用途が広く、私たちの生活に欠かせない食材の1つが麦。そしてその中の種類の1つに大麦がありますが、日常的に大麦を食べている人はどれくらいいるでしょうか。この大麦、実は「生活習慣病予防に役立つ」と、大注目されているのだそうです。今回は、そんな「大麦」についてご紹介します!
みなさんご存知のように、大麦は穀物の1つ。日本には弥生時代に中国から伝来し、奈良時代には広く栽培されていたのだそうです。製粉する必要のある小麦に比べて、大麦は粒のまま食べられるため、当時は重宝され、小麦よりも栽培面積が広かったのだそうです。栄養成分の特徴としては、「水溶性食物繊維」が多く、小麦と比べても5倍も多いのだそう。そして、その主成分である「β-グルカン」が糖尿病や肥満防止などにつながることが分かってきたんですって。
大麦に多く含まれる水溶性食物繊維の主成分「β-グルカン」が、「コレステロールの低減」や「食後の血糖値の上昇抑制」など多くの働きをしてくれるとのことですが、さて、この「β-グルカン」、どんな風にして生活習慣病の予防をしてくれるのでしょうか。大妻女子大学家政学部食物学科栄養学研究室 青江 誠一郎教授にお話を伺いました。
—「βベータグルカン」はどのように「食後の血糖値の上昇抑制」に作用するのでしょうか。
「β-グルカンが作用する部位は、①胃、②小腸上部、③小腸下部~大腸の三カ所になります。胃の中に長くとどまる(胃内滞留時間が長い)ので食べ過ぎを押さえるとともに、小腸にゆっくりと移動するので血糖値の急激な上昇が抑えられます。
また小腸内で粘性を持ちます(ねばねばする)ので、デンプンの消化を緩やかにします。そのため、血糖値の上昇がゆるやかになり、インスリンの分泌が節約されます。インスリンは、血糖値を下げる働きがありますが、同時に余ったエネルギーを脂肪に変える働きがあります。したがって、インスリン分泌を穏やかにするβ-グルカンは肥満を予防すると同時に、糖尿病のリスクを減らす働きもあります。」
—同じく「βベータグルカン」はどのようにコレステロールを低下させてくれるのでしょうか。
「脂肪やコレステロールの消化吸収に必須の胆汁酸が小腸の上部に分泌されます。余った胆汁酸は小腸下部で再吸収されて再利用されます。そのとき、β-グルカンは粘性のはたらきで胆汁酸の再吸収を一部抑制して、便中に排泄させます。そうすると、胆汁酸が不足するので、肝臓でコレステロールを分解して胆汁酸を作ります。胆汁酸の原料となるコレステロールは血液中から肝臓に取り入れますので、血中コレステロールが下がるわけです。」
「小腸下部から大腸部分では、腸内細菌によってβ-グルカンは発酵を受けます。発酵によって身体にとって有益な短鎖脂肪酸(プロピオン酸や酪酸など)を分泌します。短鎖脂肪酸は、コレステロールの合成を抑えたり、大腸を丈夫にしたり悪玉菌の増殖を抑えたりします。このように、大麦のβ-グルカンが胃から小腸、大腸へと移動しながら効果を発揮していくのです。」
—「大麦を摂取することで、糖尿病や肥満防止などにつながることが分かってきた」とのことですが、1日にどれくらいの大麦を摂取することで、糖尿病や肥満防止の効果が期待できるのでしょうか?
β-グルカンとして1日3gが目安になります。麦ご飯ですと、麦の種類にもよりますが、3割を白米に配合した場合、一日2食麦ご飯にすると摂取できます。しかし、これはあくまで目安ですので、毎日続けることが重要です。」
さあ、私たちの体によい作用をもたらしてくれる大麦のお料理にチャレンジしてみませんか。 探してみると、クックパッドでも、大麦を使った色々なレシピがありますよ。
食物繊維がたっぷりで、さらに糖尿病や肥満防止などにつながる「β-グルカン」が豊富な大麦。日々の食事に上手に取り入れていきたいものですね。(林美由紀/ライツ)