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大正・昭和を代表する美食家・陶芸家として有名な北大路魯山人。現在、彼が提唱する“美味しい納豆の練り方"を手軽に再現できる商品が大手玩具メーカーより発売され、注目を浴びています。今回クックパッド編集部では、魯山人自身と話題の納豆について、いろいろと調べてみました。
魯山人は、1883(明治16)年に京都の上賀茂神社の社家に生まれました。ただ、母親の不貞の子どもであったために、生まれてすぐに養子に出され、養家を転々とする不遇な幼少期を送ります。20歳になると上京し、書家・岡本可亭(画家・岡本太郎の祖父)の内弟子となり、その後独立。書家・篆刻家として、全国流浪の旅を始めます。この頃、才能を認められた魯山人は富裕な商家や旅館主の食客となり、後の活動の糧となる料理や器についての知識を蓄えていきます。
1919(大正8)年、古美術品や骨董を扱う「大雅堂美術店」を東京・京橋に開店します。店の経営のかたわら、陶器に魯山人自らの手料理を盛って客人に振る舞うサービスが人気を博し、1921(大正10)年に店舗2階で会員制割烹「美食倶楽部」を発足。
さらに1923(大正12)年には、会員制高級料亭「星岡茶寮」を開設します。
“食器は料理の着物”という信念を持つ魯山人は、やがて、骨董品や市販の陶器では満足できなくなり、自ら作陶を開始。1926(大正15)年には北鎌倉に自身の窯である「星岡窯」を開設するほどに。
星岡茶寮では、美食家・魯山人の舌にかなう最高の料理が魯山人自作の食器に盛られて提供され、多くの財界人を満足させたそうです。
1936(昭和11)年、魯山人は共同経営者の中村竹四郎とのもめごとにより、星岡茶寮を追放されてしまいます。その後は、1959(昭和34)年に亡くなるまで「星岡窯」で作陶に励んだとのこと。私生活でも6度の結婚を経験するなど、移り変わりの激しい波瀾万丈な人生を歩んだ人物と言えます。
魯山人は婦人雑誌や料理雑誌に多くの食エッセイを寄稿しています。そのテーマは寿司や鰻、河豚など高級なものだけでなく、雑炊や鍋料理、お茶漬けなど庶民的なものまでさまざま。とにかく「美味いものを食べたい」という美食家としての探究心に溢れたものばかりです。魯山人の著書『春夏秋冬料理王国』にある「納豆のこしらえ方」を抜粋して、ご紹介します。
①納豆を器に出して、何も加えないで2本の箸でよく練り混ぜる。
②しばらく練り上げたら、醤油を数滴落として練るという作業を繰り返す。
③糸の姿がなくなってどろどろになった納豆に、からしを入れて撹拌する。
④好みによってねぎのみじん切りを加える。
魯山人曰く、ポイントはよく練ること。納豆の糸を出せば出すほど、美味しくなるそうです。あるテレビ番組の調査によると、①の工程で305回、②の工程で119回の計424回混ぜる必要があるそうです。かなり大変ですね、美食家・魯山人恐るべし!
魯山人の著書では、納豆を使った雑炊とお茶漬けの作り方も紹介されています。クックパッドにも再現レシピがありましたので、ご紹介しますね。
納豆の量は共に、ご飯の4分の1から5分の1程度が最も美味しくいただけると魯山人は述べています。これもまた、スゴイこだわりですね。
死後から50年以上が経った今も語り継がれる美食家・北大路魯山人。彼の納豆以外のエッセイも食や素材への愛情に富んだものばかりです。気になる方は、是非チェックしてみてください!!(TEXT:中本タカシ/ライツ)
参考資料:
『魯山人と星岡茶寮の料理』(柴田書店)
『春夏秋冬料理王国』(筑摩書房)
『魯山人の食卓』(角川春樹事務所)
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