻度が増えたという人も多いですよね。でも、使い慣れているからといって油断は禁物です。間違った使い方をしないよう、使用する際はあらためて注意を払い、未然に事故を防ぎましょう。
(TEXT:河野友美子)
NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)は「安全とあなたの未来を支えます」をスローガンに、経済産業省所管の法令執行や政策を技術的な面から支援している公的機関です。製品安全センターでは、家庭用電気製品等の事故の原因究明を再現実験により検証し、その結果を情報発信することで、製品による事故の未然防止に貢献しています。
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