イタリアンの料理に、肉料理の味付けに、ラーメンに、お菓子に、水やアイスのフレーバーに…。トマトは幅広い料理メニューで重宝されています。色々な料理にぴったりしっくりなじむ野菜なんです。しかし、時には…「さすがに、アイスにはならんでええわ!」 などと突っ込みを入れたくなる事もあるでしょう。でもそんな異常なまでのトマト人気、実はきちんとした理由があったのです!
あなたは、野菜の成分と聞いて何をイメージしますか。
ビタミン、食物繊維、水分、苦味や甘味の成分…こんなところでしょうか。
しかし、トマトには、それ以外にも特別にたっぷり含まれているものがあります。
それは、旨味成分であるグルタミン酸!
お肉や昆布に含まれる旨味と同じ物質です。
この旨味成分が、あらゆる食材を美味しくするのに長けていたのです。
それでは、具体的にどのように食材を美味しくしているのかを見てみましょう。 今回は、トマトの旨味の効果を3つ紹介致します。
旨味成分は、いくつかの旨味成分が一緒に存在するとき、私たちが感じる旨味をグンと強くする性質を持っています。
トマトの場合は、トマトの中グルタミン酸ナトリウムが、別の旨味成分であるイノシン酸やグアニル酸と呼ばれる物質と一緒になることで旨味がアップすることが分かっています。
イノシン酸は熟成肉や青魚に、グアニル酸は主にキノコ類に多く含まれています。お肉やお魚をトマトソースで調理したものや、トマトベースのパスタやピザにきのこ類が含まれているのは、こうした旨味の相性が良いからなのでした。
また、旨味は塩味と一緒になると、旨味・塩味お互いの強さを引き立て合うこともできます(味の対比効果)。 プリッツやじゃがりこなどの塩味が強いスナック菓子をはじめ、同じく塩分濃度の高いラーメンのスープとしても美味しく頂けるのは、こうした旨味と塩味の効果が考慮されているからなのでした。
さらに、旨味は甘味と一緒に存在する時、人は「美味しい」と感じやすいものです。 オリーブオイルや乳製品は甘味を持つため、旨味を持つトマトと合わせやすいのです。 トマト味のアイスはこれに分類されます! トマトの場合は、かつおぶしや昆布などの純粋な「旨味」よりも、自身の甘味や、味のコントラストとなる酸味も同時に持ち合わせているため、より相性が良くなります。
もちろん、トマトの人気の理由は一つではありません。 しかし、他の野菜にはあまり多く含まれない旨味成分の役割は大きいものです。 これからは新たな「トマト味」を見かけたら、「また旨味か!」と突っ込んであげてください!
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。