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インタビュー

食後の“血糖値”を抑えると何がいいの?医師に聞いた「糖尿病にならないための食事方法」

「食後の血糖値を下げる」とか「血糖値を抑える」などと耳にする機会は多いですが、食後の血糖値をゆるやかにすると何がいいのか、きちんと理解できている人は少ないのではないでしょうか。でも、「血糖値」が高すぎたり低すぎたりすると、さまざまな症状を引き起こしてしまうものです。そこで今回は、あんどう内科クリニックの安藤大樹院長に、血糖値を抑えることの重要性や糖尿病を防ぐための食事法などについて聞きました。

「血糖値」とは何なのか…

――そもそも「血糖値」とは、どういったものなのでしょうか?

お米やパン、麺などに多く含まれる「糖質」は体内で消化吸収されて「ブドウ糖」になり、血液中に入ります。その血中のブドウ糖濃度が「血糖値」です。ブドウ糖(グルコース)は脳や神経、内臓、筋肉など、全てのパーツを動かすためのエネルギー源となりますし、糖質の一部は体の構成成分になったり、血中コレステロールを下げたりと、生きていくために欠かせないものです。つまり、ある程度の「血糖値」を保つことは、非常に大切なのです。ただ、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみのため、飽食の時代の現在では、かなり気をつけていないと血糖値は上がっていってしまいます。

――血糖値が高いとどのような症状が出てくるのでしょうか?

血糖値の正常値は80~99mg/dL。一時的に多少高くなっても(200mg/dL程度)、ほとんど症状はありません。300~400mg/dL程度になると、だるさが出たり、集中力がなくなったり、喉が渇いたり、尿量が増えたりします。ただ、いずれの症状も漠然としたもので、この時点でも血糖の上昇に気づかれることはあまりありません。500mg/dLを超えると、吐き気や嘔吐、意識障害などをきたし、場合によっては生命も脅かしかねない危険な状態になります。

――血糖値が高い状態が続くとどうなりますか?

高血糖状態を放置すると、さまざまな合併症を認めるようになります。代表的な3大合併症は、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症(目の障害)、糖尿病腎症で、頭文字をとって『しめじ』と言います。ほかにも、認知症、免疫力低下、骨粗しょう症、勃起不全など、その影響は全身に及びます。さらに、糖尿病の合併症には、壊疽(えそ)、脳血管障害、狭心症や心筋梗塞の『えのき』もあります。

――血糖値は低すぎても良くないのですか?

ブドウ糖は生命活動を維持するための大切なエネルギー源なので、低血糖状態はさまざまな「エネルギー不足による症状」をきたします。一般的には、血糖値が70mg/dL以下になると自律神経の乱れ(冷や汗、動悸、寒気、手指の震え、不安感など)が出現します。さらに、50mg/dLを切ると、集中力低下、眠気、めまい、視点が定まらない、異様にだるいといった症状から、意識障害、けいれん、昏睡へと進んでいきます。

――では、理想的な血糖値とは?

健康な方でも状況により血糖値は変動するため、臨床の現場では少なくとも8時間以上の絶食後に測定する「空腹時血糖」と、食事と採血時間との時間関係を問わないで測定する「随時血糖(2時間以上)」が使用されます。空腹時血糖が70~99mg/dL、随時血糖が140mg/dL未満が正常値として設定されています。ちなみに、空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上が糖尿病と診断される条件の1つです。

血糖値を下げる食生活7カ条

――食後の血糖値をゆるやかにするといいのはなぜですか?

食後は誰でも一時的に血糖値が高くなります。通常はすい臓からインスリンがすぐに分泌され、食後2時間以内には正常値まで戻ります。食後2時間に測った血糖値が140mg/dL以上の場合を「食後高血糖」と言い、これはインスリンの分泌量が少なかったり、肥満などでインスリンの働きが不十分になっていたりする状態。特に血糖の上昇が激しい場合を「血糖値スパイク」と言います。いわゆる「血糖値の乱高下状態」で、血管に大きなダメージを与えて、動脈硬化を促進、結果的に脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こす場合があります。

――血糖値を下げるための理想的な食生活を教えてください。

当院の待合室に掲示している『糖尿病食事療法7カ条』をご覧ください。こちらを普段から意識してもらえるといいでしょう。

“水溶性食物繊維”が血糖上昇を抑える

――血糖値のことを考えたときに、意識して摂りたい食材は?

私たちが摂取した糖質は、胃で消化されて小腸に到達し、最終的にブドウ糖まで分解されて吸収されます。小腸での吸収が遅くなれば食後の血糖上昇が緩やかになり、インスリンを分泌するすい臓の負担を減らすことができます。この作用を利用した「α・グルコシダーゼ阻害薬」という糖尿病の薬がありますが、この薬と同様の働きをするのが「食物繊維」です。

――食物繊維の中でもオススメの食材は?

食物繊維が含まれる食材には、野菜、豆類、海藻、キノコなどがありますが、血糖コントロールに特に大切なのが大根、パセリ、ワカメ、昆布、ひじき、もずく、大豆、大麦などに多く含まれる「水溶性食物繊維」です。水溶性食物繊維を糖質と一緒に摂ると、消化管からの糖の吸収が遅くなります。中でも海藻類に含まれる「アルギン酸」は、食べ物を胃から小腸に送るスピードを緩やかにし、血糖上昇を抑えてくれます。

――ほかにも摂取するといい食材はありますか?

インスリンの作用を助ける玄米や胚芽米、糖をエネルギーに変えるビタミンB1が豊富な豚肉、インスリン分泌を改善させる効果を持つEPAやDHAを多く含む青魚(サバ缶がオススメ)、食物繊維に似た働きをするレジスタントプロテインが含まれる高野豆腐、抗酸化作用のあるリコピン、良質なたんぱく質であるグルタミン酸やアスパラギン酸を多く含むトマトなどもオススメです。

――逆に避けたほうがいい食材は?

明らかに糖質の塊みたいなものは避けたほうが無難ですが、食べてはいけないというものは実はあまりありません。大切なのは「食べ方」です。「早食い」、「ドカ食い」、「間食」、「ながら食い」を避け、朝食をしっかり摂って、夕食は早めに済ませることがポイント。これはダメ、あれもダメでは長続きしません。「正しく楽しく食べること」が糖尿病にならないための食べ方です。

(TEXT:山田周平)

安藤大樹先生

2004年藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業。同年藤田保健衛生大学病院(現・藤田医科大学病院)での初期研修を経て、2006年に一般内科に入局。2007年より医局長、2011年より総合診療内科/救急総合内科医局長を務める。2015年に岐阜市民病院総合診療・リウマチ膠原(こうげん)病センターに医員として着任。そして、2017年よりあんどう内科クリニック院長として治療に当たる。

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