もうすぐ5月5日。こどもの日だね。
鯉のぼりや兜(かぶと)を飾ったり、柏餅を食べたりするね。あと、菖蒲(しょうぶ)湯に入るのは知っているかな。菖蒲は細長い葉っぱで、これをお風呂に入れるといい香りがするんだ。お風呂に浮かんだ菖蒲の葉を1本、頭に巻きながら入ると、体がじょうぶになって頭がよくなるって言われているんだ。
じつはこの菖蒲の香りに秘密があるよ。
昔、いい香りがするものは、悪いものをやっつけてくれると信じられていたんだ。
昔のカレンダーと今のカレンダーはちょっと違って、昔の5月は梅雨の季節。雨ばっかり降っているとジメジメするよね。そんなときは物が腐りやすいし、病気もはやりやすい。そこで、昔の人は菖蒲の香りで悪さをするジメジメをやっつけてもらおうとしたんだ。
あと、このころはお米を植える時期。女の人が中心になって植えるんだけど、田植えはとても大切な行事だから、その前に集まって体をきれいにしたんだ。そのときにまた活躍するのが菖蒲。田植えをする前に菖蒲で作ったお酒を飲んで、体から悪いものを追い払ったんだって。
テレビを見ているとよくヒーローが悪者に「勝負だ!」って言うよね。菖蒲の葉っぱはその「勝負」に音がいっしょだね。じつはダジャレみたいだけど、5月5日は菖蒲の日だから、やがて男の子の日になっていったんだって!
だから、3月3日が女の子の日であるように、5月5日は男の子が大きくなったことをお祝いする日なんだよ。兜は、そんな戦う男の子を守ってくれるようにという気持ちを込めて飾るんだ。
「昔、激しい滝を流れと反対にのぼっていった鯉が龍になった」という言い伝えがあるんだ。鯉が龍になるってすごいよね。そんな立派な人になってほしいという親の願いから、鯉のぼりを飾るんだって。
柏餅も楽しみだよね。柏の葉っぱが新しい葉っぱが出るまで古い葉っぱが落ちないんだって。だから、「家族がとぎれずに続きますように」という思いを込めて、柏餅を食べるんだよ。
お米を作るうえで最初の作業にあたる田植えは、豊作を祈るための神聖な行事でもありました。その役目をになう若い女性は、田植えの前に菖蒲の葉で屋根を作った小屋に集まり、菖蒲酒などを飲んで身を清めたと言われています。
それが男の子のお祝いに変わったのは武家社会になってから。菖蒲が「勝負」や「尚武(武事を尊ぶ)」につながることから、勇ましさの象徴となり、江戸時代以降に兜を飾って男の子の成長を祝う日となりました。
「こどもの日」となったのは国民の祝日法によって定められた1948年から。この法律では「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する日」とされています。男女関係なく、子どもに改めて「あなたがいてくれてうれしい」と伝える日にしたいですね。(TEXT:松崎祐子)